金融政策の違いで円安再開も警戒感あり
〇先週のドル円、日米欧主要三極の金融政策の方向性の違いが円安を加速
〇FOMCは利上げ見送りだがタカ派な見通し、ECBは7月以降も利上げ継続予測、日銀は大規模緩和維持
〇当面はドル円、ユーロ円とも円安地合いをベースに考えながら、その時々の材料で細かく上下する模様
〇前回財務省・金融庁・日銀会談開催の140円後半を通過、円安一段加速の場合、当局筋牽制の可能性高い
〇経済指標や要人発言でドル高に動いた場合、昨年11月の戻り高値142.25を一度は試しに行くか
〇今週は140.20レベルをサポートに、142.45レベルをレジスタンスとする流れを見る
今週の週間見通し
先週のドル円は、金融政策ウィークで週前半は様子見ながらもドル円は底堅い動きとなっていました。FOMCでは予想通り現状維持の利上げ見送りとはなったものの金利見通しでは2023年末の金利水準が現在よりも0.5%高い5.625%(5.5〜5.75%)が中央値となり、前回よりもタカ派な見通しが示されました。またECBは予想通り0.25%利上げ、日銀は現状維持で緩和継続と、主要三極の金融政策の方向性の違いが明確に示されました。
FRBに関しては市場参加者のコンセンサスは7月に0.25%の利上げ後は年内は現状維持とFRBの見通しよりも0.25%低いのですが、少なくとも0.25%の利上げは確実視されています。またECBは7月以降も利上げが続き、FRB同様にあと1〜2回の利上げが予想されています。そこに日銀だけは大規模緩和維持と明らかに欧米の中銀とは温度差があり、この違いが結局円安加速の動きにつながりました。
今週も経済指標や要人発言は続きますが、金融政策イベント直後ということもあって、今すぐ方向性が出てくるものでは無いため、当面はドル円、ユーロ円とも円安地合いをベースに考えながら、その時々の材料で細かく上下するという見方でよいでしょう。そして最も気になるのは、前回財務省・金融庁・日銀の三者会談が行われた5月30日の水準(140円台後半)を上抜けしてきたという点です。三者会談が開催された理由が当時の円安スピードにあった点は間違いないところですから、その時の水準を超えここからさらに加速するようであれば、当局筋から何らかの発言が出てくる可能性は高いと言えます。
前回の三者会談では特定の水準を意識していないとは言っていたものの、昨年介入後の11月の戻り高値が142.25レベルであったこと、同水準よりも上では目立ったレジスタンスが無いことを考えると、当局も142円台前半は注視している水準ではないかと考えられます。金曜から本日にかけても142円台に乗せられず上値が重たい展開となっているのも、市場参加者が142円台を警戒している表れではないかと考えられます。
しかし、そうしたクリティカルな水準というのは誰かが試しに行くものです。今週発表される経済指標や要人発言でドル高に動いた場合、142.25レベルを一度は試しに行く可能性は高く、いったん試すと次はどこで口先介入などの当局からの牽制が出てくるのかを試しに行くという怖いもの見たさの相場になっていきます。今週はそうした動きが出てくる一方で、既に円売りポジションもかなり増えている(シカゴ通貨先物の円売りポジションは10万枚を超え、昨年秋と同水準)ことから、利食いが出る時は下げも速いであろうという構えはしていたほうが良さそうです。
テクニカルには日足チャートを見てみましょう。
先週示したペナント(短期三角もちあい)は教科書通り上抜けましたので、現在はピンクのサポートラインとも重なるペナントを上抜けた水準140円台前半がサポートとなってきます。またレジスタンスは先ほど示した142円台前半、そして昨年高値とその後の安値との61.8%戻し142.48がターゲット兼警戒水準と言えます。
今週は140.20レベルをサポートに、142.45レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
6月19日(月)
**:** 米国市場休場 ☆
20:00 レーンECB理事講演 ☆
20:40 シュナーベルECB理事講演
22:00 フランス中銀総裁講演
23:00 米国6月NAHB住宅指数 ☆
27:00 デギンドスECB副総裁講演 ☆
6月20日(火)
10:30 豪中銀理事会(6月)議事要旨公表 ☆
15:00 ドイツ5月PPI ☆
17:00 フィンランド中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏4月建設支出
19:30 (セントルイス連銀総裁講演)
21:30 米国5月住宅着工・建設許可 ☆
24:45 NY連銀総裁講演 ☆
6月21日(水)
08:50 日銀会合(4月)議事要旨公表
15:00 英国5月CPI ☆
17:00 南ア5月CPI
22:45 シュナーベルECB理事・ドイツ連銀総裁講演 ☆
23:00 パウエルFRB議長議会証言(下院)☆
25:25 シカゴ連銀総裁講演 ☆
6月22日(木)
**:** 香港・中国(〜23日)市場休場
07:45 NZ5月貿易収支
15:45 フランス6月企業景況感
16:30 スイス中銀政策金利発表 ☆
20:00 英中銀MPC結果発表 ☆
20:00 トルコ中銀政策金利発表
21:30 米国新規失業保険申請数
23:00 ユーロ圏6月消費者信頼感速報値 ☆
23:00 パウエルFRB議長議会証言(上院)☆
23:00 (クリーブランド連銀総裁講演)
23:00 米国5月中古住宅販売 ☆
23:00 米国5月景気先行指数
24:00 週間原油在庫統計
29:30 (リッチモンド連銀総裁講演)
6月23日(金)
08:01 英国6月消費者信頼感
08:30 本邦5月CPI ☆
15:00 英国5月小売売上高
16:00 トルコ5月貿易収支
16:15 フランス6月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
16:30 ドイツ6月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:00 ユーロ圏6月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:30 英国6月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
19:00 スペイン中銀総裁講演
22:45 米国6月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
26:40 (クリーブランド連銀総裁講演)
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時−NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
6月12日(月)
週明けのドル円は東京市場では小動き、欧州市場序盤にユーロドルの上昇に引っ張られてドル売りとなったもののNY市場前場には下げる前の水準へと戻し、イベント前の様子見姿勢が強まりました。1日のレンジも70銭と最近のドル円にしては鈍い動きでした。
6月13日(火)
ドル円は米国CPIまでは様子見姿勢が強まり動意薄の展開が続きました。CPIはほぼ予想通りの数字が出たことで、6月FOMCでの利上げは無いだろうとの見方から、長期金利が低下、一時139.01レベルの安値をつけました。しかし直後から長期金利が急反転、3.845%まで上昇する動きとともにドル円も140.31レベルまで上昇し高値圏で引けました。
6月14日(水)
ドル円はFOMCを控えて若干上値が重たい動きがNY市場まで続きました。NY市場に入り予想より弱いPPIに反応して米金利低下、ドル売りが先行し、FOMC前には139.28レベルまで水準を切り下げました。FOMCは予定通り現状維持となったものの2023年末の金利見通しが引き上げられたことで、7月だけでなく年後半にも追加利上げの可能性が示されたことから金利上昇、ドル買いとなり140.17レベルまで上昇し、高値圏での引けとなりました。
6月15日(木)
ドル円はFOMC後のドル高の流れが続き、週間高値を抜けたあたりから仕掛けの買いが加わり、欧州市場序盤には一時141.50レベルと年初来高値を更新する動きとなりました。しかし、ECB理事会を控えていることや三者会談前の水準を超えたことへの警戒感もあり上値が重くなってきたところで、NY市場では米金利が低下する動きとともにほぼ行って来いの動きとなり140.15レベルまで下押し後に安値圏での引けとなりました。
6月16日(金)
ドル円は前日の下げの動きが仲値過ぎには一段落し日銀会合待ちとなりました。結果は予想通り現状維持で声明でも緩和継続と何もサプライズは無かったものの円売り安心感が広がり、総裁会見後には141.40レベルと前日高値に迫りました。その後いったん140円台後半に押しを挟んだものの、円売りの動きは収まらず、NY引け間際には141.91レベルまで上伸、高値引けとなりました。
ディスクレーマー
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