ドル円 ドル売りは続くも横方向のもみあいが基本
〇先週のドル円、FOMC直後に高値137.45まで上昇するも、金曜には133.20レベルまで押して引ける
〇FOMC予想通り0.75%利上げ、翌日GDP悪化を受け米長期金利急落、ドル売り強まる
〇12月FOMCで3.25%到達か、経済指標次第ではピーク金利低下や緩和前倒しの可能性も
〇今週は米7月ISM非製造業景況指数、同7月雇用統計など発表予定
〇今週は130.50をサポートに134.50レベルをレジスタンス、横方向のもみあいとみる
今週の週間見通し
先週のドル円は、前週に米金利低下とともにドル円が下げていた動きに対してFOMCを控えてのポジション調整でドルがじり高でFOMCを迎えました。FOMCの結果は0.75%の利上げと予想通りではあったものの、3月の最初の利上げから既に2.25%もの利上げが行われていることによるオーバーキル(急速な利上げによる景気後退)懸念もかなり広がってきたことから、米長期金利が急速に低下しドル売りの動きが強まりました。
翌木曜には米国4〜6月期GDP速報値の発表がありましたが、予想を上回る悪化で、前期に続いて2期連続のマイナス成長となったことから定義としては景気後退(テクニカル・リセッション)となりました。この結果を受けて米金利は一段と低下、ドル円も一段安となりました。
GDP速報値発表に先立って月曜にはホワイトハウスから2期連続マイナスであってもリセッションでは無いという発言が出ていたことから、事前にマイナスとなることを分かった上での発言だったと見られます。政府としてはNBER(全米経済研究所、民間の非営利組織)の判断を見ると発言し、また実際に2期連続マイナスの結果が出てからも、リセッションという状況にはないと火消しに回っていました。
ただ、NBERの景気後退確定にはかなりの時間がかかるため市場参加者はGDPの2期連続マイナスという客観的な基準を使っているので、今後も市場参加者は米国の景気後退を前提でシナリオを汲んでいくこととなります。今週は月曜に7月ISM製造業景況指数(予想52.0、前回53.0)、水曜に7月ISM非製造業景況指数(予想53.5、前回55.3)の発表がありますので、どちらかでも50を割り込むようなことになると警戒感は高まってくるでしょう。
FOMC後の金利については先週のコラムで書いた通りですが、FF先物の取引水準から早ければ12月にも3.25%でピークをつけ、その後いつ緩和に転換してもおかしくない状況となっています。現時点では来年の6月FOMCでの利下げを織り込み始めている状況ですが、今後出てくる経済指標次第では、ピーク金利の低下や緩和前倒しの思惑が出てくる可能性は高そうです。これも昨年春から夏時点のCPI急騰を一時的と判断したことや、その後のインフレ見通しを見誤ったFRBの責任は大きいと思いますが、結果として速く大きく引き締めを行うことで景気を犠牲にすることにつながりました。一部では最近のFRBはよくやっているという見方もあるようですが、明らかに後手に回ったことによる大きな弊害を招いたのはFRBの決断の遅さと言ってよいでしょう。
さて、円相場も先週は5円近い値動きとコロナショック後のドル円急落と急騰以降では週間レンジとして最も大きくなっています。7月前半時点では多くの市場参加者が140円を見ていたため、その後の円高への急反転でついてこれず、先週のFOMC後に一気にドル売り・円買いの動きが強まったと言えます。
テクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。
ドル円(日足)チャート
チャートパターンでは青のラインで示した上昇ウェッジを下抜け、6月FOMC後の安値と7月高値のテクニカルなターゲットは全て下抜けました。次のターゲットとしては全押しとなる131.48、大台130.00、年初来安値113.46と7月高値(=年初来高値)139.38の38.2%押しとなる129.48といった水準があげられます。
先週の動きが大きかっただけに一気に大台までの下げは考えにくいのですが、米国の景気後退リスクが高まる可能性もありますし、最近の値幅から考えると大台は視野に入れておいた方が良いかもしれません。いっぽうで上値は135.00の大台が遠のいてきたことで134円台半ばが戻りの限界点となりやすい地合いです。
今週は130.50レベルをサポートに134.50レベルをレジスタンスと、レンジを広めに見ながらも基本的には横方向のもみあいを考えています。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2022年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
8月1日(月)
**:** シドニー市場休場
07:45 NZ6月住宅建設許可
10:45 中国7月MarkIt製造業PMI ☆
15:00 ドイツ6月小売売上高
16:00 トルコ7月製造業PMI
16:50 フランス7月製造業PMI
16:55 ドイツ7月製造業PMI
17:00 ユーロ圏7月製造業PMI
17:30 英国7月製造業PMI
18:00 ユーロ圏6月失業率
22:45 米国7月製造業PMI
23:00 米国7月ISM製造業景況指数 ☆
8月2日(火)
10:30 豪州6月住宅建設許可
12:30 豪中銀政策金利発表 ☆
15:00 英国7月住宅価格
23:00 (シカゴ連銀総裁講演)
26:00 クリーブランド連銀総裁講演
8月3日(水)
07:45 NZ4〜6月期失業率
07:45 セントルイス連銀総裁講演
10:45 中国7月MarkItサービス業PMI ☆
15:00 ドイツ6月貿易収支
16:00 トルコ7月CPI
16:50 フランス7月サービス業PMI
16:55 ドイツ7月サービス業PMI
17:00 ユーロ圏7月サービス業PMI
17:30 英国7月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏6月PPI ☆、小売売上高
22:45 米国7月サービス業PMI
23:00 米国7月ISM非製造業景況指数 ☆
23:00 米国6月製造業新規受注
23:30 週間原油在庫統計
8月4日(木)
10:30 豪州6月貿易収支
15:00 ドイツ6月製造業新規受注
17:30 英国7月建設業PMI
20:00 英中銀MPC結果発表 ☆
20:30 米国7月チャレンジャー人員削減数
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国6月貿易収支
25:00 クリーブランド連銀総裁講演
8月5日(金)
10:30 豪中銀四半期金融政策報告 ☆
15:00 ドイツ6月鉱工業生産
15:45 フランス6月貿易収支
21:30 米国7月雇用統計 ☆
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
7月25日(月)
ドル円は週末の下げに対する調整が終日続きました。前週後半は米金利低下によるドル売りとなりましたが、週明けは米金利がFOMCを前に調整の上げに転じた動きからドル円もじり高となりました。一日の値幅は90銭あったものの東京仲値後に押した動きを含めての動きで、週明け始値からは50銭の上昇に留まり、あまり積極的な取引は見られなかった印象でした。
7月26日(火)
ドル円は前週末の下げに対するFOMC前の調整が続きました。米金利はNY市場が始まるまで低下し2.707%と前週金曜の水準を下回りましたが、為替市場への影響は特に見られませんでした。
7月27日(水)
注目のFOMCは事前予想通り0.75%の利上げを行い、誘導目標は2.25〜2.50%となりました。株式市場は9月以降の利上げペースが緩まるであろうことを期待して上昇しましたが、為替市場は短期債利回りが急低下(2年債利回りは3.10%台から2.96%台へ)したことを見てのドル売りとなりました。ドル円はFOMC直後の137.46レベルから136.31レベルへと1円強のドル安となり安値圏での引けとなりました。
7月28日(木)
FOMC直後から米長期金利が低下する動きとともにドル円も下げていましたが、東京市場でも同じ流れを続け仲値後には135.10レベルと135円の大台目前まで下げる動きを見せました。その後135.70レベルまでじり高となってのNY市場入りでしたが、米国GDPが予想よりも悪くマイナスとなったことを受け米長期金利は一段安、ドル円も135円の大台を割り込み134.20レベルまで水準を下げて安値引けとなりました。
7月29日(金)
ドル円は東京前場こそ動かなかったものの後場に入り株式市場が大幅安となる動きとともに円一段高の動きとなりました。東証の引け直後には132.50レベルの安値をつけ、欧州市場ではスピード調整からのドル買い戻しがNY前場まで続きました。一時134.59レベルと東京前場の水準に戻しましたが、その後は米金利低下から改めて売りが入り、133.20レベルまで押して引けました。
ディスクレーマー
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