『リラ売り基調に歯止めかからず。対ドル相場は史上最安値を更新』
〇今週のトルコ円、ドル円の急上昇に週央5.38まで上昇後、ドル円下落等で5.25まで値を崩す
〇トルコ中銀インフレ見通しを上方修正、タカ派姿勢示すも市場への影響は限定的
〇テクニカルの地合い弱く、ファンダメンタルズもトルコリラ円相場の下落を連想させる材料揃う
〇トルコリラ円相場の続落を来週のメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):5.10ー5.40
今週のレビュー(10/30−11/3)
今週のトルコリラ円相場(TRYJPY)は、週初5.31円で寄り付いた後、(1)中東情勢緊迫化に端を発したトルコ・欧米諸国間の関係性悪化懸念(エルドアン大統領は「イスラエルは戦争犯罪を行っているが、西側諸国の指導者はイスラエルに停戦を呼びかけることさえできていない」「イスラエルは戦争犯罪国家」と発言)や、(2)トルコ9月貿易収支(結果50.1億ドル赤字、予想50.0億ドル赤字)の赤字幅拡大が重石となり、翌10/31にかけて、週間安値5.24円まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(3)ドル円相場の急上昇(日銀金融政策決定会合の無難通過や植田日銀総裁による慎重な見解発表を受けてドル円が149円台前半から151円台後半へと急上昇→トルコリラ円連れ高)が支援材料となり、週央にかけて、週間高値5.38円まで上昇しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(4)ドル円相場の急反落(米FOMCのハト派的な結果→米長期金利の急低下→ドル円急反落→トルコリラ円連れ安)や、(5)トルコ10月消費者物価指数(結果+61.36%、予想+62.50%)および、同コア指数(結果+69.70%。予想+70.90%)の市場予想を下回る結果が重石となり、本稿執筆時点(日本時間11/4午前0時15分現在)では、5.25円前後まで値を崩す動きとなっております(※対ドル相場は週を通して史上最安値を更新)。
尚、今週はトルコ中銀エルカン総裁より今年と来年のインフレ見通しの上方修正(今年のインフレ見通しを前回までの58%から65%へ上方修正、来年のインフレ見通しを前回までの33%から36%へ上方修正)や、「ディスインフレを確実にするため、断固とした態度で、利用可能なあらゆる手段を活用し続ける」とのタカ派的な発言が見られましたが、市場の反応は限定的となりました。
来週の見通し(11/6−11/10)
トルコリラの対円相場(TRYJPY)は冴えない動きが続いています。日足ローソク足が主要テクニカルポイントの下側に位置していることや、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「弱気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の下落トレンド」が成立していること、対ドル相場が年初来安値を連日で更新し続けていること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めえて弱い」と判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)中東情勢緊迫化に端を発したトルコ・欧米諸国間の関係性悪化(ハマス・パレスチナを支持するトルコvsイスラエルを支持する欧米諸国の構図)や、(2)トルコ経済の先行き不透明感(今週発表されたトルコ10月製造業PMIは前回記録した49.6から48.4へ一段と悪化。好不況の分かれ目となる50を4カ月連続で下回る状態)、(3)トルコ株の冴えない結果(トルコ政府・トルコ中銀による正常化路線への転換を好感して流入していた海外マネーの急速な逆流リスク)、(4)トルコリラの実質金利のマイナス継続(トルコ中銀は大幅利上げを継続するも、実質金利のマイナス幅解消は依然程遠い)など、トルコリラ円相場の下落を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の続落を来週のメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(TRYJPY):5.10ー5.40
注:ポイント要約は編集部
トルコリラ円日足
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