ユーロ 年初来安値を更新する流れに(週報9月第1週)

先週のユーロドルは、常に景気後退懸念が影を落としている中で、8日ECB理事会で0.75%利上げが行われるとの見方が広がったことが週前半のユーロ買いの要因となりました。

ユーロ 年初来安値を更新する流れに(週報9月第1週)

ユーロ 年初来安値を更新する流れに

〇先週のユーロ、ECB理事会での0.75%利上げ思惑受け、週央にかけ高値1.0079に到達
〇週後半は欧州エネルギー供給不安から、上値の重い展開となり0.9910レベルまで下げる
〇31日からノルドストリーム天然ガス供給停止、再開不透明で週明け欧州天然ガス価格は再上昇見込む
〇今週は英中銀総裁議会証言、ECB理事会、ラガルドECB総裁会見に注目
〇ECBの利上げ幅に関わらず、ユーロ売りに繋がる流れか
〇今週は0.9800レベルをサポートに1.0000レベルをレジスタンスとするレンジをみる

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルは、常に景気後退懸念が影を落としている中で、8日ECB理事会で0.75%利上げが行われるとの見方が広がったことが週前半のユーロ買いの要因となりました。これは欧州のインフレの高さからECB関係者も0.75%の利上げを支持するという発言が増えてきている中、31日に発表されたユーロ圏8月CPIが予想よりも高い9.1%となったことで週間高値をつけました。

しかし、31日からは点検を理由にノルドストリームでの天然ガス供給がストップし、備蓄は増えていたものの点検終了後に供給が再開するのかが不透明なことから上値も重くなっていました。前回の点検時は再開したものの供給量が半減されピーク時の20%にまで落ち込んでいたことから懸念する向きも多かったのですが、今回も点検終了後に修理を理由にノルドストリームは止まったままです。

これは金曜のNY後場に既にガスプロムから発表されていたとはいえ、前回も今回も本当に点検なのかは怪しいもので、実際には対ロ制裁に対抗しての停止と見た方が良さそうです。今回の停止が再開するかどうかで今後の天然ガス価格も、ユーロドルも方向性が全く変わってきますが、答えがわかるまでユーロの上値は重くならざるを得ないでしょう。

そして最大の注目材料である8日のECB理事会ですが、7月理事会でマイナス金利からゼロ金利としていましたので、今回の利上げ幅がそのまま政策金利となります。今回は理事会を前にノルドストリームが止まり今後もエネルギー価格高騰が続くであろうことから、欧州のインフレはピークアウトしたという意見は米国と異なり全く聞こえてきません。

本来であればエネルギー価格の上昇が原因で大幅利上げをしたとしても収まるようなものではないため、利上げが0.75%でもユーロ高は一時的でその後売りに転じるでしょうし、0.5%利上げだとしても利上げ幅が少ないという見方からユーロ売りとなりそうです。どちらになっても結局はユーロ売りに繋がるのではないかという見方です。

テクニカルには日足チャートを見てみましょう。

ユーロ 年初来安値を更新する流れに

先週安値は先々週安値のわずか上でしたが、週明けにいきなり下げて始まったことで東京前場に安値0.9900レベルと先々週安値に並んで止まっています。ただ、材料的に悪材料が多いこと、テクニカルには年初来高値からの下降チャンネル内での動きを依然として継続していることから、年初来安値を更新し、6月下旬高値を起点とした逆N波動(ピンク)の78.6%(61.8%の平方根)エクスパンション0.9846を最初のターゲットとする流れが続いています。

ECB理事会か天然ガスの問題か、どちらかをきっかけに100%エクスパンションの0.9705も視野に入れておいた方がよいでしょう。今週は最初のターゲットをやや下回り0.9800レベルをサポートに1.0000レベルをレジスタンスとするレンジを見ておくこととします。

今週のコラム

ノルドストリームが止まったままであることから、週明けの欧州天然ガス価格は再上昇するとみられますが、テクニカルにどうなのか欧州天然ガス(オランダTTF)の週足チャートを見ておきます。

ユーロ 年初来安値を更新する流れに 2枚目の画像

6月安値と8月高値の半値押しが212.965ユーロ(メガワット時)でしたが、先週安値は214.665ユーロとほぼターゲットに一致しました。8月高値と先週安値の38.2%戻しが265.035ユーロとなることから、今週は同水準までの戻しはありそうです。ただ、ノルドストリームの再開が当面無いということになれば、8月高値を再度トライする可能性もありそうで、しばらくは欧州天然ガス価格から目が離せない状況となっています。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

9月5日(月)
16:50 フランス8月サービス業PMI
16:55 ドイツ8月サービス業PMI
17:00 ユーロ圏8月サービス業PMI
17:30 英国8月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏7月小売売上高

9月6日(火)
08:01 英国8月小売売上高
15:00 ドイツ7月製造業新規受注
17:30 英国8月建設業PMI

9月7日(水)
15:00 ドイツ7月鉱工業生産
18:00 英中銀総裁議会証言 ☆

9月8日(木)
08:01 英国8月住宅価格
15:45 フランス7月貿易収支
21:15 ECB理事会 ☆
21:45 ラガルドECB総裁会見 ☆
22:10 パウエルFRB議長講演 ☆

9月9日(金)

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

8月29日(月)
ユーロドルは東京昼過ぎまではドル買いの動きとなっていましたが、前週同様に0.99台前半で下げきれず、欧州市場では買い戻しが出ていました。さらに欧州天然ガスが下げたこと、またEUとして電力市場への介入を準備との報道でユーロは一段高となり、1.0029レベルまで買い戻された後はパリティ近辺でもみあいのまま引けました。

8月30日(火)
ユーロドルは東京市場では動かず、欧州市場に入り欧州天然ガス価格が大きく水準を下げる動きを好感してユーロドルに買いが入りました。欧州前場には1.0055レベルまで戻していましたが、NY市場では米金利上昇とドル高にユーロドルも押され0.99台後半への押しを挟んで1.00台前半で小動きのまま引けました。

8月31日(水)
ユーロドルは東京市場ではやや上値が重たい展開となっていましたが、欧州市場に入り予定通りとはいえノルドストリームが停止したことでユーロ売りの動きとなりました。しかしユーロドルは前日同様に0.9980レベルではユーロ買いも出ていたところに予想よりも高いCPIを受け9月理事会での0.75%利上げ思惑が広がり買い戻し。1.0079レベルまで上伸後にやや押して引けました。

9月1日(木)
ユーロドルは前日NY高値以降じり安の流れを続け、欧州市場序盤にやや買い戻しが見られた以外はドル高の動きもあってNY前場の0.9911レベルまで下げ続ける動きとなりました。点検中のノルドストリームが再開するまでは買いにくいと考える向きが多いいっぽうで、8日のECB理事会では0.75%利上げの思惑も強く積極的に下値を試す動きとはなりませんでした。

9月2日(金)
ユーロドルは前日の下げに対する買い戻しが続き、欧州の天然ガス備蓄が予定よりも早く8割に達したとのニュースも好感され一段高、雇用統計前後の動きはあったものの、NY昼前には1.0034レベルの高値をつけました。しかし、その後ノルドストリームの点検で修理が必要となり、ガス供給は再開できないとのニュースに急反落。引けにかけては東京朝方の水準へ押して引けました。

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