ドル円 ファンダは押し目買い、テクニカルは戻り売り・・(週報7月第2週)

先週のドル円は、米国雇用統計発表を前に木曜には株安の動きとともに一時143円台半ばまで水準を下げましたが、強い米国雇用統計により144円台へ戻して金曜を迎えました。

ドル円 ファンダは押し目買い、テクニカルは戻り売り・・(週報7月第2週)

ファンダは押し目買い、テクニカルは戻り売り・・

〇先週のドル円、水曜までは144円台での高値もみあい、米雇用統計発表前は一時143円台半ばまで下げる
〇米雇用統計は予想比下振れ、米金利の低下に引けにかけて142円の大台目前の水準まで下げる動き
〇今週は7/12米CPI発表に注目、CPIはかなり低下予想だが、コアは高止まりの予想
〇7月FOMCにおける0.25%利上げ織り込み度は90%以上の状態、下がったところで買いの展開続くか
〇ファンダメンタルは押し目買い、テクニカルには戻り売りと相反し、やや悩ましい状況
〇今週は141.50レベルをサポートに143.50レベルをレジスタンスとする流れを見る

今週の週間見通し

先週のドル円は、水曜までは144円台での高値もみあいを続けていましたが、前週に145円トライをしたものの145円台では警戒感も根強く滞空時間が短かったことから、米国雇用統計発表を前に木曜には株安の動きとともに一時143円台半ばまで水準を下げましたが、強いADP雇用統計により144円台へ戻して金曜を迎えました。

ポジションがドル円だけでなくクロス円でも円売りが膨らんでいたことから指標を前にポジション調整も見られ、欧州市場序盤には一時143円を割り込んでの雇用統計待ちとなりました。事前に発表されたADP全国雇用者数は上振れしていましたが、ADPと雇用統計のNFP(非農業部門雇用者数)は、逆に振れることのほうが6割程度と多いことから、今回はひょっとしたらNFPは下振れするのではという見方、またジブリのアニメが放映されるということも荒れ模様を予想させる状況となっていました。

結果はADPの逆指標ぶりは健在ということで予想よりも弱い数字にドル売りが先行しましたが、すぐに買い戻しが入り売られる前の水準へともどしました。しかし、その後は米金利低下の動きも加わって改めてドル売りの動きが強まると引けにかけては142円の大台目前の水準まで下げる動きとなりました。この間の動きを見ていると短期筋のドル買いポジションが投げさせられた動きとなっていましたが、週明け早朝市場ではドル買いが先行しています。

これは日米金利差が7月FOMCでも拡大することは確実視されていて、基本的に円は売りという見方が根強いためと言えます。また先々週の高値からの調整で142円台半ばはいったん買い場という見方も多かったため、週明けを待ってから新規の買いに動いたという印象です。今週は12日に米国CPIの発表がありますので、それ以外の注目度は低くなりますが、今回のCPIは3.1%(前回4.0%)とかなり低下してくる予想となっているものの、コアCPIは5.0%(前回5.3%)と高止まり予想です。

物の価格は下がっているものの家賃やサービス価格が高止まりしていることから、なかなか下がってこない状態です。コアCPIも一段の低下を示さないと金利高止まりも続くと見られ、7月FOMCにおける0.25%利上げ織り込み度は90%以上の状態が続いていますので、下がったところでは買いという展開が続くと見られます。

テクニカルには日足チャートをご覧ください。

テクニカルには金曜の下げで2か月続いた上昇チャンネルを下抜けしたことで、当面はドル安・円高トレンドに転じた可能性を考える必要が出てきました。年初来安値と高値との23.6%押しが140.85レベルとまだ現在の水準からかなり低い水準にあることも一段のドル安を探る展開となりそうなチャートに見えてきます。この23.6%押しの水準が5月高値と一致していることも下値のターゲットとして妥当に思えます。

ファンダメンタルは押し目買い、テクニカルには戻り売りと相反する材料となっているため、かなり悩ましいのですが、この下値のターゲットはCPI後に米金利が低下すれば一時的に試す可能性はあるかもしれませんが、そうでないとやや遠いと思っています。

押し目買いと戻り売り、戻り売りについては雇用統計後の戻り高値近辺を考えておけば良さそうですが、押し目買いについては今週のところは141円台半ば程度を考えておけばよいのではないかと見ています。今週は141.50レベルをサポートに143.50レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

7月10日(月)
08:50 本邦5月貿易収支(国際収支)
10:30 中国6月CPI・PPI ☆
14:00 日銀地域経済報告
16:00 トルコ5月失業率
23:00 米国5月卸売売上高
23:00 バーFRB副議長講演 ☆
24:00 (クリーブランド連銀総裁、サンフランシスコ連銀総裁講演)
25:00 (アトランタ連銀総裁講演)
29:00 英中銀総裁講演 ☆

7月11日(火)
08:01 英国6月小売売上高
09:30 豪州7月消費者信頼感
10:30 豪州6月企業景況感
15:00 ドイツ6月CPI
16:00 トルコ5月経常収支
18:00 ドイツ7月ZEW景況感 ☆
18:00 ユーロ圏7月ZEW景況感 ☆
**:** NATOサミット(〜12日)

7月12日(水)
11:00 NZ中銀政策金利発表 ☆
12:10 豪中銀総裁講演 ☆
15:00 英中銀金融安定報告書公表 ☆
16:00 トルコ5月鉱工業生産
17:00 英中銀総裁会見 ☆
21:30 米国6月CPI ☆
21:30 (リッチモンド連銀総裁講演)
22:45 ミネアポリス連銀総裁講演 ☆
22:45 レーンECB理事講演 ☆
23:00 カナダ中銀政策金利発表 ☆                                          
23:30 週間原油在庫統計
26:00 (アトランタ連銀総裁講演)
27:00 ベージュブック ☆
29:00 (クリーブランド連銀総裁講演)

7月13日(木)
08:01 英国6月住宅価格
**:** 中国6月貿易収支
15:00 英国5月鉱工業生産、貿易収支
15:45 フランス6月CPI
18:00 ユーロ圏5月鉱工業生産
21:30 米国6月PPI ☆
21:30 米国新規失業保険申請数

7月14日(金)
18:00 ユーロ圏5月貿易収支
21:30 米国6月輸入物価
23:00 米国7月ミシガン大消費者信頼感速報値 ☆
**:** G20(〜18日)

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時−NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

7月3日(月)
週明けのドル円は上下しながらもNY市場までは円安が続き一時144.91レベルの高値をつけました。しかし145円を試しきれず、米国休日前で参加者も少ない中、弱い経済指標に反応して143.98レベルまで下落。ただ絶対的な金利差があり、引けにかけては144円台半ばを回復しました。

7月4日(火)
米国が休日ということもあって全般に取引は低調でした。ドル円は前週金曜に145円台で目先の高値をつけたことや当局への警戒もあってじり安後にやや戻しての引けとなりましたが終日のレンジは50銭に留まりました。

7月5日(水)
ドル円は144円台半ばを中心として多少の上下は見られたものの方向感がなく144円台後半では売り、前半では買いと本日の雇用関連の数字と明日の雇用統計を前に様子見が続きました。

7月6日(木)
ドル円は東京市場では株安の動きとともに円買いが続き欧州市場序盤には143.55レベルの安値をつけました。その後NY市場まで上下はあったものの上値が重たい展開でしたが、予想よりも強いADPとISMに反応し144.65レベルと東京朝方の高値に並んだものの抜けられず反落。引けは144円前後でのもみあいで引けました。

7月7日(金)
ドル円は東京市場では米国雇用統計を前に改めて調整の円買いが先行しました。クロス円でも円買いが先行したこともあり、欧州市場序盤には143円割れ。雇用統計はNFPが予想よりも弱く初動はドル売りとなったものの、すぐに元の水準へと戻しましたが、その後米金利が低下する動きとともにドル売りが強まり142.07レベルまで下押しして安値引けとなりました。

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