ドル円 日銀会合に向けて円高地合い継続(週報3月第2週)

昨年末からの上昇トレンドに明確に終わりを告げ、現在は直近高値となった150円台後半からどこまで円高を試せるのかという段階にあります。

ドル円 日銀会合に向けて円高地合い継続(週報3月第2週)

日銀会合に向けて円高地合い継続

〇先週のドル円、弱い米経済指標と日銀3月マイナス金利解除見通し高まり、週初から4円以上の円高水準
〇日銀会合参加者にマイナス金利解除賛成派が増えているとの観測変化、円金利上昇と円買い戻しに繋がる
〇3/19日銀会合でマイナス金利解除、ゼロ金利でいったん様子見から年内2回程度利上げの可能性高いか
〇今週後半から来週初にかけては円高に注意。先週の動きが速かったため戻り売りが上値抑え易い
〇12月安値と2月高値との半値押し145.56を、当面のターゲットとみる
〇今週は戻り売りが上値を抑え易いとして145.60レベルをサポート、148.00レベルをレジスタンスと見る

今週の週間見通し

先週のドル円は週初こそ重要イベントを控えて150円台前半で上下とも限定的な値動きとなっていたものの、ドルの上値が重たい印象でのスタートとなっていました。その後、日替わりで弱い米国経済指標と日銀関係者による3月マイナス金利解除の見通しが高まっていく中で、火曜NY市場以降は連日ドル売り・円買いが強まり金曜には週初の水準から4円以上も円高水準を見ることとなりました。

弱い米国経済指標による米金利低下からドルが売られるという動きはこれまでにも何度も見てきましたし、先週の動きも短期的な影響にとどまる可能性は高いのですが、日銀のニュースは今後一年を通してテーマとなる材料です。昨年末時点では3月にもマイナス金利を解除するとの見通しが強かったのですが、年初の能登半島地震の影響で1か月ほど出口が遅れるというのが最近までの流れでした。

しかし、先週は金融政策決定会合に参加するメンバーのうち、少なくとも一人はマイナス金利解除に賛成票という話が、週末に向けてはマイナス金利解除に賛成する委員が増えているとの観測に変化し、そのことが円金利上昇と円買い戻しの動きにつながったと言えます。円金利でも10年債より2年債や5年債といったより短期の金利上昇が目立ちました。一例として2年債と10年債の2月以降の金利上昇を比べると、10年債が+0.06%、2年債は+0.12%と倍のペースで金利が上昇してきました。

市場参加者としても日銀のマイナス金利解除が近いという見通しが改めて強まってきた結果と言えますし、今週は春闘のヤマ場でおそらくはそれなりの賃上げが見えてくるということもあって、19日の日銀会合でまずはマイナス金利解除に動く可能性は高いということになりそうです。その後、ゼロ金利でいったん様子見をして、年内に2回程度の利上げが行われる可能性が高いのではないかと見ています。

今週は先週ほど大きな材料もありませんので、引き続き日銀のゼロ金利解除に向けた思惑が大きな材料となり、それによってこれまで積みあがっていた円売りポジションの解消も進んでいく動きがドルの上値を抑えることになるでしょう。ちなみにシカゴの通貨先物における円売りポジションは2月27日時点で約13.3万枚のピークをつけ、3月5日時点では約11.9万枚へと減少しましたが、依然として高水準であることに変わりはありません。

テクニカルには日足チャートをご覧ください。

昨年末からの上昇トレンドに明確に終わりを告げ、現在は直近高値となった150円台後半からどこまで円高を試せるのかという段階にあります。12月安値と2月高値との38.2%押しが146.81と、146円台後半はいったん踊り場となりやすい水準ではありますが、円売りポジションの多さから考えると、戻したらドル売りという動きが今後は強まってくると見られ、当面のターゲットとしては半値押しの145.56を視野に入れ始めたと言ってよさそうです。

タイミングとしては日銀会合までまだ1週間ありますので、その前後にトライしやすいように思いますが、会合の1日目となる18日の日経電子版で何らかのリーク記事が出てくる可能性が高そうですから、今週後半から来週初にかけてが円高に注意すべきタイミングとなりそうです。

今週は先週の動きが速かっただけに戻り売りが上値を抑えやすいと見て、上記ターゲットに近い145.60レベルをサポートに、148.00レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

日銀会合に向けて円高地合い継続

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。
また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2024年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

3月11日(月)
**:** 米国市場夏時間取引開始 ☆
08:50 本邦10〜12月期GDP改定値
**:** 予算教書

3月12日(火)
09:30 豪州2月企業景況感
16:00 ドイツ2月CPI
16:00 英国2月失業率
17:00 オーストリア中銀総裁講演
21:30 米国2月CPI ☆

3月13日(水)
16:00 英国1月鉱工業生産、貿易収支
18:00 レーンECB理事講演 ☆
19:00 ユーロ圏1月鉱工業生産
23:00 ギリシャ中銀総裁講演
23:30 週間原油在庫統計

3月14日(木)
09:01 英国2月住宅価格
21:30 米国2月PPI ☆、小売売上高
21:30 米国新規失業保険申請数
23:00 米国1月企業在庫

3月15日(金)
16:45 フランス2月CPI
21:30 米国3月NY連銀製造業景況指数 ☆
21:30 米国2月輸入物価
22:15 米国2月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 米国3月ミシガン大消費者信頼感速報値 ☆

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

3月4日(月)
週明けのドル円は終日じり高の展開となりましたが、米金利も終日じり高となっていたことが主要因です。ただパウエル議長の議会証言、ベージュブック、週末には雇用統計と米国関連で重要なイベントが目白押しとなっていることもあって、動き自体は鈍いままでした。

3月5日(火)
ドル円はNY市場までは動意薄、若干上値が重たい程度の動きが続きました。NY市場に入り弱い経済指標に反応し、それまでじり安だった米金利がさらに下げる動きとなり為替も追随してドル売り、NYダウが大幅安となったことも重石となっていた様子でした。

3月6日(水)
ドル円は東京市場からじり安、日銀3月会合で少なくとも一人はマイナス金利解除を支持とのヘッドラインを受け円高が強まり149円台前半へと水準を下げての海外市場入り。その後もじり安の流れに変化はなくNY市場では弱めのADPをきっかけとした米金利低下によるドル売りから一時149.09レベルの安値をつけ、やや戻して引けました。

3月7日(木)
ドル円は東京朝方からじり安の展開が続きました。日銀の3月マイナス金利解除の思惑が高まり円金利が上昇、植田総裁も大規模緩和の修正を検討と3月緩和を考慮に入れている発言を行いました。NY市場朝方には147.58レベルまで水準を切り下げ、その後やや買い戻しも見られましたが、引けにかけては改めてじり安の動きとなりました。

3月8日(金)
ドル円は続落、東京時間は米国雇用統計を前に小動きだったものの、欧州市場序盤に日銀が19日会合でマイナス金利解除に動く可能性が高まっているとの見通しから147円割れ。その後NY市場までは小動きだったものの、米国雇用統計は非農業部門の数字は強かったものの、前月までの数字が下方修正されたこと、失業率と平均時給が予想よりも悪かったことから全体として雇用が弱いと判断され、米金利低下、ドル安となり一時146.48レベルの安値をつけました。引けにかけては週末前のポジション調整も出て147円を回復して引けました。



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