ドル円 141円台後半をターゲットにドル高継続
〇先週のドル円、ジャクソンホール会合で金融引き締め強まり、米金利上昇、140円台到達
〇9月FOMCでは0.75%利上げ予想が多数派、金融緩和継続の日銀との対比でドル買い円売りの動き強まる
〇1998年8月高値147.66レベルがターゲット、米金利上昇による株式市場急落を警戒
〇今週はISM非製造業景況指数、ベージュブック等の指標発表予定
〇8日ECB理事会とラガルドECB総裁会見、その後のFRB議長講演に注目集まる
〇今週は139.25レベルをサポートに141.75レベルをレジスタンス、ドル上値追い継続とみる
今週の週間見通し
先週のドル円は、前週のジャクソンホールを終え、FRBのピーク金利が一段と高くなりそうなこと、そのピーク金利が長期化し緩和が遠のくであろうことを背景に米金利が上昇、金利の動きとともにドル買いの動きとなり、140円の大台乗せを見ることとなりました。
米金利は10年債利回りは3.248%まで上昇しましたが、2年債利回りは3.551%まで上昇と短期債利回りの上昇が目立ちました。FF先物も金曜には若干下がったものの、9月FOMCでは0.75%利上げの織り込み度が56%と0.5%利上げよりも多数派となっています。またピーク金利は2023年1月以降3.75〜4.0%がしばらく続くという見方になっていて、こうした動きが大規模緩和を継続する日銀との対比でドル買い・円売りの動きを強めています。
今週は月曜は米国市場が休みですが、火曜にはISM非製造業景況指数、水曜にはベージュブック、そして木曜にはパウエルFRB議長の講演と続きます。特に8日木曜はECB理事会とラガルドECB総裁の会見もあり、その後の議長講演となることからジャクソンホールでの講演後のヒントとしてブラックアウト期間(9月10日〜FOMCが終わるまで)前の最後の発言となりそうですから注目度は高いはずです。
ただ、最近はブラックアウト期間中でもWSJのFEDウォッチャーを使って市場参加者を誘導することがしばしばありますので、仮に今回の8日以降に市場に変化があった場合にはWSJのプロパガンダ記事で対応ということにはなるでしょうが、仮にECBも0.75%の利上げを行う場合にはFOMCでも0.75%という思惑が広がることは確実です。
テクニカルにはまず超長期の月足チャートからご覧ください。
既に140円の大台に乗せてきたことで、ここから上では1998年8月高値の147.66レベルがターゲット兼レジスタンスとなります。当時は年初からというよりも1995年の79円台から急激なドル高が進んでいる途中で1998年4月以降はドル売り介入も実施されました。しかし介入でもドル買いは止まらず、8月には147円台のドル高・円安を見ました。そして皮肉なことに円安を止めたのは同年8月のロシア危機、9月のLTCM危機をきっかけとしたドル急落でした。
当時と今とでは全く状況が異なるため、急落といったことは起きないでしょうが、当時の水準に近づいてくるとそうした過去の出来事を気にする向きも出てきますので、米金利上昇による株式市場の急落といった動きが出てくる場合には相当の注意が必要と思われます。
日足チャートも見てみましょう。
ドル円(日足)チャート
年初来高値更新を繰り返していますが、青の平行線で示した上昇チャンネルの中での動きを続けていると見てよさそうです。また上昇チャンネルの起点ともなっている8月11日安値を起点とした上昇N波動を考えると100%エクスパンションが141.71となっていることから、今回の上昇は141円台半ばから後半を目途に上げていると見てよさそうです。
いっぽうで140円割れでは買いも出てくることから下値の目途は7・8月高値と重なる139円台前半となります。
今週は139.25レベルをサポートに141.75レベルをレジスタンスと、引き続きドルが上値追いをする展開を考えます。下げてから上げた方が買い遅れている向きが買えることから望ましい感じですが、高値追いをして高値掴みをした参加者の投げで下げる動きの方がイメージしやすい感じもします。難しい局面になってきました。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2022年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
9月5日(月)
**:** NY市場休場
10:45 中国8月MarkItサービス業PMI ☆
16:00 トルコ8月CPI
16:50 フランス8月サービス業PMI
16:55 ドイツ8月サービス業PMI
17:00 ユーロ圏8月サービス業PMI
17:30 英国8月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏7月小売売上高
**:** OPECプラス閣僚級
9月6日(火)
08:01 英国8月小売売上高
13:30 豪中銀政策金利発表 ☆
15:00 ドイツ7月製造業新規受注
17:30 英国8月建設業PMI
18:30 南ア4〜6月期GDP
22:45 米国8月サービス業PMI
23:00 米国8月ISM非製造業景況指数 ☆
9月7日(水)
10:30 豪州4〜6月期GDP ☆
**:** 中国8月貿易収支
15:00 ドイツ7月鉱工業生産
18:00 英中銀総裁議会証言 ☆
19:00 南ア7〜9月期企業信頼感
21:30 米国7月貿易収支
23:00 カナダ中銀政策金利発表
27:00 ベージュブック ☆
9月8日(木)
07:45 NZ4〜6月期製造業売上高
08:01 英国8月住宅価格
08:50 本邦4〜6月期GDP改定値 ☆
08:50 本邦7月貿易収支(国際収支)
10:30 豪州7月貿易収支
12:05 豪中銀総裁講演
15:45 フランス7月貿易収支
21:15 ECB理事会 ☆
21:30 米国新規失業保険申請数
21:45 ラガルドECB総裁会見 ☆
22:10 パウエルFRB議長講演 ☆
24:00 週間原油在庫統計
9月9日(金)
10:30 中国8月CPI・PPI ☆
15:45 フランス7月鉱工業生産
23:00 (シカゴ連銀総裁講演)
23:00 米国7月卸売売上高
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
8月29日(月)
週明けのドル円はジャクソンホールでパウエルFRB議長講演が予想通りタカ派に振ってきたものの、今後の数字次第で更なる引き締めとその長期化につながるのではとの見方からドル一段高の動きとなりました。東京後場には139.00レベルの高値を見ましたが、ユーロドル上昇に引っ張られNY朝方には137.56レベルの安値をつけました。しかし引けにかけては改めてドル買いの動きとなり138円台半ばでの引けとなりました。
8月30日(火)
ドル円は週明けの上昇時に139円よりも上の水準ではドル売りも出ていたことから朝方からじり安の展開となりました。NY市場が始まる前には138.05レベルまで水準を下げていたものの137円台ではドル買いオーダーも見られ、強い米国経済指標に反応して米金利が大幅上昇すると月曜高値を上抜け、139.08レベルまで上昇しました。しかし139円台では引き続き売りも出て、138円台半ばへと押しもみあいのままで引けました。
8月31日(水)
ドル円は前日に139円台に乗せたものの売りが出たことから上値が重いスタートとなりましたが、いっぽうで押し目買いも根強く138円台半ばでは買いが出てくる流れが続きました。
9月1日(木)
ドル円は朝方からドル買いが先行し一時139.68レベルの高値をつけましたが、利食いも出る中で中国四川省成都でのロックダウンを嫌気して欧州市場前場には139.06レベルまで下押ししました。その後NY市場まで底固めを続け、NY市場前場には米金利が上昇し3.295%をつけるとドル円も140円台に乗せ、後場には140.23レベルの高値をつけ高値圏でもみあいのまま引けました。
9月2日(金)
ドル円は東京朝方に一時的な押しは入ったもののすぐに140円の大台を回復、雇用統計まで底堅い値動きを続けました。雇用統計直後は予想よりも強い非農業部門雇用者数にドル買いで反応し140.80レベルの高値をつけましたが、全体としては強弱ミックスしていたためすぐに下押しし、140円台前半でもみあいのまま引けました。
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