ドル円 ドル安の流れは継続(週報12月第1週)

先週のドル円はタカ派のウォラーFRB理事がFRB関係者で初めて明確に利下げという言葉を使ったことで、米金利低下とドル安を招いた一週間となりました。

ドル円 ドル安の流れは継続(週報12月第1週)

ドル安の流れは継続

〇先週のドル円、ウォラー理事のハト派的発言が米金利低下とドル安を招く
〇しばらくは緩和への転換タイミングが市場のメインテーマ
〇来年日米金利差が縮小方向に動いても円急騰はなさそうだが、じりじりと円高方向に動く展開続くか
〇12/8米国雇用統計、12/12米国CPI発表、12/13FOMCでの現状維持は98%織り込み済み
〇テクニカルには、3月・7月の円買いと同様の動きを繰り返すとすると、144円水準がターゲットか
〇今週は145.00レベルをサポートに147.50レベルをレジスタンスとする流れを見る

今週の週間見通し

先週のドル円はタカ派のウォラーFRB理事が「インフレ率低下が今後数カ月続けば政策金利を引き下げる根拠」とFRB関係者で初めて明確に利下げという言葉を使ったことで、米金利低下とドル安を招いた一週間となりました。

今週は8日に米国雇用統計、来週は12日に米国CPIの発表を経て13日にFOMCとなりますが、12日のCPIを待たず、既にFOMCでの現状維持は98%織り込み済みです。ウォラー理事の発言後にタカ派な発言も続きましたが、既に利上げサイクルは終わりターミナルレートに到達、この状態がいつまで続くのかに注目は移っています。

現状では3月にも利下げと見る向きが既に58%と半数を超えて来ています。5月だと86%が利下げを見込んでいますので、それを考えるとしばらくは緩和への転換タイミングが市場のメインテーマになって来ると見られます。

さらに来年の第1四半期以降には日銀がマイナス金利からの脱却を考えるタイミングとも重なりますので、日米金利差が縮小方向となれば、これまでの円売りポジションを落としていく動きも出てくるでしょう。円急騰といった動きは無さそうですが、じりじりと円高方向に動いていく展開は今後も続き、ドル円は買われたところで戻り売りという回転になっていくと考えています。

テクニカルには3月の円買い、7月の円買いとも直前の高値から約8円の調整となっていました。今回も同様の動きを繰り返すとすると144円水準がターゲットとなってくると見られます。日足チャートをご覧ください。

7月安値と11月高値との半値押しが144.56となっていて、同水準までの値幅は7円35銭ですが、最初のテクニカルなターゲットとしては参考にしやすい水準となります。雇用統計が弱ければ今週中にもあり得る水準ですが、やはり来週のCPIを見た上で低下しているようであればというところでしょうか。いずれにしても今後1〜2週間の間に試す可能性は高そうです。

チャートとしては青の平行下降チャンネルの中でピンクの線(144円までのライン)で示した展開を考えています。戻りは既に148円台で上値が重くなってきていますので、今週は147円台半ばから上では戻り売りを考える向きが増えてくるでしょう。

今週は145.00レベルをサポートに147.50レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

ドル安の流れは継続

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

12月4日(月)
16:00 ドイツ10月貿易収支
17:45 デギンドスECB副総裁講演 ☆
23:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
24:00 米国10月製造業新規受注

12月5日(火)
08:30 本邦11月東京区部CPI ☆
09:01 英国11月小売売上高
10:45 中国11月MarkItサービス業PMI ☆
12:30 豪中銀政策金利発表
16:45 フランス10月鉱工業生産
17:50 フランス11月サービス業PMI
17:55 ドイツ11月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏11月サービス業PMI
18:30 英国11月サービス業PMI
19:00 ユーロ圏10月PPI ☆
23:45 米国11月サービス業PMI
24:00 米国10月求人件数 ☆
24:00 米国11月ISM非製造業指数 ☆

12月6日(水)
09:30 豪州7〜9月期GDP ☆
16:00 ドイツ10月製造業新規受注
18:30 英国11月建設業PMI
19:00 ユーロ圏10月小売売上高
19:30 英中銀金融安定報告書公表 ☆
22:15 米国11月ADP全国雇用者数 ☆
22:30 米国7〜9月期非農業部門労働生産性
22:30 米国10月貿易収支
24:00 カナダ中銀政策金利発表
24:30 週間原油在庫統計

12月7日(木)
09:30 豪州10月貿易収支
**:** 中国11月貿易収支
16:00 ドイツ10月鉱工業生産
16:45 オーストリア中銀総裁講演 ☆
16:45 フランス10月貿易収支
19:00 ユーロ圏7〜9月期GDP確報値
21:30 米国11月チャレンジャー人員削減数
22:30 米国新規失業保険申請数
24:00 米国10月卸売売上高
30:45 NZ7〜9月期製造業売上高
**:** EU・中国サミット(〜8日)

12月8日(金)
08:50 本邦7〜9月期GDP改定値 ☆
08:50 本邦10月貿易収支
16:00 ドイツ11月CPI
22:30 米国11月雇用統計 ☆
24:00 米国12月ミシガン大消費者信頼感速報値 ☆

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時−NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

11月27日(月)
 週明けのドル円は前週後半の上値の重さもあってドル売りが先行、また米10年債利回りも終日下げ続ける動きとなったことから、NY後場には148.54レベルまで水準を切り下げ安値圏での引けとなりました。

11月28日(火)
 ドル円は東京市場では前日の流れを継続しドル売りが先行しましたが、欧州市場序盤からは買い戻しが入り、NY市場前場までは148円台半ばを中心として方向感がはっきりしない上下をしていました。NY昼前にウォラーFRB理事が講演で「インフレ率がさらに数ヶ月低下すれば、政策金利を引き下げる根拠」と、これまでから一歩踏み込んだ発言を行いドル全面安となりました。147.32レベルの安値をつけ、安値圏での引けとなりました。

11月29日(水)
 前日のウォラーFRB理事の発言は引き締め局面の中で初めて緩和の可能性に触れた余波は大きく9月以来の146円台半ばを見ました。依然として押し目での買いも根強いものの買われた局面は絶好の戻り売りとされ、これまでの押し目買いから戻り売りへと流れが変化してきた可能性も高まってきました。

11月30日(木)
 ドル円は東京市場では全く動きが無かったものの、欧州市場に入りユーロ安に連動して遅れてドル買いに動きました。その後、NY市場に入ってからは複数のFRB関係者がタカ派な発言をしたことで一時148.52レベルの高値をつけましたが、月末実需の売りも出てやや押して引けました。

12月1日(金)
 金曜のドル円はNY市場まで148円を挟んで上下を繰り返し方向感がはっきりしない週末相場となりました。NY市場では弱い経済指標をきっかけに米金利が低下、その動きとともにドル円も146.66レベルまで水準を切り下げ、安値圏での週末クローズとなりました。


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