11月13日以降の大幅下落に対する3分の1を戻す
〇先週のドル円、8日未明に141.67まで急落、6日夜高値147.49からの下げ幅は5.82となった
〇7日に日銀植田総裁が国会で「年末から来年にかけてチャレンジングになる」と述べたこと等が背景
〇8日夜の米雇用統計では非農業部門就業者数が予想上回り、失業率が予想外に改善145.19まで戻す
〇週末、米利下げ時期後ずれの見方広がるも、米長期金利低下状況から脱したとまでは言えない状況か
〇FOMCから上昇が勢い付く場合は147円台への上昇を想定し、中勢レベルでの上昇再開感が強まる
〇143円割れからは下げ再開とみて12/8未明安値141.67を再び試すとみる
〇FOMCを通過して141.67を割り込む場合は140円前後試しへ下値目途を引き下げ
【概況】
ドル円は12月7日午前に日銀植田総裁が国会答弁で金融緩和政策の出口戦略について「年末から来年にかけてチャレンジングになる」と述べ、その後に岸田首相と会談して出口戦略についての考え方を説明したとの報道により暴落的な下落に見舞われ、8日未明には141.67円まで急落して6日夜高値147.49円からの下げ幅は5.82円となった。
狼狽的な売り注文の連鎖による過剰反応が落ち着いて8日朝には144円台序盤へ戻し、午前に142.49円まで反落したところを買われてリバウンド期に入っていたが、12月8日夜の米雇用統計で非農業部門就業者数が19.9万人増と予想の18万人増を上回り失業率が予想外に3.7%へ改善、平均時給も高止まりしたことでのドル高と米長期債利回り上昇を見て145.19円へ戻り高値を切り上げ、直後に144円割れへ反落したところも買われ、ミシガン大の消費者信頼感指数が改善したことも加勢となり9日早朝の取引終了時には144.97円を付けた。
【米雇用統計強めで来年3月利下げ期待が後退】
12月8日夜に米労働省が発表した11月雇用統計では非農業部門就業者数が前月比19万9000人増となり10月の15万人増及び市場予想の18万人増を上回った。9月分は当初の29.7万人増から26.2万人増へ下方修正されたが高水準であり、10月分は当初発表と変わらなかった。業種別では医療関連が前月比7.38万人増と突出して増加、自動車関連が全米自動車労組ストの終了により3万人増となったが、小売は3.84万人減となった。
失業率は10月の3.9%から変わらずと予想されていたが、3.7%へ予想外に改善した。
インフレ指標である平均時給の伸び率は前月比0.4%上昇で10月の0.2%から加速、市場予想の0.3%を上回り、前年同月比は4.0%で10月(速報の4.1%から4.0%へ下方修正)と変わらず市場予想と一致した。
総じて予想よりも堅調な数字となったため、早ければ来年3月にも利下げが始まるとの期待が先行していた市場にとっては前のめり感が後退するものとなり、米金利先物市場における3月利下げ確率はそれまでの6割強から5割弱へ低下した。
米ミシガン大の12月消費者信頼感指数は69.4となり11月の61.3から改善して市場予想の62.0を大幅に上回った。現況指数は11月の68.3から74.0へ、期待指数は56.8から66.4へ改善しており、景況感の強さを示し、株式市場にとっては長期感の利上げによる影響での不況入りへの心配を後退させて株高要因となった。
期待インフレ率は1年先で11月の4.5%から3.1%へ低下、5年先は3.2%から2.8%へ低下しており、消費者心理においてもインフレ鎮静化傾向が続くとの見方が優勢であることが示された。
【米長期債利回り上昇、ダウも続伸】
12月8日の米長期債利回りは米雇用統計が堅調な内容だったことで来年の利下げ時期が後ずれするとの見方から総じて上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.08%上昇の4.23%で終了した。直近のピークである10月23日の5.02%から12月6日の4.10%まで低下し、7日に前日比0.04%上昇とし、8日も連騰で一時4.28%まで上昇したが上げ幅を削っており、低下基調から脱却したとまでは言えない状況だ。
30年債利回りは前日比0.05%上昇の4.31%で終了した。10月23日の5.18%をピークとして12月6日に4.21%まで低下し、7日は0.04%上昇、8日も4.35%まで戻してから上昇幅を削っている。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比0.14%上昇の4.73%で終了した。10月19日に5.26%でピークを付けてからの大幅低下が12月1日の4.45%で落ち着き、その後は12月1日の高安レンジ内で下げ渋り型の持ち合いで推移していたが、8日は1日のレンジを超える大幅上昇となり、反騰継続へ進む可能性を示した。
ドル円にとっては米長期債利回りが総じて上昇したことで暴落一服による買い戻し優勢の流れが助長された印象だ。
一方でNYダウは前日比130.49ドル高と上昇、7日の62.95ドル高の連騰としたが12月6日に付けた年初来高値更新には至らず。ナスダック総合指数は前日比63.98ポイント高と上昇して7日の193.28ポイント高からの連騰となった。米雇用統計とミシガン大消費者信頼感指数が強めだったことで不況入りへの懸念が後退したとして株高反応を招いたようだ。米国株高がアジア株高につながればドル円のリバウンド継続にも寄与すると思われる。
【ドル円の下落規模は年初来で最大、週足の下ヒゲも最大】
ドル円は11月13日高値151.90円で昨年10月21日高値151.94円に面合わせしたもののダブル天井型にとどまり急落した。12月8日未明の7日付け安値141.67円までの下げ幅は10.23円となり、今年3月8日から3月24日への下げ幅8.28円と6月30日から7月14日への下げ幅7.82円を超えている。
3月24日安値129.63円と7月14日安値137.24円を結んだ上昇トレンドの下値支持線を大きく割り込んでおり、昨年10月21日高値からの下落時に近い印象がある。
12月7日の日足レンジは147.38円から141.67円まで5.71円だが、昨年10月21日からの下落途中における11月10日に米CPIの大幅鈍化をショックとして急落した時の高安レンジ(146.58円から140.20円まで6.38円)に近い規模となっている。
これらを踏まえれば、昨年10月21日高値から今年1月16日安値までの下落時と同規模へ発展する可能性も抱えている状況と思われるが、一方では週間足で極めて長い下ヒゲを付けていることで反騰継続から新たな上昇相場を構築する起点となる可能性も秘めていると思われる。
先週の週足は安値141.67円から終値144.97円まで3.30円の下ヒゲ幅だが、週足下ヒゲとしては2020年3月9日安値101.23円から当週始値104.20円までの下ヒゲ2.97円、2019年1月3日安値104.82円から当週終値108.45円までの下ヒゲ3.63円に匹敵する規模であり、いずれもその後に大きな反騰へ進んでいる。
日足でも週足でも、長い下ヒゲは「たくり足」と呼ばれて底打ちサインとなるケースも多いが、翌週以降も下ヒゲをつぶさずに上昇することが「たくり足」完成の条件であり、翌週に下ヒゲがつぶされる反落が発生する場合にはかえって弱気な展開へ進みやすくなるものだ。「たくり足」を活かせるかどうか、今週の米FOMC反応にかかってくると思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、143.00円を下値支持線、146.00円を上値抵抗線とする。
(2)145.50円から146.00円にかけての水準は戻り売り有利とみる。ただし、FOMCから上昇が勢い付く場合は147円台への上昇を想定し、中勢レベルでの上昇再開感が強まるとみる。
(3)143円割れからは下げ再開とみて12月8日未明安値141.67円を再び試すとみる。142円以下は反騰注意とするが、FOMCを通過して141.67円を割り込む場合は140円前後試しへ下値目途を引き下げ、年末にかけての下落継続と考える。
注:ポイント要約は編集部
【当面の予定】
12/11(月)
休場 タイ
08:50 (日) 11月 マネーストックM2 前年同月比 (10月 2.4%)
08:50 (日) 10-12月期 大企業全産業業況判断指数・BSI (7-9月 5.8)
08:50 (日) 10-12月期 大企業製造業業況判断指数・BSI (7-9月 5.4)
25:30 (米) 財務省3年債入札
27:00 (米) 財務省10年債入札
12/12(火)
休場 メキシコ
米連邦公開市場委員会(FOMC)初日
08:30 (豪) 12月 ウエストパック消費者信頼感指数 (11月 79.9)
08:50 (日) 11月 国内企業物価指数 前月比 (10月 -0.4%)
08:50 (日) 11月 国内企業物価指数 前年同月比 (10月 0.8%)
09:30 (豪) 11月 NAB企業景況感指数 (10月 13)
16:00 (英) 10月 失業率・ILO方式 (9月 4.2%)
19:00 (独) 12月 ZEW景況感 (11月 9.8)
19:00 (欧) 12月 ZEW景況感 (11月 13.8)
22:30 (米) 11月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (10月 0.0%、予想 0.1%)
22:30 (米) 11月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (10月 3.2%、予想 3.2%)
22:30 (米) 11月 コアCPI 前月比 (10月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 11月 コアCPI 前年同月比 (10月 4.0%、予想 4.0%)
27:00 (米) 財務省30年債入札
28:00 (米) 11月 月次財政収支 (10月 -666億ドル)
12/13(水)
OPEC月報
06:45 (NZ) 7-9月期 経常収支 (4−6月 -42.08億NZドル)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業製造業業況判断 (7-9月 9、予想 9)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業製造業先行き (7−9月 10)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業非製造業業況判断 (7-9月 27、予想 27)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業非製造業先行き (7−9月 21)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業全産業設備投資 前年度比 (7−9月 13.6%、予想 13.2%)
16:00 (英) 10月 月次GDP 前月比 (9月 0.2%)
16:00 (英) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 0.0%)
16:00 (英) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 1.5%)
16:00 (英) 10月 貿易収支・物品 (9月 -142.88億ポンド)
16:00 (英) 10月 貿易収支 (9月 -15.74億ポンド)
19:00 (欧) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -1.1%)
19:00 (欧) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 -6.9%)
22:30 (米) 11月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (10月 -0.5%、予想 0.1%)
22:30 (米) 11月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (10月 1.3%)
22:30 (米) 11月 コアPPI 前月比 (10月 0.0%、予想 0.2%)
22:30 (米) 11月 コアPPI 前年同月比 (10月 2.4%)
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
28:00 (米) 米FOMC 政策金利 (現行 5.25-5.50%、予想 5.25-5.50%)
28:30 (米) パウエルFRB議長、記者会見
12/14(木)
政策金利発表 台湾、ブラジル、フィリピン、スイス、ノルウェー、メキシコ
06:45 (NZ) 7-9月期 GDP 前期比 (4-6月 0.9%)
06:45 (NZ) 7-9月期 GDP 前年同期比 (4-6月 1.8%)
08:50 (日) 10月 機械受注 前月比 (9月 1.4%)
08:50 (日) 10月 機械受注 前年同月比 (9月 -2.2%)
09:30 (豪) 11月 新規雇用者数 (10月 5.50万人)
09:30 (豪) 11月 失業率 (10月 3.7%)
13:30 (日) 10月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 1.0%)
13:30 (日) 10月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 0.9%)
13:30 (日) 10月 設備稼働率 前月比 (9月 0.4%)
21:00 (英) BOE(英中銀) 政策金利 (現行 5.25%、予想 5.25%)
22:15 (欧) ECB(欧州中銀) 政策金利 (現行 4.50%、予想 4.50%)
22:30 (米) 11月 小売売上高 前月比 (10月 -0.1%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 11月 小売売上高・除自動車 前月比 (10月 0.1%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 11月 輸入物価指数 前月比 (10月 -0.8%、予想 -0.8%)
22:30 (米) 11月 輸出物価指数 前月比 (10月 -1.1%、予想 -1.0%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 186.1万人)
22:45 (欧) ラガルドECB総裁、記者会見
24:00 (米) 10月 企業在庫 前月比 (9月 0.4%、予想 0.1%)
12/15(金)
休場 南ア
11:00 (中) 11月 小売売上高 前年同月比 (10月 7.6%、予想 12.5%)
11:00 (中) 11月 鉱工業生産 前年同月比 (10月 4.6%、予想 5.6%)
13:30 (日) 10月 第三次産業活動指数 前月比 (9月 -1.0%)
17:30 (独) 12月 製造業PMI・速報値 (11月 42.6)
17:30 (独) 12月 サービス業PMI・速報値 (11月 49.6)
18:00 (欧) 12月 製造業PMI・速報値 (11月 44.2)
18:00 (欧) 12月 サービス業PMI・速報値 (11月 48.7)
18:30 (英) 12月 製造業PMI・速報値 (11月 47.2)
18:30 (英) 12月 サービス業PMI・速報値 (11月 50.9)
19:00 (欧) 10月 貿易収支・季調済 (9月 92億ユーロ)
19:00 (欧) 10月 貿易収支・季調前 (9月 100億ユーロ)
22:30 (米) 12月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (11月 9.1、予想 3.8)
23:15 (米) 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 -0.6%、予想 0.2%)
23:15 (米) 11月 設備稼働率 (10月 78.9%、予想 79.1%)
23:45 (米) 12月 製造業PMI・速報値 (11月 49.4)
23:45 (米) 12月 サービス業PMI・速報値 (11月 50.8)
オーダー/ポジション状況
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