米金融政策発表に注目、ただドルは底堅そう(週報12月第2週)

先週のドル/円相場はドルが大荒れの様相。7日には一日で5円を超える変動を記録し、週末8日も動揺収まらず値動きは荒っぽい。

米金融政策発表に注目、ただドルは底堅そう(週報12月第2週)

米金融政策発表に注目、ただドルは底堅そう

〇先週のドル円、保ち合い後に底割れすると一気に141円台までドル安、145円台まで買い戻され越週
〇日銀総裁発言を受けた早期の金融政策転換期待、ドル安・円高進行の一因に
〇JOLTS等の不冴えがドル売り・円買いを後押しするも、米雇用統計の好数字が週末ドル買戻しを支援
〇週間底値141.62で短期の底を打った可能性高い、ドルはやや底堅く推移すると予想
〇今週は米欧の政策金利発表予定、いずれも金利据え置き予想、来年についての見通しに注目
〇今週は11月消費者物価指数、小売売上高等の米重要指標も発表予定
〇予想レンジは142.50-147.00、ドル高・円安は先週末高値を含めた145.20-30が最初の抵抗
〇ドル安・円高方向は143.70レベルをめぐる攻防にまずは注目

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円相場はドルが大荒れの様相。7日には一日で5円を超える変動を記録し、週末8日も動揺収まらず値動きは荒っぽい。

前週末は、朝鮮中央通信が「北朝鮮の『偵察衛星運用室』が2日から任務開始」と報じ思惑を呼ぶ。一方、ウクライナのエネルギー省は「ザポロジエ原発が一時停電となり、大惨事の可能性もあった」と発表している。
そうした状況下、ドル/円は146.80円レベルで寄り付いたのち、しばらくは保ち合い。147円を挟んでのトータル1円レンジをたどっていたが、底割れするとそのまま一気に141円台までストップロスを巻き込みつつ、ドル安が進行した。ただ、短時間でのドル下落スピードが速かったこともあり、週末は逆にドル買戻しが優勢に。Vの字型に145円台まで買い戻され、週末NYはそのまま145円前後で取引を終え、越週している。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「日米金融政策」と「中国情勢」について。
前者のうち日本サイドは、7日に植田日銀総裁が発した「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」との発言が思惑を呼ぶなか、植田氏が岸田首相と首相官邸で意見交換したと伝えられたことで、市場では早期の金融政策の転換期待が急速に広まった。一時141円台までドル安・円高が進行する一因に。それに対して米国は、週末発表される米雇用統計の露払い的な位置づけを担っていた5日のJOLT雇用動態調査、そして6日のADP雇用統計がともに予想より悪化。米利上げ打ち止め観測がさらに強まる格好となり、為替市場においてもドル弱材料でドル売り・円買いを後押ししていたことは間違いない。しかし、肝心の米雇用統計は想定外の好数字で、逆に週末NYのドル買戻しを支援していた。

対して後者は、6日にムーディーズが、中国の信用格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更するとの発表し物議を醸す格好に。理由については、債務問題を懸念した結果だと指摘していた。また、ムーディーズは翌日にも、同国地方政府の資金調達会社である融資平台(LGFV)26社の格付け見通しを引き下げたと発表。海外投資家のあいだで、中国に対する警戒感が増した模様だ。実際、米紙WSJでは中国地方政府の財政悪化を伝えたうえで、「巨額隠れ債務は危機的状況に」などと報じていた。なお、そうしたなか米中外相が電話会談を行い中東問題などについて協議したほか、EUのミシェル大統領とフォンデアライエン欧州委員長が習国家主席と北京で会談するなど、中国による積極的な外交姿勢が目を引いていたようだ。

<< 今週の見通し >>

先週のドル/円相場は、一週間を通して141.62-147.50円という価格変動。つまり週間で5.88円も動いたわけだが、これはドルが前回底値の137.25円を付けた7月10-14日の5.75円を上回る、今年一番の「週間大変動」だった。いずれにしても、ドルは移動平均やフィボナッチなど、テクニカルで見た下値メドを次々割り込んできており、リスクはドル安方向にバイアスか。材料的にも米FOMCが予定されており、確かに予断を許さないものの、基本的には前述した141.62円で短期の底を打った可能性が高く、ドルはやや底堅く推移すると予想している。

引き続き日米欧の金融政策会合に市場の関心が集まるなか、今週はいよいよ米国そして英国とECBによる政策金利の発表が予定されている。ちなみに、事前予想ではいずれも「金利据え置き」が予想されているものの、問題はそれとともに示される先々、具体的には来年についての見通しだろう。たとえば、欧州については「タカ派」で知られるシュナーベルECB理事までもが、「2024年利下げ」を示唆するコメントを先週発しており、ECB理事会がそれを追随する内容となれば、さらにユーロ売りに拍車をかける可能性もありそうだ。米国についても同様で、パウエルFRB議長発言などに要注意。

テクニカルに見た場合、ドル/円週足は11月高値151.92円を起点に、先週141.62円とおよそ1ヵ月で10円強の下落をたどっている。下方向のテクニカルポイントを次々割り込むなど、リスクはドル安方向で間違いないものの、短期的にはそれほど下値リスクが強いとは思っていない。週足をみても、3円以上の下ヒゲを残す格好で、あまり下値を積極的には売りたくないイメージだ。もちろんドルの上値は重そうだが、一方で下値もなかなか堅いだろう。

材料的に見た場合、中長期的には開催した「中央政治局会議」で、来年の経済政策「内需拡大」方針を示したと伝えられている「中国情勢」。ロシア報道官がウクライナの提示した和平交渉について「非現実的」と一蹴していた「ロシア・ウクライナ情勢」、「北朝鮮情勢」−−などに注目。
そうしたなか今週は、11月の消費者物価指数や同小売売上高といった非常に重要な米経済指標が発表される。しかし、先でも取り上げたように米FOMCによる政策金利発表が予定されており、やはり基本的にはそちらが週間を通した最大の注目材料となりそうだ。

そんな今週のドル/円予想レンジは、142.50-147.00円。ドル高・円安については、先週末高値を含めた145.20-30円が最初の抵抗。超えれば146台に乗せるばかりか、147円に接近する展開も否定できない。
対してドル安・円高方向は、先週ドルが141.62円を示現後、下値を少しずつ切り上げており、そうした観点からすると143.70円レベルをめぐる攻防にまずは注目か。割り込むと先週末安値の142.50円がターゲットとなる。

米金融政策発表に注目、ただドルは底堅そう

ドル円日足



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