基調はドル高・円安、ただ実弾介入リスクも (週報6月第3週)

先週のドル/円相場はドルが一段高。途中、上値トライが失敗したとみられる局面も観測されたが、週末にかけて再上昇しドルは高値引け。

基調はドル高・円安、ただ実弾介入リスクも (週報6月第3週)

基調はドル高・円安、ただ実弾介入リスクも

〇先週のドル円、6/15に前週高値を上抜けるとそのまま年初来高値140.93も超え、一気に141円台へ
〇その後NYタイムには140円割れまで急反落と荒れたが6/16に再上昇へと転じ、週間高値の141.91を示現
〇米FOMCは金利据え置き、FRBの大多数は今年2回の追加利上げを見込み、ドル買い・円売り要因に
〇ECB、予想通り0.25%の利上げを実施、ラガルド総裁は次回会合も利上げを示唆
〇16日の日銀会合、大規模金融緩和維持を発表、物価安定目標に関する総裁発言も円売りの支援要因に
〇今週は5月のシカゴ連銀全米活動指数や6月の製造業PMI、パウエルFRB議長の議会証言に注目
〇基本的にはドルの続伸に要注意だが、政府・財務省による実弾介入で一気に3-4円の下押しも考えられる
〇ドル高・円安については、先週末高値の141.91の攻防にまずは注目
〇ドル安・円高方向は、先週ドルが年初来高値を更新するなか140円レベルが最初のサポートか
〇今週のドル円予想レンジは139.00-143.30

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円相場はドルが一段高。途中、上値トライが失敗したとみられる局面も観測されたが、週末にかけて再上昇しドルは高値引け。

前週末、ウクライナ大統領がビデオ演説で「ロシアへの反転攻勢すでに開始した」と明言したことが話題に。一方、11日に北朝鮮が当初予告した「衛星発射の期間」が終了を迎えたものの、日本の防衛省は破壊措置命令の延長を決定したと発表している。
そうした状況下、ドル/円は139.35円レベルで寄り付いたのち、しばらく冴えない。前週高値140.45円をなかなか超えられない展開が続いていた。しかし、15日に上抜けるとそのまま年初来高値140.93円も超え、一気に141円台へ。ただ、同日のNYタイムには140円割れまで1円以上の急反落をたどるなど、なかなかの荒れ模様。そののち週末16日にドルは再上昇へと転じると前述下げ幅の全戻しを超え、週間高値の141.91円を示現。目先安値から2円以上の上昇となった。週末NYもそのままドルの最高値圏で推移し越週している。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「日米欧の金融政策発表」について。
まず米国は、13日に発表された5月の消費者物価指数が2年2ヵ月ぶりの低い伸び。事前予想を下回る内容で、「弱気派」の台頭を後押し。ドルの上値も抑えるなか、東京時間15日未明に米FOMCの結果が発表され、大方の予想通り「金利は据え置き」となった。FOMCは昨年3月以降、10回連続で金融引き締めを継続してきたものの、ようやく金利の引き締めが一服した格好になる。しかし、同時に声明で「当局者の大多数は今年2回の追加利上げを見込んでいる」としたうえ、そののちパウエル議長が会見で「今年の利下げは適切である可能性はまったくない」と発言したことなど、内容的にはむしろ強気との見方が優勢で為替市場ではドル買い・円売り要因に。

それに対して欧州は、ECBが15日の理事会で予想通りとなる「0.25%の利上げ」を実施。8会合連続の利上げになる。また、ラガルド総裁は次回会合でも利上げを示唆するコメントを発しており、金利差的にはドルや円よりも有利な状況に置かれている感を否めない。
掉尾を飾る日本は、週末16日に日銀が会合を終え「大規模金融緩和維持」を発表した。なお、その後の会見で植田総裁から「2%物価安定目標の達成にはなお時間かかる」といった趣旨の発言も聞かれており、円売りの支援要因になっていたようだ。

<< 今週の見通し >>

先週のドル/円相場は141円半ばの高値を示現後、139.85円まで一時下落。その段階で上値トライは完全に失敗したと思ったのだが、そののちドルは逆行高の展開に。141.91円まで値を上げ、そのまま週末NYも高値引けとなっている。改めて指摘するまでもなく、日本当局の円安けん制なども予想されるだけに上値も重そうだが、リスクそのものはドル高方向にバイアスか。昨年11月21日の142.25円や高値151.94円を起点とした大きな下げ幅のフィボナッチ61.8%戻しにあたる142円半ばを目指す展開も。

前述したように、注目されていた日米欧の金融政策発表が先週出揃った。米国は「利上げ見送り」も「今後の追加利上げ」が示唆されるなか、欧州は「0.25%の利上げ」が実施されたうえ「追加利上げ」も期待されている。それに対し、日本は「利上げ見送り」だけでなく「しばらく利上げは予想しにくい」といった内容だ。これからすると、やはり円を積極的には買いにくいと言わざるを得ないところだが、一方で日本の通貨当局からの対応も気に掛かる。先週も聞かれていた単なる「円安けん制発言」だけにとどまらず、場合によっては「実弾介入」に踏み切る可能性も否定できない。波乱含みの一週間になると予測される。

テクニカルに見た場合、ドル/円相場は先週末に掛け142円近くまで上伸し、そのまま高値引け。以前から「141円台に強い抵抗はうかがえない」とレポートしてきたが、実勢相場は一気に142円台乗せをうかがうような展開だ。今週も基本的にはドルの続伸に要注意。先で記した142円半ばなどを抜けると、ドルは軽い青天井になりかねず、その際には145円超えまで強い抵抗は再び見当たらない。
しかしその反面、政府・財務省による実弾介入が観測されれば一気に3-4円の下押しも考えられる。6月安値138.44円程度まで下落してもまったく不思議はない。

そうしたなか今週も、5月のシカゴ連銀全米活動指数や6月の製造業PMIといった米経済指標の発表が相次ぐうえ、米通貨当局者の講演なども数多い。なかでももっとも注視されているのはパウエルFRB議長の議会証言か。また、李強中国首相の独仏訪問など注目の政治ファクターも多く、それらも一応要注意だ。

そんな今週のドル/円予想レンジは、139.00-143.30円。ドル高・円安については、先週末高値の141.91の攻防にまずは注目。上抜ければ介入警戒感も取り沙汰されるなか142.25円や142円半ばなどが意識されそうだ。
対してドル安・円高方向は、先週ドルが年初来高値を更新するなか「しっかり」と下回っていない140円レベルが最初のサポートか。ただし、実弾介入が観測されれば、その限りではない。137-138円までの下落も。

基調はドル高・円安、ただ実弾介入リスクも

ドル円日足

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