トルコリラ円見通し 13円割れからの持ち直し続くが、利上げ前の水準が今度は抵抗に(20/11/30)

トルコリラ円は、13円割れに対する突っ込み警戒感からややジリ高の推移に入り、27日夕刻には13.39円まで戻り高値を切り上げた。

トルコリラ円見通し 13円割れからの持ち直し続くが、利上げ前の水準が今度は抵抗に(20/11/30)

13円割れからの持ち直し続くが、利上げ前の水準が今度は抵抗に

〇トルコリラ円、27日夕刻13.39まで戻り高値を切り上げた後やや下げて週を終える
〇対ドルではやや持ち直し、週末は7.80リラを挟んだ揉み合いで終了
〇トルコ国内投資家はリラ安継続とみてドルやユーロ等のハードカレンシー購入
〇新型コロナ患者数28日は16万8742人と急増、累計死者は1万3373人に
〇13.10割れからは下げ再開とみて24日安値12.92試し
〇13.40超えからは13.50を目指す上昇を想定

【概況】

トルコリラ円は11月19日のトルコ中銀大幅利上げでいったん反騰したものの早々に失速に転じ、23日夜には利上げ前水準を割り込み、24日には12.92円まで続落して13円割れとなった。13円割れに対する突っ込み警戒感からその後はややジリ高の推移に入ったが、27日夕刻には13.39円まで戻り高値を切り上げた。
11月19日の中銀利上げ前が13.40円を中心に13.30円前後から13.50円前後までの持ち合いだったため、13.40円前後は戻りの抵抗となりやすい水準と思われ、27日夕高値の後はやや下げて週を終えている。
対ドルでのトルコリラは利上げ直後の19日夜に7.48リラまで反騰してから下落に転じ、11月25日未明には8.02リラまで安値を切り下げたが、週後半はやや持ち直して週末は7.80リラを挟んだ揉み合いで終了した。

【海外勢のリラ買い、国内勢のリラ売り、中銀の外貨買い?】

11月7日にトルコ中銀総裁が突然更迭され、8日には娘婿の財務相が辞任を表明、金融の2トップが更迭されて新体制となったことでトルコリラ円は11月6日安値11.99円から11月13日高値13.82円へと反騰してきた。新体制への期待や金融政策の変更、大幅利上げもあり得るとの見方から欧州勢がリラの買い戻しに動いたとされるが、中銀が市場予想通りに大幅利上げに踏み切ったところでは直前の水準から上昇したものの新たな高値更新へ進めずにその後は失速した。

13円割れからの持ち直し続くが、利上げ前の水準が今度は抵抗に

対ドルでのトルコリラも同様の動きであり、リラが上昇したところでトルコ中銀が外貨準備高補填のためにドル買いに動いたのではないかとされた。トルコ中銀はこれを否定しているが、週次の外貨準備高推移では10月23日時点で450.9億ドルだったものが11月13日時点で403.7億ドルへ減少、11月20日時点では437.1億ドルへ増えている。
一方でトルコ国内投資家はリラ安継続とみてドルやユーロ等のハードカレンシー購入を続け、また安全資産のゴールドも買っているようだ。

【4か月サイクルの下落期入り、40週サイクルの下落期はさらに続く?】

トルコリラ円は11月6日安値11.99円から11月13日高値13.82円まで1.83円の上昇となった。日足チャートでは概ね4か月前後の底打ちサイクルで推移しているが、前回の底打ち反騰は5月7日安値14.61円から6月2日高値16.23円まで1.62円であり、今回は前回をわずかに上回る上昇幅だったものの11月20日から3日連続陰線で下落したところを見ると、既に戻りを一巡させて新たな下落サイクルに入りつつある印象だ。11月27日までは日足3日連続陽線で戻しているが、直前の陰線2本分を解消できない程度にとどまっているため、11月30日から下落基調に入る場合は下げ一服も一巡しての下落再開へ向かいやすくなると思われる。
4か月サイクルの上には週足チャートで見られる中勢の40週前後の底打ちサイクルがあるが、このサイクルでは5月7日安値で直近のボトムを付けたばかりであり、5月底から27週目の11月6日安値では底打ちに日柄が浅く、さらに一段安へ向かう可能性を残していると思われる。

ただし、11月6日までほぼ一本調子での下落基調から反騰入りしたこと、11月19日の大幅利上げからさらに金融経済政策が確りしてゆけるのかの見極め、トルコ国内の感染拡大第二波の深刻化、実効性は薄いもののEUによるトルコへの制裁決議、バイデン新政権による対トルコ外交への警戒感等、ナゴルノ紛争は停戦に至ったがトルコを取り巻く地政学的リスクは高いままであり、年末へ向けて波乱含みの展開が続きやすい状況のため、11月13日高値を超える上昇がみられる場合は中勢の見通しを変更する必要が出てくるかもしれない。

【トルコ保健相、新型コロナウイルス公表基準を変更】

コジャ保健相は11月25日、トルコの感染者数公表値に「多くの批判、非難がある」とし、「過去24時間の患者が6800人超だったのに対し、陽性者は2万8000人超だった」と公表した。従来の患者には症状が軽い人は含まれてないことも公表した。陽性者数が増えていることについては「陽性者に対する死者数の割合が対策の成否を示す最も重要な指標の一つだ」「今回の公表は死亡率を低下させるため政府には好都合だ」と強弁した。9月末時点では無症状者をカウントしないことへの批判から無症状者も含める旨の発言をしていたが実際はカウントしていなかった。
公表基準が変わったことにより、新規感染者数は有症状で27日が6592、28日が6714人、陽性者数は25日が2万8351人、26日が2万9132人、27日が2万9845人、28日が3万103人となった。第一波のピーク時は4月11日の5138人だった。

患者数(アクティブケース)は24日時点で6万6675人だったが、25日に9万947人、26日に11万6614人、27日に14万2437人、28日は16万8742人と急増、第一波のピーク時は4月24日の8万575人だった。
感染による死者は27日が177人、28日が182人となり第一波ピーク時の4月19日の127人を大幅に上回ってきた。累計死者は1万3373人となった。
トルコが実は感染者数が急増した状況にあるということは、為替市場への影響は今のところ鈍いが、7月から海外観光客を受け入れて観光収入の立て直しを図り始めたのも感染抑制に成功しているトルコというイメージが根拠であり、感染爆発状況は欧州と変わらないということになれば客足も遠のくと懸念される。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

(1)11月24日の13円割れから持ち直している流れを維持できるかどうか試されるところであり、当面は13.10円を下値支持線、13.40円を上値抵抗線とみておく。
(2)13.20円を割り込んでも回復するうちは24日以降の上昇基調維持とみるが、13.20円以下での推移が続く場合は60分足の一目均衡表で先行スパン転落となるので下げ再開注意とし、13.10円割れからは下げ再開とみて24日安値12.92円試しとし、底割れからは12.80円前後を目指す下落を想定する。
(3)13.40円超えからは13.50円を目指す上昇を想定する。13.50円以上は反落注意とするが、13.30円以上での推移が続くうちは24日以降の戻り高値を試しやすいとみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

11月30日
 16:00 10月貿易収支 (9月 -48.3億ドル、予想 24.0億ドル)
 16:00 7-9月期GDP 前期比 (4-6月 -11.0%、予想 12.5%)
 16:00 7-9月期GDP 前年同期比 (4-6月 -9.9%、予想 4.5%)
12月1日
 16:00 11月イスタンブール製造業PMI (10月 53.9、予想 52.5)

12月3日
 16:00 11月消費者物価 前月比 (10月 2.13%、予想 0.8%)
 16:00 11月消費者物価 前年同月比 (10月 11.89%、予想 12.4%)
 16:00 11月生産者物価 前月比 (10月 3.55%、予想 1.00%)
 16:00 11月生産者物価 前年同月比 (10月 18.20%、予想 19.5%)
 20:30 週次外貨準備高 11/27時点 (11/20時点 437.1億ドル)
12月10日
 16:00 9月失業率 (8月 13.2%、予想 17.4%)
 20:30 週次外貨準備高 12/4時点

注:ポイント要約は編集部

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