トルコリラ円見通し 米欧によるトルコ制裁の動きに13円割れするもV字反発(20/12/14)

トルコリラ円は12月11日夕刻に12.96円まで急落して11月24日安値12.92円以来の13円割れを見たが、11日深夜には13.28円までV字反発した。

トルコリラ円見通し 米欧によるトルコ制裁の動きに13円割れするもV字反発(20/12/14)

米欧によるトルコ制裁の動きに13円割れするもV字反発

〇トルコリラ円、11日未明米欧のトルコ制裁報道で急落し13円割れ
〇V字反発するも13.30に届かず、戻り一巡で12日早朝に失速
〇終了間際のトランプ政権、年内にトルコへの制裁的な動きを強める可能性も
〇12/10-11のEU首脳会議、トルコへの制裁については3月まで継続協議に
〇13.30超えからは13.35、13.40手前を目指す可能性
〇13.10割れからは11日夕安値12.96試しへ向かうとみる

【概況】

トルコリラ円は12月11日夕刻に12.96円まで急落して11月24日安値12.92円以来の13円割れを見たが、11日深夜には13.28円までV字反発した。12月11日未明にトランプ政権がトルコ制裁を決めたとの報道から急落となり、EUも11日の首脳会議でトルコ制裁を協議していたことから米欧によるトルコ制裁懸念で急落したと思われるが、米国の制裁内容がまだ不明であり、EU首脳会議は制裁に関して継続協議としたことで実効性のある早期制裁発動が回避されたことで11日夕刻への急落は下げ過ぎたとしてV字反発した模様。しかし13.30円には届かず、急落前の13.30円を中心とした持ち合い水準を超えるところまで回復できなかったため、戻り一巡で12日早朝には失速した。週明けも13.20円前後での推移にとどまっている。

【6-7月期の下げ渋りに近い動きか】

トルコリラ円は11月19日のトルコ中銀による大幅利上げを受けて13.82円まで上昇したものの買い材料一巡から下落に転じ、トルコ中銀による外貨買いの噂も出る中で11月24日には12.92円まで下げて利上げ前の水準を割り込んだ。13円割れはやや売られ過ぎとして持ち直したが、11月27日以降は13.30円を中心に13.40円前後を上値抵抗、12月1日と12月3日に付けた安値13.13円を下値支持線とした持ち合い相場に入っていた。
12月11日の下落はこの持ち合いからの転落だったが、11月24日安値割れを回避して持ち直したことで、両安値をダブル底として元の持ち合い相場レンジでの推移へ回帰する可能性も考えられるところだ。しかし13.40円に迫るところまで持ち直しが進まないと次の下落期にダブル底ラインを割り込んでゆく流れにもなりかねないところだ。

11月13日高値で11月6日からの反騰が一巡して下げてから横ばい推移を続けるという展開は、5月7日安値から6月2日高値へ反騰した後の下落後に暫く横ばい推移を続けた時にも近い。当時も何度か一時的に持ち合い下放れに入るような安値を付けては戻す等して7月後半まで1か月強の持ち合いを続けたが、結果的には7月27日への下落で持ち合い下放れ、さらに8月6日の下落で5月7日安値を割り込む一段安に入っている。今回も下げ一服での横ばい推移であり、同様の展開で持ち合いが長引くケースも考えつつ、新たなトルコリラ買い材料による力強い押し上げが発生しないうちは先行きの持ち合い下放れへの警戒が怠れないのではないかと思う。

【米欧のトルコ制裁への動き】

12月11日未明から下落したきっかけは米国によるトルコ制裁関連報道だった。トルコがロシアからS400ミサイルシステムを購入したことに関して米国はトルコへの制裁を計画しており、ポンペオ国務長官が勧告した一連の制裁措置をトランプ大統領が承認したと一部通信社が報じた。具体的な制裁内容等については明らかになっていないが、米上院が採決する年間7400億ドル規模の国防権限法案の最終版においてトルコへの制裁を30日以内に科すことが義務付けられているとされる。トルコ国防産業当局の責任者イスマイル・デミル氏が制裁対象となる見通しともされる。トランプ政権も終了間際だが、外交実績や今後の展開をにらんで外交問題でいくつか動いているため、年内にトルコへの制裁的な動きを強める可能性がある。トルコにとってはエルドアン大統領に対して独裁者呼ばわりした経緯のあるバイデン氏による政権発足への警戒感も強まるところだ。

12月10-11日のEU首脳会議では、トルコによる東地中海でのガス田探査強行やキプロスとの対立等に対する制裁が議論されたが、フランスの強硬姿勢に対してドイツ、スペイン、イタリアが時間をかけての外交努力をすべきとしたため、この問題は3月まで継続協議となった。早期に実効性ある制裁はひとまず見送られたことが12月11日夕刻安値からの反騰の背景となったようだ。
しかし、エルドアン政権の外交政策はことごとくEU、ロシア、米国等との対立を生み出しており、この姿勢はエルドアン政権が続く限り今後も変わらないと思われる。シリア内戦とクルド人問題、リビア内戦介入、ギリシャ・キプロスとの対立、ナゴルノ紛争介入、ロシア製ミサイルシステム導入でのNATO内孤立等は今後も続く。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

12月11日の急落からV字反騰したため、12月10日までの持ち合いから転落した動きにはいったんブレーキがかかった。しかし戻りを短命に13.10円を割り込むようだと下げ再開から一段安へ向かいかねないところと注意する。
(1)当初、13.10円を下値支持線、13.30円を上値抵抗線とする。
(2)13.10円以上での推移中は13.30円超えから13.35円、13.40円手前を目指す可能性があるが、13.35円以上は反落警戒とみる。
(3)13.10円割れからは下げ再開と仮定して11日夕安値12.96円試しへ向かうとみる。13.00円前後はもう一度買い戻しも入りやすいとみるが13.10円以下での推移が続く場合は15日以降の安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

12月11日
 16:00 10月経常収支 (9月 -23.64億ドル、予想 -1.0億ドル)
12月14日
 16:00 10月鉱工業生産 前月比 (9月 8.1%、予想 8.7%)
 16:00 10月小売売上高 前月比 (9月 2.8%、予想 1.0%)
 16:00 10月小売売上高 前年同月比 (9月 7.8%、予想 8.5%)
12月17日
 20:30 週次外貨準備高 12/11時点 (12/4時点 463.9億ドル)
12月21日
 16:00 12月消費者信頼感指数 (11月 78.0、予想 80.1)
12月24日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 15.0%、予想 16.5%)
12月25日
 16:00 12月製造業景況感 (11月 103.9)
 16:00 12月設備稼働率 (11月 75.8%)

注:ポイント要約は編集部

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