トルコリラ円見通し 10週連続のドル高リラ安に加えドル円も急落で下落基調続く(23/11/6)

トルコリラ円の11月3日は概ね5.31円から5.24円の取引レンジ、4日早朝の終値は5.26円で前日終値の5.30円から0.04円の円高リラ安となった。

トルコリラ円見通し 10週連続のドル高リラ安に加えドル円も急落で下落基調続く(23/11/6)

10週連続のドル高リラ安に加えドル円も急落で下落基調続く

〇トルコ円、ドル円上昇に合わせ5.36まで反騰、ドル円下落で11/4早朝5.24、11/6朝5.21に下落
〇ドル円下落感の強まりを受け、円高とリラ安の両面からの圧力がかかり続けやすい状況
〇対ドル、10週連続のリラ安、11/3は史上最安値更新
〇10/26にトルコ中銀が5%の追加利上げするも市場のリラ買い反応は見られず
〇市場は暫く追加利上げ催促によるリラ売り継続か
〇11/2 トルコ中銀、インフレ予想を引き上げ、10月CPIは前年同月比61.36%
〇5.33を下回るうちは一段安警戒とし、5.28割れからは5.25前後への下落を想定
〇5.33超えからは5.35前後への上昇を想定

【概況】

トルコリラ円の11月3日は概ね5.31円から5.24円の取引レンジ、4日早朝の終値は5.26円で前日終値の5.30円から0.04円の円高リラ安となった。日足は11月1日から3日連続の陰線で下落、週間では10月27日終値5.31円から0.05円の円高リラ安だった。
ドル円は10月31日の日銀金融政策決定会合での金融緩和政策継続により10月30日深夜安値148.80円からの反騰を勢い付かせて11月1日未明高値151.71円へ急伸したが、11月1日朝の神田財務官による市場介入を匂わす円安けん制発言や11月2日未明の米FOMCがハト派姿勢だったこと、11月3日の米雇用統計が冴えなかったことによる米長期債利回り低下とドル安により11月3日夜には149.20円まで反落した。
トルコリラ円はドル円の上昇に合わせて11月1日未明に5.36円まで反騰したが、ドル円が下落に転じたのを追いかけて11月4日早朝には5.24円まで下落した。

ドル円は10月30日深夜安値割れには至らずにいるものの、トルコリラ円はドル/トルコリラにおける史上最安値更新により円高とリラ安の両面からおされたために、10月31日午前の一時的な飛び値で付けた安値5.23円を除いた連続的な動きでは10月30日深夜安値5.26円を割り込んで一段安となった。11月6日朝には5.21円まで下げている。
ドル/トルコリラはすでに8月24日安値を割り込んで9月後半から史上最安値の更新を繰り返しており、トルコリラ円は円安効果により7月18日に付けた史上最安値5.08円割れには至らずにいるが、ドル円の上昇が頭打ちとなり7月14日を起点とした上昇一巡による下落感が強まりつつあるため、トルコリラ円には円高とリラ安の両面からの圧力がかかり続けやすい状況と思われる。

【対ドルでは10週連続のリラ安、11月3日は史上最安値更新】

ドル/トルコリラの11月3日は概ね28.58リラから28.09リラの取引レンジ、4日早朝の終値は28.38リラで前日終値の28.32リラからは0.06リラのドル高リラ安だった。
週間では10月27日終値28.16リラから0.22リラのドル高リラ安であり、8月最終週から10週連続のドル高リラ安となった。
11月3日は安値で28.58リラを付けて10月31日安値28.47リラを超えて取引時間中の史上最安値を更新、日足の終値ベースでは10月23日から11月3日まで10営業日連続で史上最安値を更新した。
10月26日にトルコ中銀が5.0%の追加利上げで政策金利を35.0%としたものの、60%を超えるインフレ率による実質マイナス金利状態の解消には程遠いとして市場のリラ買い反応は見られず、11月に入ってからも対ドルでの史上最安値更新が止まらない。

【トルコ中銀、インフレ予想を引き上げ、10月CPIは61.36%】

トルコ中銀は11月2日に四半期に一度のインフレ予測報告書を公表した。それによるとCPI前年比の2023年末予想は65.0%として8月時点の58.0%から上方修正し、2024年末は36.0%として8月時点の33.0%から上方修正した。
エルカン総裁は「高くて不安定なインフレを抑制するのは長く困難なプロセスだ。ディスインフレを確実にするため、断固とした態度で、利用可能なあらゆる手段を活用し続ける」と述べた。また「インフレ率は2024年5月に70〜75%程度でピークに達した後にはディスインフレが始まる」、「(ディスインフレが)目に見えて改善するまで金融引き締めは続く」と述べた。また「インフレの高進は同時に起こった複数の大きなショックによるものであり、それらの影響はほぼ終了した」として中銀のインフレ率中期目標を5%で据え置いた。

11月3日にトルコ統計局が発表した10月のCPI(消費者物価指数)前月比3.43%となり9月の4.75%から伸びが鈍化して市場予想の3.93%を若干下回ったが、前年同月比も61.36%となり9月の61.53%からわずかに低下して市場予想の62.12%を下回った。しかしコアCPIは前月比3.7%(9月は5.3%)と鈍化したものの前年比は69.8%となり9月の68.9%からさらに上昇した。昨年10月に70.4%まで上昇してから今年4月に45.5%まで低下したが、再上昇でピークを超える可能性も拭えない。

前月比では衣料等が13.73%、住宅が7.54%、レストラン等が3.51%でCPI平均を上回り、食品・飲料は3.20%で平均を若干下回った。前年同月比ではレストラン等が94.12%、健康関連が81.30%、教育が80.83%。食品・飲料が71.99%、運賃が71.99%、アルコール・タバコが61.97%で平均を上回った。
統計局の発表に対してトルコの独立系調査団体「ENAグループ」が発表した10月CPI上昇率は前月比5.09%、前年同月比は126.18%とされ、統計局公表値よりも実際のインフレ率は大幅に高い状況が続いているとしている。
ただ、PPI(生産者物価指数)は前月比1.94%(9月は3.4%)、前年同月比は39.39%(9月は47.44%)となりやや落ち着きがみられる。
トルコ中銀の政策金利は35.0%、CPI全体の上昇率が61.36%なら実質金利はマイナス26.36%となる。来年にCPIが低下するとして、実質金利のマイナスを解消するためには年末にかけて5%ずつの追加利上げで政策金利を45%へ引き上げ、インフレが実際に低下するのを見定めることが必要だろう。市場は暫く追加利上げ催促によるリラ売りを続けるのではないかと思われる。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

中勢としては8月24日高値を起点とした下落を継続中であり、昨年8月2日、今年1月16日と7月18日に付けてきた5か月から6か月周期の安値形成期となる12月後半から年明けにかけては下落基調が続きやすいとみる。
短期的にはドル高リラ安の継続による売り圧力と、ドル円の修正安が深まる場合に下げ足が速まる可能性があり、7月18日の史上最安値5.08円を試す流れと考える。

概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、10月31日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして31日午後から11月2日午後にかけての間への上昇を想定していたが、11月2日午前時点では5.30円を割り込んだために11月1日未明高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして3日午前から7日午前にかけての間への下落を想定した。
11月6日午前へ続落しているのでまだ安値試しを続けて6日の日中から8日未明にかけての間への上昇を想定する。ただし、その場合も戻りが短命の可能性があると注意し、戻り幅の半値以上を削るところからは弱気サイクル入りと仮定し、11月6日午前安値割れからはて9日午前から13日朝にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では11月2日午前への下落により遅行スパンが悪化してその後の続落で先行スパンからも転落した。11月6日午前時点では両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とするが、遅行スパン好転からはいったん戻しに入るとみて高値試し優先とし、先行スパンの下限から上限を試す上昇を想定する。

60分足の相対力指数は11月3日夜の下落時時に20ポイント台前半へ低下してから戻しているが、40ポイント台へ乗せきれずにいる。50ポイント以下での推移中は一段安余地ありとするが、相場が安値を更新する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられる場合は反騰注意とし、50ポイント超えからは反騰入りとして60ポイント台中盤への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.27円を下値支持線、5.33円を上値抵抗線とする。
(2)5.33円を下回るうちは一段安警戒とし、5.28円割れからは5.25円前後への下落を想定する。5.25円以下は反騰注意とするが、5.30円以下での推移なら3日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.33円超えからは5.35円前後への上昇を想定するが、ドル円の急伸が発生しないうちは5.35円前後で戻り売りにつかまりやすいとみる。

【当面の主な予定】

未 定  10月 トルコ貿易収支速報 (9月 -50.1億ドル)
11月7日
 23:30 10月 財務省現金残増減 (9月 -690.53億トルコリラ)
11月9日
 20:30 週次 外貨準備高 11月3日時点 グロス (10月27日時点 824.1億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 11月3日時点 ネット (10月27日時点 251.5億ドル)
11月10日
 16:00 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 -0.8%)
 16:00 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 3.1%)
 16:00 9月 失業率 (8月 9.2%)
11月13日
 16:00 9月 経常収支 (8月 6.19億ドル)
 16:00 9月 小売売上高 前月比 (8月 -4.7%)
 16:00 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 17.2%)


注:ポイント要約は編集部

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