トルコ中銀利上げ観測でリラ暴落一服、円安を見ながらの推移
〇トルコ円、6/17早朝のドル円急伸で6/16からの反騰を継続し6.02まで戻り高値を切り上げる
〇対ドル、23リラ台中盤で暴落一服による下げ渋り型の持ち合いを形成
〇政策転換への期待感や6/22中銀利上げの可能性が取り沙汰されトルコ円、対ドルともに暴落商状一服
〇現行の政策金利8.5%からの利上げ予想の中央値は20%、予想レンジは12.5%から30%と幅広い
〇5.95を上回るうちは上昇余地あり、6.05超えからは6.07前後への上昇を想定
〇5.97割れからは5.95試しとし、5.95割れからは下落期入りとみて5.90前後への下落を想定
【概況】
トルコリラ円の6月16日は概ね6.02円から5.90円の取引レンジ、17日早朝の終値は6.00円で前日終値の5.93円からは0.07円の円安リラ高だった。
5月28日のトルコ大統領選挙決選投票におけるエルドアン大統領再選からリラ売りが進行し、6月7日には凡そ7%安の暴落で2021年12月20日安値6.17円を割り込んで史上最安値更新に入り、13日早朝には最安値を5.83円まで切り下げたが、トルコ新内閣発足による政策転換への期待感や中銀利上げの可能性が取り沙汰される中でドル/トルコリラとともに暴落商状が一服している。
ドル円は6月14日の米PPI鈍化によるドル売りで139.28円へ下落したところから15日未明のFOMCを通過してのドル買いで140円台を回復して15日夕刻には141.50円へ上昇し、いったんは当面のドル買い材料消化として16日午前には139.81円まで反落したが、16日に日銀が金融緩和政策の継続を決定したことから急伸に入り、米地区連銀総裁らの追加利上げ支持発言などによる米長期債利回り上昇を見て17日早朝には141.91円まで高値を伸ばして年初来高値を更新した。
トルコリラ円はリラ暴落一服中にドル円が急伸したために16日早朝から反騰を継続して17日早朝には6.02円まで戻り高値を切り上げた。週間では6月9日終値5.95円から0.05円の円安リラ高となった。
【対ドルでは暴落商状一服するも23リラ台中盤の最安値圏で推移】
ドル/トルコリラの6月16日は概ね23.68リラから23.35リラの取引レンジ、17日早朝の終値は23.62リラで前日終値の23.66リラからは0.04リラのドル安リラ高だった。
エルドアン大統領の再選をきっかけとしたリラ安が勢いを増して6月7日には凡そ8%安の暴落商状となり23.31リラへ取引時間中の史上最安値を更新し、8日から13日まで連日の史上最安値更新で13日には23.77リラ(ベンダーによっては23.92リラ)へ安値を切り下げた。
6月14日からは取引時間中の最安値更新を回避しておりリラの暴落商状に一服感が見られるものの、15日は終値23.66リラで終値ベースの最安値を更新し、16日も最安値に近い終値としている。23リラ台中盤で暴落一服による下げ渋り型の持ち合いを形成している印象であり、6月22日のトルコ中銀金融政策委員会での利上げ観測もあって中銀のスタンスを見定めたいとしてリラ売りがやや手控えられている印象だ。
週間では6月9日終値23.37リラから0.25リラのドル高リラ安だった。
【6月22日のトルコ中銀MPCでの大幅利上げはあるのか】
6月22日にトルコ中銀の金融政策委員会(MPC)があるが市場ではリラ暴落を止めるために大胆な利上げに踏み切るのではないかと予想されており、現行の政策金利(週間レポレート)は8.5%だが、利上げ予想の中央値は20%で、予想レンジは12.5%から30%と幅広い。
トルコ中銀は前総裁時代に政策金利の週間レポレートを19%から2021年12月に14%まで引き下げたが、この結果、トルコのインフレ率は高騰してピーク時には85%となり、リラは2021年12月にかけて暴落した。利上げ見送りは一時的なものにとどまり2022年8月から11月までの連続利下げで9.0%とし、利下げサイクルの終了を宣言したものの2月6日のトルコシリア大地震対策として今年2月に8.5%へ引き下げられた。
しかし、再選後の新内閣でかつて副首相や財務相を歴任して市場の評価も高かったメフメト・シムセク氏を財務相とし、ウォール街の銀行家だったハフィゼ・ゲイ・エルカン氏を中銀総裁に任命したことにより、新内閣による政策転換があるのではないかとの期待が浮上してきた。
エルドアン大統領は6月13日のトルコメディアによる「大統領は金利政策の大幅な変更を支持するのか」との質問に対して「財務相の考えに基づき我々は財務相が迅速に無理なく中銀とともに措置を講じることを受け入れた」と述べたために利上げの可能性が高まった。ただし、大統領は「思い違いをしてもらっては困る」と「自身の金融経済政策思想は変わらない」と述べており、利上げが決定されても時限的なものにとどまるか、あるいは利上げそのものが小幅なものにとどまる可能性も残り、市場としては利上げが実際にどの程度のレベルで行われるのかを見定めないことにはリラの買戻しへの積極的な姿勢転換には至らないという状況にとどまっている印象だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月13日早朝安値から下げ渋りに入ったため、14日午前時点では5.95円を超えるところからは強気サイクル入りとし、6月15日早朝への上昇で5.95円を超えたために15日午前時点では13日早朝安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして15日の日中から16日夜にかけての間への上昇を想定した。
6月16日早朝にかけていったん下落してから切り返しに入り、17日早朝には13日安値以降の高値を更新しているので、13日早朝安値から3日目となる16日早朝安値で直近のサイクルボトムをつけて新たな強気サイクル入りしたと思われる。次のサイクルトップ形成期は20日午後から22日午後にかけての間と想定されるのでまだ上昇余地ありとみるが、6.00円から6.05円にかけての水準では繰り返し売られてきているため5.97円割れを弱気転換注意とし、5.95円割れからは弱気サイクル入りと仮定して21日朝から23日朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では6月17日早朝への上昇で遅行スパンが好転して先行スパンからも上抜けてきているので、遅行スパン好転中は高値試し優先とする。遅行スパンが一時的に悪化しても先行スパンから転落を回避するうちはその後に遅行スパンが好転するところから上昇再開とするが、先行スパンから転落する場合は下落再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は6月16日早朝に40ポイントを割り込んでから70ポイント手前へ戻し、その後も60ポイント以上を維持しているのでまだ上昇余地ありとするが、50ポイント割れからは下げ再開を警戒して30ポイント前後への低下へ向かうとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.95円を下値支持線、6.05円を上値抵抗線とする。
(2)5.95円を上回るうちは上昇余地ありとし、6.05円超えからは6.07円前後への上昇を想定する。6.07円以上は反落警戒とみるが、円安が勢いを増す場合は6.10円試しまで上値目途を引き上げる。また5.95円以上での推移なら20日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.97円割れからは5.95円試しとし、5.95円割れからは下落期入りとみて5.90円前後への下落を想定する。5.90円以下は反騰警戒とするが、5.95円以下での推移なら20日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
6月19日
16:00 6月 消費者信頼感指数 (5月 91.1)
6月20日
23:30 5月 中央政府債務 (4月 4兆5881億リラ)
6月21日
16:00 6月 製造業信頼感指数 (4月 108.3)
16:00 6月 設備稼働率 (4月 76.0%)
6月22日
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 8.5% 予想 20.0%)
20:30 週次 外貨準備高 6/16時点 グロス (6/9時点 577.9億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 6/16時点 ネット (6/9時点 -31.7億ドル)
6月23日
16:00 5月 貿易収支 (4月 -87.4億ドル)
17:00 5月 海外観光客数 前年比 (4月 29.03%)
注:ポイント要約は編集部
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