トルコリラ円見通し トルコ中銀利上げ後の反動安一服で持ち直しだが13.30円を挟んだ持ち合い続く(20/12/7)

3日夕安値13.13円と13.10円台が下値支持線となっている。13.30円を挟んで前後1円幅程度のボックス型持ち合いの様相だ。

トルコリラ円見通し トルコ中銀利上げ後の反動安一服で持ち直しだが13.30円を挟んだ持ち合い続く(20/12/7)

トルコ中銀利上げ後の反動安一服で持ち直しだが、13.30円を挟んだ持ち合い続く

〇トルコリラ円、13.30を挟んで前後1円幅程度のボックス型持ち合いの様相
〇政策金利引き上げで実質マイナス金利状態は解消されるもインフレ進行を抑え込まないと追加利上げか
〇地政学的リスクやバイデン政権発足後の米国によるトルコ制裁の懸念など不安材料を多く抱える
〇13.42超え続伸に入れば13.50を目指す流れとみる
〇13.13割れから続落に入る場合、12.92試しとし底割れから12.70、12.50を段階的に試す流れ

【概況】

トルコリラ円は11月19日のトルコ中銀による大幅利上げ発表から13.82円までいったん上昇したものの勢いは続かず早々にジリ安に転じ、11月23日には利上げ前水準を割り込み、11月24日夜安値で12.92円まで下げたが、13円割れからは持ち直し、11月27日以降は13.30円を中心とした持ち合いでの推移を続けている。
11月27日以降、戻り高値は11月27日夕高値13.39円、30日夜高値13.42円、2日夜高値13.39円、4日夜高値も13.38円にとどまっており13.40円前後が抵抗線となっている。一方で安値は11月30日朝安値13.16円、12月1日朝安値13.13円、3日夕安値13.13円と13.10円台が下値支持線となっている。13.30円を挟んで前後1円幅程度のボックス型持ち合いの様相だ。中銀利上げ前の水準が13.40円を中心に13.30円から13.50円にかけての持ち合いだったため、11月24日への急落一服で戻したものの、利上げ前の水準が戻り抵抗となって上値を抑えている印象だ。

【5月以降の下降チャンネル】

【5月以降の下降チャンネル】

11月6日安値11.99円から11月13日高値13.82円までは1.81円の戻り幅だったが、5月7日安値14.61円から6月2日高値16.23円までの1.62円高に近い戻り幅であり、5月7日安値と11月6日安値を結ぶ安値ラインとの平行線を6月2日高値から描けばちょうど11月13日と11月19日の戻り高値を抑えており、現状は右肩下がりの下降チャンネル内での推移にとどまっている。
大幅下落から戻した後、戻り一巡からいったん下げたところで下げ渋りに入った状況だが、6月2日高値の後も6月12日へ下げてから下げ渋りの横ばい推移を続けて一段安しており、8月10日に最安値を更新した後も三角持ち合い型で下げ渋りつつも9月に入って一段安に陥るなど、戻り一巡後の反落を早々に切り返してゆけないと、下げ渋り期間も切れて一段安へ進むパターンがうかがえる。

トルコリラ円11月6日安値からの反騰一巡でやや失速したところで持ち合い状態に入っているが、ここでもう一つ市場を有効に刺激できる金融政策的な仕掛けがあれば戻り高値を切り上げて6月以降の下降チャンネルから脱却することも可能な位置にあるが、持ち合い下放れに入ると市場の信認はまだ不十分ということになり、追加の金融引き締めや経済対策等への催促的なリラ売りが再燃しかねないと思う。

【リラへの信認をもう一段強化できるか、至らずに市場の催促が始まるか】

11月6日までのトルコリラは万人総弱気の状態で史上最安値を連日更新していた。11月7日のトルコ中銀総裁更迭、8日の財務相辞任表明と続いた金融当局のトップ交代劇でリラ暴落はいったんストップして買い戻しの連鎖で急反発となったわけだが、トルコリラを取り巻く悲観売り環境が解消したとまでは言えない。
外貨準備高不足は継続的であり、名目上の準備高は400億ドル強の水準でも為替介入等で使える正味の準備高は枯渇状態ともいわれている。

政策金利を15%へ大幅に引き上げたことで消費者物価上昇率が政策金利を上回る実質マイナス金利状態は解消したが、12月3日に発表された11月消費者物価上昇率は前年同月比で14.03%、生産者物価上昇率は23.11%であり、インフレ進行を抑え込まないと追加利上げを余儀なくされかねない。
恒常的な経常赤字の中にあって重要な観光収入もコロナ禍で激減しているが、11月末からは従来の有症者のみの新規感染数発表から無症状でも陽性者数を発表することを強いられて感染者数が欧州並みに急増する事態に陥り、12月からは夜間外出規制等も始まっているため、感染拡大が収まらないことには収益改善もままならない状況にある。

新型コロナウイルスのトルコ感染者累計は12月5日時点で82.8万人、12月6日時点では新規有症発生者が6128人、新規陽性者数が3万1896人で11月25日以降は3万人前後での推移が続いている。
地政学的リスクはナゴルノ紛争の停戦により落ち着いた印象もあるが、シリアやリビアでの内戦介入、ギリシャとの東地中海ガス田探査やキプロス分断を巡る対立、ロシア製ミサイルシステム導入によるNATO内での孤立、バイデン政権発足後の米国によるトルコ制裁への懸念等、不安材料を数多く抱えている。

【当面のポイント】

11月25日以降は13.30円を中心に13.42円から13.13円までの持ち合い相場となっている。リラへの信認が強まれば持ち合い上放れで中銀利上げ時高値を試す動きへ進みやすくなるが、持ち合いが長引けば時間切れによる持ち合い下放れへの懸念が強まり、持ち合い下放れからは史上最安値を再び追及する流れへ向かいやすくなると思われる。

(1)当面、持ち合いの範囲内での逆張的な展開を続けながら持ち合い放れに追従するスタンスで見てゆく。
(2)13.42円を超えて続伸に入れば13.50円を目指す流れとし、押し上げ材料がつけば13.60円へ上値目途を引き上げる。また13.40円台を維持し始める場合は高値試しを続けやすいとみる。
(3)13.13円割れから続落に入る場合は持ち合い下放れとみて11月24日安値12.92円試しとし、底割れからは12.70円台、12.50円台を段階的に試してゆく流れと考える。

【当面の主な経済指標等の予定】

12月10日
 16:00 9月失業率 (8月 13.2%、予想 13.4%)
 20:30 週次外貨準備高 12/4時点 (11/27時点 439.0億ドル)
12月11日
 16:00 10月経常収支 (9月 -23.64億ドル、予想 -1.0億ドル)
12月14日
 16:00 10月鉱工業生産 前月比 (9月 8.1%)
 16:00 10月小売売上高 前月比 (9月 2.8%)
 16:00 10月小売売上高 前年同月比 (9月 7.8%)

注:ポイント要約は編集部

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