上値は重いが中期上昇トレンドの調整内の動き
〇FOMC現状維持となるも、パウエル議長会見がハト派的と受け止められ米金利低下によるドル売りへ
〇週末は米国雇用統計の不冴えに米金利が一段と低下、149円台前半へと押し、ドルの上値重い
〇引き締め局面下で雇用が一段と弱い動きになれば米金利も頭打ち、ドル円も調整が続く可能性
〇短期的には下げに転じてきたが、中期的なドル高・円安トレンドに変化が出たところまでは考えにくい
〇今週は148.90レベルをサポートに150.40レベルをレジスタンスとする流れを見る
今週の週間見通し
先週のドル円は週初に日経記事のリークで円高に振れたものの、火曜の日銀会合後は材料出尽くしによるドル買い戻し、さらに財務省が10月の介入額をゼロと発表したことで150円が介入レベルではないとの判断から円大幅安となり、週間高値となる151.74レベルまで円安が進行しました。そして水曜のFOMCは予想通り現状維持となったもののパウエル議長会見が思いのほかハト派であったことから米金利低下によるドル売りへと転じ、週末金曜は予想よりも弱い米国雇用統計の結果を受け、米金利が一段と低下、ドル円も149円台前半へと押し、ドルの上値が重たい週末クローズとなりました。
日銀の会合では事前にYCCの撤廃もしくは再修正が取りざたされていましたが、今回も前夜NY市場で日経新聞によるリーク記事が出たことで、発表を前に円高に振れることとなりました。
この記事はオフィシャルリークとも思えるもので、もし言えない内容であればコメントしなければ良いわけですが、あえて結果に近い内容を前夜にリークすることで市場にメッセージを伝えるという、WSJ紙がFEDウォッチャーのティミラオス氏を使って行う市場との対話というパターンに似ています。
それよりも最大の驚きは10月3日に介入していなかったという事実です。3円近い円急騰劇を演じたことから日銀残に影響を与えない程度の少額介入という見方をしていましたが、まさかの介入ゼロという発表で、そうなるとアルゴリズムによるトレードが介入と勘違いしたストップも巻き込みながら、想定以上の円高につながったというところでしょうか。財務省も思わせぶりにノーコメントと言っていたことは振り返るとそれしか言いようがなかったということでもあります。
そして木曜金曜は米国からの経済指標が予想よりも弱い数字が続いたことで米金利一段の低下によるドル売りへとつながったのですが、ここにきてそろそろ米国の雇用も失速してきたということに思えます。インフレは徐々に落ち着いてきてはいるものの、まだターゲットには遠く引き締め局面が長期化することが雇用にも徐々に影響が出て来ているということでしょうが、それでもこれまでの雇用の伸びを考えるとFRBはうまくコントロールしてきたという感じです。
今後引き締め局面下で雇用が一段と弱い動きになってくるであろうことを考えると、米金利も頭打ちで日米金利差が縮小する動きから、ドル円も調整が続く可能性が出てきたという印象です。テクニカルには日足チャートをご覧ください。
先週までのピンクの平行上昇チャンネルからやや幅を広げた青の平行上昇チャンネルに引き直しました。短期的には下げに転じてきたと言えますが、中期的なドル高・円安トレンドに変化が出たところまでは考えにくいため、更に下げてきた場合に下降チャンネルへと引き直すことを考えようと思っています。
現状は金曜安値圏が最初のサポート、先週安値が次のサポート、先週安値を下回ってくる場合には148円水準が視野に入ってきますが、今週のところはサポートを下抜けるところまでは行かないと思います。いっぽうで150円の大台超えでは売りたい向きも増えてきていると見られ、150円台前半が戻りの限界点となると見ています。
今週は148.90レベルをサポートに150.40レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
11月6日(月)
**:** 米国冬時間開始 ☆
08:50 日銀会合(9月)議事要旨公表
16:00 ドイツ9月製造業新規受注
17:35 デギンドスECB副総裁講演 ☆
17:50 フランス10月サービス業PMI
17:55 ドイツ10月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏10月サービス業PMI
18:30 英国10月建設業PMI
21:45 オーストリア中銀総裁講演
27:00 ドイツ連銀総裁講演 ☆
11月7日(火)
09:01 英国10月小売売上高
**:** 中国10月貿易収支
12:30 豪中銀政策金利発表 ☆
16:00 ドイツ9月鉱工業生産
19:00 ユーロ圏9月PPI ☆
22:30 米国9月貿易収支
23:50 (カンザスシティ連銀総裁講演)
27:30 ダラス連銀総裁講演 ☆
28:30 ドイツ連銀総裁講演
11月8日(水)
16:00 ドイツ10月CPI
16:45 フランス9月貿易収支
17:45 レーンECB理事講演 ☆
18:00 ベルギー中銀総裁、アイルランド中銀総裁講演
18:30 英中銀総裁講演 ☆
19:00 ユーロ圏9月小売売上高
21:30 スペイン中銀総裁講演
24:00 米国9月卸売売上高
24:30 週間原油在庫統計
**:** ユーロ圏財務相会合 ☆
11月9日(木)
08:50 日銀会合(10月)主な意見 ☆
08:50 本邦9月貿易収支
09:01 英国10月住宅価格
10:30 中国10月CPI ☆・PPI
17:00 フランス中銀総裁講演 ☆
17:10 レーンECB理事講演
22:30 米国新規失業保険申請数 ☆
23:30 (アトランタ連銀総裁、リッチモンド連銀総裁講演)
26:00 (セントルイス連銀総裁講演)
26:30 ラガルドECB総裁講演 ☆
28:00 パウエルFRB議長講演 ☆
**:** EU財務相会合
11月10日(金)
09:30 豪中銀四半期金融政策報告 ☆
16:00 英国7〜9月期GDP速報値 ☆
16:00 英国9月鉱工業生産、貿易収支
16:00 トルコ9月失業率、鉱工業生産
21:30 ラガルドECB総裁講演
21:30 ダラス連銀総裁講演
23:00 (アトランタ連銀総裁講演)
24:00 米国11月ミシガン大消費者信頼感速報値 ☆
24:20 ドイツ連銀総裁講演
11月12日(日)
**:** APECサミット(〜18日)
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
10月30日(月)
週明けのドル円は東京市場では上値は重たいものの動かず、欧州市場序盤に米金利低下をきっかけに一時的な押しを挟んだもののNY市場前場までは方向感が定まらない流れとなっていました。NY市場に入り日経が日銀会合でYCCの1%上限に対して運用を柔軟化するとのニュースを流し、それをきっかけに日経平均先物の下げと円高の動きとなりました。一時ドル円は148.80レベルとニュース前から1円ほどの円急騰となり、引けにかけては若干戻しました。
10月31日(火)
ドル円は大幅に円安が進む一日となりました。日銀会合の結果発表は前夜の日経リーク通りの結果となり、まずここで最初の円売りが強まることとなりました。噂で円買い、事実で円売りという動きだったと思いますが、その後も円売りの流れは変わらず介入結果待ち。予想に反して介入金額はゼロであったことから、150円が警戒水準では無いとの思惑で更に円売りの動きが強まり、引け間際に151.72レベルまで買い上げられ高値引けとなりました。
11月1日(水)
ドル円は前日の日銀会合でYCC再修正、財務省の介入額ゼロの発表を受け大幅に円安が進みましたが、月初は朝から神田財務官が介入はスタンバイと昨年同様の発言をしたことから調整の円買いの一日となりました。また注目のFOMCは現状維持、パウエルFRB議長会見もややハト派的と受け取られたことも重なって150.66レベルまで下押し後、やや戻して引けました。
11月2日(木)
ドル円は翌日が東京休場、米国雇用統計の発表ということもあって、大きな動きは見られませんでした。NY朝方に発表された経済指標が予想よりも弱く、FOMC後の米金利低下の動きが続いたこともあり一時150円の大台割れを見ましたが、引けにかけては150円台半ばへと買い戻されました。
11月3日(金)
東京市場が祝日となったこと、米国雇用統計を控えていることからNY市場まではややドルの上値が重たい程度で動意薄の流れが続きました。注目の雇用統計は予想よりも弱かったことからユーロドルを中心としたドル売り。ドル円も150円の大台を大きく割り込み、149.19レベルまで下落後に若干戻して引けました。
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