ドル円見通し 狼狽的ドル買いに上昇するもNYダウ反発からドル買い一巡で失速(20/12/22)

ドル円でもドル高優勢となって19時台には103.88円の高値をつけて18日夕刻高値を上抜いた。

ドル円見通し 狼狽的ドル買いに上昇するもNYダウ反発からドル買い一巡で失速(20/12/22)

ドル円見通し 狼狽的ドル買いに上昇するもNYダウ反発からドル買い一巡で失速

〇ドル円、12/21新型コロナ変異種報道でドル全面高、103.88をつけたがその後103円台序盤へ失速
〇新型コロナ変異種拡大報道、リスク回避的ドル買い戻し加速するもNYダウ反騰を受け為替市場落ち着く
〇ユーロ・ポンド・豪ドル・NZドル、対ドルで急落したものの、その後V字反騰、下げ幅の大半を解消
〇NYダウ、一時急落するも反騰、前日比37.40ドル高で終了、狼狽的なドル買いに対してストッパーに
〇米議会上下両院、総額9000億ドル規模の追加経済対策法案で合意し可決する見通し
〇株高基調が続くうちは為替市場もリスクオン的な同調でドル安基調を継続か
〇103.50以下での推移中は一段安余地あり、102.86割れからは102円台前半への下落を想定
〇103.50超えからは103.88試しとするが、103.70以上は反落警戒

【概況】

ドル円は12月17日夜安値で102.86円を付けて11月6日安値103.17円を割り込んだところからは下落一服で持ち直しに入り、12月18日夕刻に103.59円まで戻したもののその後は勢いが鈍って先週を終えていた。12月17日にかけてはユーロやポンド、豪ドル等が3月のコロナショック暴落以降の高値を更新するなどリスク選好優勢でドル安が進行してドル円も下落する流れだった。
12月21日は英国で新型コロナウイルスの変異種による感染急増報道により早朝からポンドとユーロが急落し、豪ドルやNZドルも連れ安となり、欧州市場時間に入って欧州株が全面安となりダウ先物が大幅下落するとリスク回避的なドル買い戻しが加速した。新興国通貨も大幅下落でドル全面高の様相となり、ドル円でもドル高優勢となって19時台には103.88円の高値をつけて18日夕刻高値を上抜いた。しかしNYダウが反騰に転じるとドル買いの動きも巻き戻しに入ってユーロやポンド、豪ドル等がV字反騰となり、ドル円も104円に届かないまま103円台序盤へ失速した。

【コロナ変異種拡散による狼狽的なドル買いに対してNYダウがストッパーに】

ジョンソン英首相は12月19日、感染力が従来種より最大で7割高い変異種の新型コロナウイルスにより急激に感染が拡大しているとし、ロンドンを含むイングランド南東部に事実上のロックダウンを再導入した。英国では新規感染者が20日に3万5928人増で過去最大となり21日も3万3364人増で累計感染者は207万人を超えた(世界6位)。
変異種の拡散を警戒して欧州諸国は英国からの入国禁止を相次いで発表、英国は物流停滞で孤立化した。先週は南アや豪州シドニーでも変異種による感染拡大が報じられており、金融市場は感染拡大が一段と深刻化するとして先週までのリスク選好的なドル売りからリスク回避的なドル買い戻しへと急旋回した。ダウ先物が一時NYダウ週末終値比で600ドル安を超える急落となったことも狼狽的なドル買いを助長した。

NYダウは取引開始序盤に一時400ドルを超える下落となったものの反騰に転じて前日比37.40ドル高で3万ドル台を維持して終了、ナスダック総合指数も同13.12ポイント安の小幅下落にとどまった。ダウ反騰を受けて為替市場も落ち着き、やや過剰なドル買い反応だったとしてユーロやポンド等がV字反騰となり下げ幅の大半を解消、ドル円は戻り売りとなった。
WHOは21日に「英国で確認された新型コロナの変異種については感染者を従来種より重症化させたり致死率を上げたりする証拠は現時点で見つかっていない」とした。EUの欧州委員会は21日に米ファイザー社ワクチンに対して条件付き販売承認を決定して12月27日以降にEUで接種が開始できる見込みとなった。これらの報道も市場を落ち着かせた。

米議会上下両院は21日に総額9000億ドル規模の追加経済対策法案で合意して可決する見通しとなった。追加策では1人最大600ドルの現金給付や週300ドルの失業給付上乗せ、中小企業雇用維持支援策、航空業界支援の160億ドル等も盛り込まれており、米国のコロナ対策としては今春の凡そ3兆ドル規模の財政出動と合わせ米GDPの凡そ2割の規模となる。

【ドル円、再び安値試しへ向かうか】

12月21日の市場混乱は落ち着いたが、ワクチンが普及し始める一方で変異種による感染拡大は先行き不安を助長する。欧州各地のロックダウン、豪シドニーでもロックダウン、米国の感染拡大も収まらずに経済活動規制強化が続く中で株高基調を根拠に進んできたリスクオン心理も心もとない状況でもある。しかし、足元の不安よりも先行きの回復期待を優先した株高基調が続くうちは為替市場もリスクオン的な同調でドル安基調を継続しやすい。
ドル円は21日夜高値では17日未明のFOMC声明発表直後の高値には届かずに12月10日からの戻り高値切り下がり基調が続いている。11月6日安値を割り込んだ後だけに、さらに安値追及へ進みやすい範囲の中で戻したもののその戻りも一巡したところという印象だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、12月17日夜安値で直近のボトムを付けて戻しに入り、21日夜高値へ二段上げとなったが、その後の失速により既にピークアウトして新たな下落期に入っている印象だ。このため21日夜高値を上抜き返せないうちは22日夜から24日夜にかけての間への下落を想定し、強気転換は21日夜高値超えからと考える。

60分足の一目均衡表では21日夜への上昇で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜いたが、その後の反落で両スパン揃って悪化しつつある。このため遅行スパン悪化からは下げ再開とみて安値試し優先とし、強気転換は21日夜高値超え殻としてその際は遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は21日夜に70ポイントに到達してから40ポイント台へ低下している。50ポイント台前半までを戻り抵抗として30ポイント割れを目指す下落を想定し、上昇再開は60ポイント超えからとする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月17日深夜安値102.86円を下値支持線、12月21日夜高値103.88円を上値抵抗線とする。
(2)103.50円以下での推移中は一段安余地ありとし、17日深夜安値割れからは102円台前半への下落を想定する。102.50円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、103.35円以下での推移なら23日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)103.50円超えからは12月21日夜高値試しとするが、103.70円以上は反落警戒とし、その後に103.35円を割り込むところからは下げ再開とみる。

【当面の主な予定】

12/22(火)
09:30 (豪) 11月 小売売上高 前月比 (10月 1.4%、予想 2.5%)
16:00 (独) 1月 GFK消費者信頼感 (12月 -6.7、予想 -7.6)
16:00 (英) 7-9月期 GDP改定値 前期比 (速報 15.5%、予想 15.5%)
16:00 (英) 7-9月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 -9.6%、予想 -9.6%)
16:00 (英) 7-9月期 経常収支 (4-6月 -28億ポンド、予想 -117億ポンド)

22:30 (米) 7-9月期 GDP確定値 前期比年率 (改定値 33.1%、予想 33.1%)
22:30 (米) 7-9月期 GDP個人消費確定値 前期比年率 (改定値 40.6%、予想 40.6%)
22:30 (米) 7-9月期 コアPCE確定値 前期比年率 (改定値 3.5%、予想 3.5%)
24:00 (米) 11月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (10月 685万件、予想 670万件)
24:00 (米) 11月 中古住宅販売件数 前月比 (10月 4.3%、予想 -2.2%)
24:00 (米) 12月 リッチモンド連銀製造業指数 (11月 15、予想 12)
24:00 (米) 12月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (11月 96.1、予想 97.0)

12/23(水)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
09:30 (豪) 11月民間部門信用 前年同月比 (10月 1.8%、予想 1.7%) 
14:00 (日) 10月 景気先行指数CI改定値 (速報 93.8)
14:00 (日) 10月 景気一致指数CI改定値 (速報 89.7)
22:30 (米) 11月 個人所得 前月比 (10月 -0.7%、予想 -0.3%)
22:30 (米) 11月 個人消費支出(PCE) 前月比 (10月 0.5%、予想 -0.2%)
22:30 (米) 11月 PCEデフレーター 前年同月比 (10月 1.2%、予想 1.2%)
22:30 (米) 11月 PCEコアデフレーター 前月比 (10月 0.0%、予想 0.1%)
22:30 (米) 11月 PCEコアデフレーター 前年同月比 (10月 1.4%、予想 1.5%)

22:30 (米) 週間新規失業保険申請件数 (前週 88.5万件、予想 85.0万件)
22:30 (米) 週間失業保険継続受給者数 (前週 550.8万人)
22:30 (米) 11月 耐久財受注 前月比 (10月 1.3%、予想 0.6%)
22:30 (米) 11月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (10月 1.3%、予想 0.5%)
23:00 (米) 10月 住宅価格指数 前月比 (9月 1.7%、予想 0.6%)
24:00 (米) 12月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 81.4、予想 81.0)
24:00 (米) 11月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (10月 99.9万件、予想 99.0万件)
24:00 (米) 11月 新築住宅販売件数 前月比 (10月 -0.3%、予想 -0.9%)


注:ポイント要約は編集部

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