ドル円「ジャクソンホールに向けてドル高継続」(週報8月第4週)

パウエルFRB議長の講演においてタカ派的な内容が示されるのではないかとの思惑から週を通してドル買いが目立ち、金曜には137円台に乗せる動きを見せました。

ドル円「ジャクソンホールに向けてドル高継続」(週報8月第4週)

「ジャクソンホールに向けてドル高継続」

〇先週のドル円、週を通してドル買いが目立ち、金曜には137円台に乗せる動きに
〇今週のジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演への思惑等が背景
〇FRBが9月FOMCで0.75%の利上げを行う可能性引き続き高い
〇137円台半ばは止まりやすく、議長のタカ派発言が出たとしても年初来高値更新は無いか
〇今週は135.90レベルをサポート、138.90レベルをレジスタンスの底堅い展開を予想

今週の週間見通し

先週のドル円は、週初は132円台半ばまで下げる場面も見られましたが、その後は今週のジャクソンホール(経済シンポジウム)におけるパウエルFRB議長の講演においてタカ派的な内容が示されるのではないかとの思惑から週を通してドル買いが目立ち、金曜には137円台に乗せる動きを見せました。

パウエル議長がタカ派に動くとの思惑は先週の週報でも書いたクリーブランド連銀総裁の発言を他の地区連銀総裁も踏襲する発言を行い、ハト派と見られている総裁までもがタカ派的な発言をしてきました。おそらくはFRB内ではこれまでよりタカ派的なスタンスになってきていることは間違いなさそうです。

先週取り上げたクリーブランド連銀総裁の発言では、時期とピークはかなりタカ派と見られるものの、インフレ目標の2%に回帰させるために金利は高止まりするであろうこと、少なくとも2023年後半まで緩和に転換する可能性は低いことはFOMCメンバーの共通認識であると考えられます。

前回7月FOMCは株価もまだ上昇途中で現在ほどの上昇は見せていませんでしたから、その時点に比べると米国の経済に対してはより安心感を強めているでしょうし、インフレもおそらくはピークアウトした可能性は高いものの依然として8%台では目標水準からの乖離が大きすぎます。11月の中間選挙までにもう一段のインフレ低下を実現するためにも、タカ派スタンスを継続し9月FOMCで0.75%の利上げを行う可能性は高いと言えるでしょう。

更に昨年のジャクソンホール(オンライン)では、パウエル議長は昨春以降のインフレ率上昇は一時的とするスタンスを崩さず、ハト派を維持していました。引き締めの遅れがその後の想定以上のインフレ率となったことの一因であることは間違いなく、多少株価が反落しても問題ない今こそ昨年の失策を挽回するためにもタカ派な政策を前面に出してくるのではないかと考えています。

パウエル議長の講演は金曜NY前場と今週もほぼ終わるタイミングですから、それまではおそらく上述したような思惑が市場に広がり、米金利は底堅く為替市場はドルが強い流れが続くものと見ています。他のイベントとしては米国関連ではPMI速報値、GDP改定値の発表がありますが、もし弱い数字でドルが押すような動きがあればカウンターでドル買いが入ってくるのではないかと考えています。

テクニカルには日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。


想定以上のスピードでドル高となったことでいったん全てのターゲットを消し、年初来高値と8月安値との78.6%(61.8%の平方根)戻しとなる137.45(青のターゲット)のみを表示してあります。週明けに先週高値を既に上抜ける動きとなっていますが、137円台半ばはいったん止まりやすい水準です。

その後、底堅いながらも仕掛けるのはパウエル議長の講演待ちという流れになりそうですが、仮に137円台前半で講演を迎えタカ派な発言が出たとしても年初来高値更新までは無いのではないかと考えています。おそらく先週木曜以降にある程度思惑によるドル買いが出ていると見られますので、139円手前あたりがターゲットという見方をしたいと思います。

いっぽうで下値はかなり底堅く136円でさえ遠のいてきた感がありますが、木曜高値はまだ135円台だったことを考え、木曜高値圏をサポートに考えたいと思います。今週は135.90レベルをサポートに138.90レベルをレジスタンスと、引き続きドルが底堅い展開を考えます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2022年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

8月22日(月)
(特になし)

8月23日(火)
16:15 フランス8月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ8月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:00 ユーロ圏8月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:30 英国8月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
18:30 南ア4〜6月期失業率
22:45 米国8月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
23:00 ユーロ圏8月消費者信頼感速報値 ☆
23:00 米国8月リッチモンド連銀製造業景況指数
23:00 米国7月新築住宅販売

8月24日(水)
08:00 (ミネアポリス連銀総裁講演)
17:00 南ア7月CPI
21:30 米国7月耐久財受注
23:00 米国7月住宅販売保留件数
23:30 週間原油在庫統計

8月25日(木)
07:45 NZ4〜6月期小売売上高
15:00 ドイツ4〜6月期GDP改定値
15:45 フランス8月企業景況感
17:00 ドイツ8月ifo企業景況感
18:30 南ア7月PPI
20:30 ECB理事会議事要旨公表 ☆
21:30 米国4〜6月期GDP改定値 ☆
21:30 米国新規失業保険申請数
**:** ジャクソンホール(〜27日)

8月26日(金)
08:30 本邦8月東京区部CPI ☆
15:00 ドイツ9月消費者信頼感
15:45 フランス8月消費者信頼感
21:30 米国7月個人所得・消費支出 ☆
21:30 米国7月卸売在庫
23:00 パウエルFRB議長講演 ☆
23:00 米国8月ミシガン大消費者信頼感

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

8月15日(月)
週明けのドル円は仲値に向けて売りが出て132.91レベルまで下げたもののすぐに戻し、NY市場までは133円台前半の狭いレンジの中でもみあいを続けました。NY市場に入り発表されたNY連銀製造業景況指数が予想よりも大幅に悪い−31.3となったことで米金利低下とともに132.56レベルまで水準を下げました。しかし、引けにかけては133円台に戻し下げる前の水準を回復して引けました。

8月16日(火)
ドル円は東京前場から底堅い動きとなっていましたが米金利が上昇する動きとともにNY朝方には134.69レベルまで上昇しました。引けにかけては日計りの利食い売りも出て134円台前半に押して引けました。

8月17日(水)
ドル円は東京市場では動きが鈍かったものの欧州市場に入りFOMC議事録がタカ派的な内容ではないかとの思惑もあり米金利が上昇、それに沿ってドル円も上昇を続け、NY昼前には135.50レベルの高値をつけました。FOMC議事録は思ったほどタカ派ではなかったことで一時的に134.79レベルまで押しましたが、引けにかけては135円台を回復して引けました。

8月18日(木)
ドル円は早朝にドル売りが先行したもののすぐに買い戻しが入り、東京時間は135.42レベルまでじり高の動きを見せました。しかし前日高値は超えられず欧州時間はじり安、一時早朝安値を割り込み134.65レベルの安値をつけてNY市場入り。NY市場に入り発表された経済指標が予想よりもかなり強かったことから改めてドル買いの動きとなり、複数の地区連銀総裁のタカ派発言も加わって135.90レベルまで上昇して高値引けとなりました。

8月19日(金)
ドル円は東京朝方からドル買いが先行、その動きがNY前場まで続きました。背景には米金利の上昇がありましたが、10年債利回りは同様にNY前場まで上昇し2.998%と3%の大台目前まで上昇しました。最近のFRB関係者によるタカ派発言が今週のジャクソンホールにおけるパウエルFRB議長の講演にも見られるのではないかという思惑が強そうです。


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