短期的に高値を見て調整売りが出やすい
〇先週のユーロ、2018年以来の高値をつけたことからテクニカルにユーロ買いが入る
〇英EU通商協議、合意が無理ならユーロドルが反転する大きなきっかけになるか
〇漁業問題、基本ポンドの材料だがユーロを売られるきっかけになる点に注意が必要
〇ECB理事会、来年以降のインフレ懸念に話が進めばドルとユーロの弱いもの比べという流れに
〇今週は1.2040レベルをサポートに1.2170レベルをレジスタンスとする週
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロは、月曜NY市場での押しが押しらしい押しとなった程度でユーロ高の動きが金曜欧州市場まで続きました。ドル売りの動きが対ユーロを中心に進んだこともありますが、年初来高値を更新し2018年以来の高値をつけたことからテクニカルにユーロ買いが入ったことが大きかったと見られます。
先週はEUと英国との離脱後の通商協議が難航しながらも金曜までは合意に近いという見方がされていましたが、英国とEUとの溝は埋まらず協議中断という混乱の中で週末クローズとなりました。楽観的な見方としては週末にも合意に至り10日のEUサミットでブレグジット後の方向性が示されるという感じでしたが、逆に今週のEUサミットまでに協議が進展しないと、合意無き離脱にいよいよ備えるサミットとなってしまいます。
これまでも英国はごねながらも自国に少しでも有利な方向へと話を持って行く戦略を取ってきましたが、年末で期限切れとなる土壇場での協議難航はごねているというよりも、もはや合意が無いままでのスタートも厭わないという姿勢にも思えますが、今週もギリギリのところで協議は続くと見られますので、まだどちらに転ぶかはわからないと考えるべきでしょう。しかし、市場参加者の多くは最終的には合意の方向を見ていたでしょうから、合意が無理だということが今後わかった時がユーロドルが反転する大きなきっかけになるように思えます。
現状で最も大きな争点は漁業問題ですが、これまではEUが英国の海域に入って操業していたことが出来なくなるとEUの漁業従事者は大ダメージですが、EU全体として考えると漁業の割合は極めて低く、最終的にはもういいという方向に動く可能性もあります。ここに至るまでの難航は多分に双方の漁業従事者に向けての票稼ぎとも言われていますし、もしEUが交渉の席から離れたら英国は自国でコントロールできるものの高額な関税で売れるものも売れなくなってしまうということになりかねません。ただ、話題的にはポンドの話題ですが、ユーロが売られるきっかけになるという点には注意が必要です。
そして、今週最大の材料はECB理事会ですが、英国では今週から新型コロナのワクチン接種が始まりますし、今後は感染者が抑えられていく中での追加緩和ということになると、市場参加者は来年以降の動きを考え始めることとなります。当初の反応は為替市場ではユーロ安、株式市場では欧州株高に動く可能性が高いと思いますが、米国同様に来年以降のインフレ懸念に話が進んでいくとドルとユーロの弱いもの比べという流れに中期的にはなっていくように思えますが、これは大きな流れが変わってから考えれば良いでしょう。
テクニカルには今週は週足チャートをご覧ください。
今の水準は2018年4月以来の高値圏ですが、2018年2月には1.2555レベルと2014年12月以来の高値をつけています。この高値と今年のコロナショックによるドル高値(ユーロ安値)の78.6%(61.8%の平方根)戻しが1.2144レベルで先週の高値と重なります。100%戻しの可能性もありますが、ECB理事会やEUと英国との協議難航など短期的にはいったん調整が入りやすいと見られます。
日足チャートもご覧ください。
11月安値と先週高値の23.6%押しが1.2042となっていて、同水準までの押しは入る可能性がありそうです。1.20の大台を割り込むほどの動きにはならなくとも、1.20台半ばから1.21台後半で調整が入りやすい展開を考え、今週は1.2040レベルをサポートに1.2170レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
今週のコラム
今週はポンドドルの日足チャートを見てみましょう。
ポンドも先週木曜に年初来高値を更新し金曜には1.3539レベルの高値をつけました。しかしEUと英国との通商協議中断で反落の動きとなっていますが、11月初めの安値からここまで比較的急角度で上がってきたことを考えると、ポンドも11月安値と先週高値との23.6%押しとなる1.3377から38.2%押しとなる1.3277あたりまでの押しは考えておいた方がよさそうです。
最終的に合意となれば改めて買われる可能性はあるものの、短期的には続落に注意したいところです。
今週の予定
12月8日(火)
09:01 英国11月小売売上高
16:45 フランス10月貿易収支
19:00 ユーロ圏7〜9月期GDP確報値
19:00 ドイツ12月ZEW景況感
19:00 ユーロ圏12月ZEW景況感
12月9日(水)
16:00 ドイツ10月貿易収支
12月10日(木)
09:01 英国11月住宅価格
16:00 英国10月貿易収支、鉱工業生産
16:45 フランス10月鉱工業生産
21:45 ECB理事会
22:30 ラガルドECB総裁会見
**:** EUサミット
12月11日(金)
(特になし)
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
11月30日(月)
ユーロドルは前週末からのユーロ買いの動きが続きましたが、東京市場では小動き。欧州市場に入ると改めて買いが強まり、NY市場の昼前には仕掛け的な買いも加わって一時1.2003レベルの高値をつけました。しかし、年初来高値を超えられず、月末実需のユーロ売りも出る中で日中ロングの投げも出て、1.1923レベルの安値引けとなりました。
12月1日(火)
ユーロドルは前日1.20に乗せた達成感から反落していたものの、東京市場で改めてユーロ買いの動きとなると、それに続く欧州市場でも買いが続き、NY市場では一気に年初来高値を更新し1.2077レベルと2018年5月以来の高値をつけ、そのまま高値圏での引けとなりました。
12月2日(水)
ユーロドルは東京市場では動かず、欧州市場に入り難航しているEUと英国との協議についてバルニエ首席交渉官が合意なき離脱の可能性に言及したことからポンドの下げとともに、ユーロドルにも売りが入りました。しかし、NY市場に入りユーロドルは再上昇、日中高値を超えると一段高となり1.2119レベルまで上昇し高値圏での引けとなりました。
12月3日(木)
ユーロドルは東京市場では底堅いものの動意薄、欧州市場に入ってから改めてユーロ買いの動きとなり1.2175レベルの高値をつけましたが、ドル円のストップによるドル売りがリードしてのドル安・ユーロ高に動いた印象が強かった海外市場となりました。
12月4日(金)
ユーロドルは前日までのユーロが強い地合いを継続し、欧州市場では高値1.2178レベルとわずかに高値を更新。しかし週末前のポジション調整が広がる中で、当初前進が見られていたEUと英国との通商協議が合意に至らず協議を中断とのニュースにポンド反落の動きとともに前日安値圏へと下押しし、安値圏での引けとなりました。
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