FOMCのポイント:「金利引き下げ見通しの変更「3回→2回」は6月FOMCで発表か?」(24/3/18)

発表されるドットチャートで2024年末時点での政策金利の見通しが、2023年12月時点の見通しから変化するかどうかが焦点だ。

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FOMCのポイント:「金利引き下げ見通しの変更「3回→2回」は6月FOMCで発表か?」(24/3/18)

FOMCのポイント:「金利引き下げ見通しの変更「3回→2回」は6月FOMCで発表か?」

【今回のポイント】

〇 政策金利は据え置き
〇 ドットチャートの2024年金利引き下げ見通し3回を2回に変更?
〇 ECBのように6月利下げ開始を示唆することは無い?

【市場コンセンサスは何?】

米連邦準備制度理事会(FRB)による米連邦公開市場委員会(FOMC)が、3月19日‐20日に開催され、東京時間21日未明に結果が伝わる。東京時間3月17日20時時点のFOMCコンセンサスは下記の通りである。

・政策金利5.25%(下限)−5.50%(上限)据え置き

正直、市場コンセンサスが明確に見えにくいFOMCは久しぶりだ。直前に日本銀行による金融政策決定会合で「マイナス金利の解除」が実施されるとの公算が大きくなっていることも影響し、FOMCの予想が難しくなっている。

【何がサプライズになる?】

今回のFOMCは、今年最初のドットチャート(FOMC参加者が適切と考える米国の政策金利である「FF金利」)の誘導目標の水準(政策金利の見通し)を点(ドット)の分布で示した散布図)発表のため大変注目されている。

政策金利は、「据え置き」が確実視されていることからこの点はスルーだが、発表されるドットチャートで2024年末時点での政策金利の見通しが、2023年12月時点の見通しから変化するかどうかが焦点だ。

前回は、2024年に計3回の利下げ(0.75%)を実施するシナリオが予想の中央値だった。参考ながらFedウォッチは2024年に6回利下げ(1.5%)を予想していたが、相次ぐFRB高官らのけん制発言や、予想外に強い雇用統計や消費者物価指数など物価・雇用のデータを受けて足元では、ほぼFRBの見通しと一致している。

パウエルFRB議長は、2月時点で「予測が劇的に変わるようなことは何も起きていない」と発言していた。その後の物価指標は、市場予想をわずかに上回っており、市場にはFOMCが利下げ回数を3回から2回に減らすことへの警戒感もある。

【では、ドルはどう動く?】

今回は、市場コンセンサスがほぼ固まっていないので、「2024年利下げ見通しを3回から2回に変更」の有無を考察する。

〇変更となった場合
「3回(0.75%)→2回(0.50%)」に変更となった場合は、10年物米国債利回りは4.4−4.5%台程度まで上昇し、ドルは対主要通貨で上昇。対円では150円台、対ユーロでは1.07ユーロ台が見えてくるだろう。もっとも、対円での150円台乗せの前提として、日銀が「マイナス金利の解除」実施後、追加の利上げを想定していないことがある。日銀が早期の追加利上げを検討、ということであれば、日米金利差の縮小が意識されて、このストーリーは成立しない。

急速なドル上昇に伴う円安進行であれば、政府・日銀による口先介入が強まることが想定されることで、150円台後半から151円台前半ではいったん上値が重くなりそうだが、1−2円程度のドル高円安は瞬間的に進むと想定する。その後は、今後の米経済指標などデータを確認する展開となることから、一気に152円台など昨年、一昨年のドルの高値151円95−96銭を一気に上回る展開は考えにくい。

〇変更しなかった場合
市場がどの程度織り込んでいるのかはさっぱりわからないが、変更しなかった場合、4.2%台後半の10年物米国債利回りが若干低下し、ドルは小安い動き(対円では148円程度)を示すのではないかと想定する。

ドットチャートの次の発表は、6月11―12日のFOMCであるため、仮に6月FOMCで金利引き下げ見通しを3回から2回に引き下げても、6月以降、7月、9月、11月、12月の計4回FOMCが開催されることから計算上は何ら問題ない。

となれば、19日に発表される日銀会合の結果を吟味してから、6月FOMCでドットチャートの金利引き下げ見通しを変更するという考え方もあろう。他国中銀の金融政策を見極める必要はないが、「マーケットインパクト」という観点では吟味する意味はあろう。

【最近のFOMC関係者の発言は?】

ここ最近でFOMC関係者の発言を拾った。もっとも、ブラックアウト期間の関係上、FOMC関係者による最後の発言は3月9日となる。なお、バイデン米大統領の「あの小さな組織」という皮肉がどのような意味合いを含んでいるのかが不明だが、無視していい発言だ。

発言内容を確認すると、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、ボスティック・アトランタ連銀総裁が2024年2回の利下げを言及しているが、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁は2024年FOMCの投票権を持っていない。

※ブラックアウト期間とは、主に中央銀行会合の前々週の土曜日から開始される。例えば FOMCが火曜日と水曜日に開催される場合は、会合翌日の木曜日まで計13日間続くこととなる 。

バイデン米大統領(3月11日)
「金利を設定するあの小さな組織(FRB)が金利を引き下げると確信」

グールズビー・シカゴ連銀総裁(3月9日)
「今年はインフレ率の低下に伴って、制限的な金利が緩和されると予想」
「コロナ禍前の水準まで物価が戻るとの予想は現実的ではない」
「インフレ目標は2%であり、そうあるべき」

ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁(3月8日)
「米金融当局は債券買い入れのテーパリングの加速に取り組むだろう」
「高いインフレが良いことだとはだれも考えていない」
「中立金利はまだかなり低い水準にある可能性高い」

メスター・クリーブランド連銀総裁(3月7日)
「長期のFF金利見通し引き上げを検討している」

カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁(3月7日)
「インフレが再燃すれば利上げが正当化される可能性がある」
「12月には2024年に2回の利下げが行われると予想していた」
「現時点では24年に2回の利下げを検討、1回の可能性も」
「米労働市場はバランスが良くなりつつある」

パウエルFRB議長(3月6日)
「年内いずれかの時点で利下げが適切になる可能性高い」
「インフレ率が2%に向かうと確信が持てるまで、利下げは期待できない」
「政策金利はこのサイクルのピークにある可能性が高い」
「入ってくるデータ、進展する見通し、リスクのバランスを慎重に見極める」
「まだ利下げの時期ではない」

ボスティック・アトランタ連銀総裁(3月5日)
「インフレ率は2%に向けて順調だが、勝利を宣言するには時期尚早」
「今年は2回の0.25%の利下げを予想」
「利下げの前にさらなる進展を確認する必要」
「インフレは依然として蔓延している」

グールズビー・シカゴ連銀総裁(3月2日)
「住宅インフレは本当に奇妙なものだった」
「1月のインフレがノイズであることを驚くべきではない」
「住宅インフレを監視し続ける必要」
「政策金利がかなり制限的であると信じている」
「インフレが下がり続けるなら、雇用を考えなければならない」
「金利がどこで安定するか分からない」

バーキン・リッチモンド連銀総裁(3月1日)
「一部セクターでの低下が価格上昇を相殺」
「インフレ率は低下しており、2.4%は歓迎すべき」
「前年同月比の全体的なインフレ率は低下する公算大」
「FRBは市場と競争しているわけではない」

ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁(3月1日)
「さらなる金融引き締めは必要ない」
「今年後半の利下げを予想」

メスター・クリーブランド連銀総裁(3月1日)
「PCEデータはさらなる行動が必要であることを示している」
「2024年は3回の利下げが妥当」

ボスティック・アトランタ連銀総裁(3月1日)
「夏から緩和を始めるのが適切だろう」
「警戒心を持ち続け、注意深くいる必要」
「インフレ率は私の予想以上に早く低下した」

コリンズ・ボストン連銀総裁(2月29日)
「年後半に緩和政策を開始することが適切になる可能性が高い」
「最近の経済データは、FRBの目標達成に向けた進展が不安定なものになり得ることを浮き彫りにした」
「価格の安定と健全な労働市場に持続可能な方法で経済が進んでいるかどうかを見極めるには、より時間が必要」
「ディスインフレ過程が継続するさらなる証拠が必要」
「個々のデータに過剰反応すべきではない」
「2%を上回るインフレの脅威が後退」

シュミッド・カンザスシティ連銀総裁(2月27日)
「インフレが依然として中銀目標2%を上回っているため利下げは辛抱するべき」

【2024年スケジュール】

※米国は現地時間を記載しているので、金利発表及び記者会見は日本時間翌日未明

日銀金融政策決定会合(日銀会合)
1月22日−23日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持
3月18日−19日
4月25日−26日(経済・物価情勢の展望)
6月13日−14日
7月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
9月19日−20日
10月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
12月18日−19日

米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月30日−31日・・・FOMC声明及びパウエルFRB議長は「3月利下げの可能性は低い」とけん制
3月19日−20日・・・24年金利引き下げ見通し「3回→2回」は変更せずか
4月30日−5月1日
6月11日−12日
7月30日−31日
9月17日−18日
11月 6日− 7日
12月17日−18日

欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
1月25日・・・現状の金融政策を維持、利下げの議論は時期尚早
3月 7日・・・現状の金融政策を維持、6月利下げ開始を示唆する発言
4月11日
6月 6日
7月18日
9月12日
10月17日
12月12日

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