トルコリラ円見通し 変異種騒動による乱高下に巻き込まれるも13.50円を挟んで高値圏を維持(20/12/22)

16時台安値からは対ドルでの下落一服とドル円の上昇により19時前には13.55円まで戻したが、その後はやや乱調な展開で13.50円を挟んで前後0.50円規模の騰落を繰り返した。

トルコリラ円見通し 変異種騒動による乱高下に巻き込まれるも13.50円を挟んで高値圏を維持(20/12/22)

コロナ変異種騒動による乱高下に巻き込まれるも13.50円を挟んで高値圏を維持

〇トルコリラ円、12/21夕13.37まで下げるが対ドルでの下落一服とドル円の上昇により夜13.55まで戻す
〇新型コロナ変異種報道によるドル買い、トルコリラも巻き込まれたがその後13.50を挟んだ展開へ
〇英国の変異種による感染拡大と航空便乗り入れ規制、トルコ観光収入にも影響するか
〇12/24トルコ中銀の金融政策決定会合、連続利上げで市場の期待に応えるか
〇13.37以上での推移中は上昇余地あり、13.55超えからは13.60台への上昇を想定
〇13.37割れからは下げ再開とみて13.30前後への下落を想定

【概況】

トルコリラ円は12月11日夕刻にEU及び米国によるトルコ制裁の動きを警戒して13円割れしたところから戻した後は12月4日早朝から17日夜にかけて13.30円前後を上値抵抗線として安値を徐々に切り上げる持ち合いとなっていたが、17日深夜に13.30ドル前後の壁を突破して18日には13.40円台を超え、19日未明には13.55円まで高値を切り上げて13.40円台を維持して先週を終えた。
11月19日のトルコ中銀による大幅利上げ後に付けた高値13.82円から11月24日安値12.92円まで下げた後は日足レベルでほぼ横ばいの持ち合いだったところから上抜け始めた状況となり、12月24日のトルコ中銀金融政策決定会合での連続利上げ観測もあり週明けはさらに高値を試しにかかりやすい状況だった。しかし21日は英国でのコロナ変異種の急拡大と欧州等への飛び火からロンドンのロックダウン強化、EU諸国による英国からの入国禁止措置が相次ぐ中でリスク回避的なドル買いが発生、トルコリラも対ドルで16時台に下落し、トルコリラ円も13.37円まで失速した。

21日16時台安値からは対ドルでの下落一服とドル円の上昇により19時前には13.55円まで戻したが、その後はやや乱調な展開で13.50円を挟んで前後0.50円規模の騰落を繰り返した。

【英国の変異種による感染拡大と航空便乗り入れ規制、トルコ観光にも打撃】

トルコのコジャ保健相は21日、「新型コロナウイルスの変異により英国で感染のスピードが上昇していることが報告されている。エルドアン大統領の指示により英国、デンマーク、オランダ、南アからトルコへのフライトを一時的に停止することが決定された」と述べた。
WHOによると変異種は英国の他、オーストラリア、アイスランド、イタリア、オランダで各1例、デンマークで10例見つかったとし、南アでは類似の変異種が発見されたが英国とは別の変異種と説明した。変異種は感染力が従来よりも最大で7割拡大していると英国は発表しているが、今のところ重症化・死亡率への知見はなく、また米ファイザー社ワクチン等の有効性が阻害されることは証明されていないとした。しかし武漢型から欧州型、今回の変異種とウイルスの変異は多様で早く、そのためにSARSやMARS等ではワクチン開発が結局実現しなかった経緯もあるので心配だ。
トルコにとっては自国内の感染拡大と共に、欧州での国境を超えた移動規制が強まると観光収入にも影響が出かねないところだ。

【12月24日のトルコ中銀金融政策会合迫る】

12月24日にトルコ中銀の金融政策決定会合がある。市場は現行の15.0%から16.5%へ連続利上げが決定されるのではないかと予想している。アーバル新総裁は就任後の11月19日会合で政策金利を従来の10.25%から15.0%へ大幅に引き上げた。12月16日には来年も金融政策の引き締め姿勢を維持するとし、持続的な方法でインフレ率を低下させるために必要なら追加利上げを実施する用意があると述べている。
11月6日まで暴落的な下げに見舞われていたトルコリラだが、11月7日の中銀総裁更迭から反騰し、11月19日の利上げ後の高値からは反落したものの下げ一服でしっかりし、新総裁の手腕を見定めたいというスタンスで推移している。

21日にゴールドマンサックスはトルコリラ見通しについて、3か月後を7.50リラ、6か月後を7.75リラ、12か月後を8.00リラとし、従来予想のそれぞれ7.75リラ、8.00リラ、9.00リラから上方修正した。中銀新総裁への市場の期待が大きいとし、中銀による外貨準備高拡大によるドル買いで上値は抑えられつつも対ドルでの上昇基調が継続するとした。こうした市場の期待に12月24日の連続利上げで応えれられるかどうか試される。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、12月19日未明高値から21日夕刻安値へ反落したもののその後に高値を更新しているため、直近のサイクルトップを19日未明高値、21日夕安値を同サイクルボトムとした強気サイクル入りとする。21日夕安値割れ回避のうちは24日未明から28日朝にかけての間への上昇余地ありとみるが、21日夕安値を割り込む場合はダブルトップ形成からの下落期入りとして24日夕から28日夕にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では19日未明高値以降は13.50円を挟んで乱高下しているために遅行スパンは実線と交錯しているが、先行スパンを上抜いた状況は維持されているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。ただし先行スパン転落からは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は19日未明高値高値を21日夕高値で上抜いたところで指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られるので、50ポイント割れの状況が続く場合は下げ再開注意とし、21日夕安値割れからは30ポイント以下を目指す下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月21日夕安値13.37円を下値支持線、21日夕高値13.55円を上値抵抗線とする。
(2)13.37円以上での推移中は上昇余地ありとし、13.55円超えからは13.60円台への上昇を想定する。13.65円以上は反落警戒とするが、13.50円以上での推移なら23日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)13.37円割れからは下げ再開とみて13.30円前後への下落を想定する。13.30円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、13.37円を割り込んだ後も13.40円以下での推移なら23日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

12月24日
 23:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 15.0%、予想 16.5%)
 23:30 週次外貨準備高 12/18時点 (12/11時点 474.1億ドル)
12月25日
 17:00 12月製造業景況感 (11月 103.9、予想 101.5)
 17:00 12月設備稼働率 (11月 75.8%、予想 76.0%)
 17:00 11月観光客数 前年比 (10月 -59.4%、予想 -52.0%)
12月29日
 17:00 12月経済信頼感指数 (11月 89.5、予想 86.2)
12月31日
 17:00 11月貿易収支 (10月 -23.7億ドル)
 23:00 トルコ中銀金融政策決定会合議事要旨公開
 23:30 週次外貨準備高
1月4日
 17:00 12月消費者物価 前年同月比 (11月 14.0%)
 17:00 12月消費者物価 前月比 (11月 2.3%)
 17:00 12月生産者物価 前年同月比 (11月 23.11%)
 17:00 12月消費者物価 前月比 (11月 4.08%)


注:ポイント要約は編集部

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