ドル指数の下落にみられるドル安感の継続、ドル円も徐々に安値更新を目指すか
〇ドル円104円台で先週を終わるも、為替市場全般のドル安感に下落再開の印象
〇株高にもかかわらずドル円は下落 ドル全面安の動きがより強い
〇ドル指数終値ベースでは18年4月以来の安値 為替市場でのリスク選好からのドル売り進行
〇米長期金利は上下するも大きな情勢変化もたらさず
〇3月のコロナショックのパニック以降はドル需給緩み、投機通貨買い、新興国投資回復でドル安進行
〇ドル円もドル指数につれ、一時的な急伸も戻り売りにつかまりやすい
〇103.90割れ回避のうちは104.30超えから104円半ばを試す余地あり
〇103.90割れからは下落継続103.65、103.17、102円台中盤を目指す
【概況】
ドル円は11月9日の米ファイザー社ワクチン報道をきっかけに直前安値103.17円から11月11日深夜高値105.67円まで上昇した後は戻り一巡から下落に転じ、11月18日深夜に103.65円まで安値を切り下げ、23日夜には103.67円まで下げて安値更新に余裕がなくなっていたが、11月23日の米PMIが予想以上に強かったこと等から反騰となり、24日深夜には104.75円までいったん持ち直した。しかし戻りは続かずに25日からはジリ安に入り、米感謝祭での手掛かり難で104.25円を挟んだ横ばいを続けた後、27日午前からの下落で27日午後には103.90円まで失速した。その後は新たな安値更新を回避して104円台を回復して週を終えたが、為替市場全般のドル安感が強まる中でドル円も下落再開感が強まってきている印象だ。
【3月以降、株高とは逆相関でドル円は下落】
世界的な感染拡大は止まず、米国でも各州で過去最大の感染増加数となり米国の感染者累計は1360万人を超えた。欧州はロックダウンにより第二波のピークから収まりかけているものの、世界全体では6250万人を超える状況であり、足元のコロナ不況長期化への懸念は日々強まっている。
しかしワクチン開発の朗報が相次ぐ中でNYダウは11月9日に一時1600ドル高を超える上昇となり、11月24日には3万ドルに到達して史上最高値を更新した。ナスダックも11月25日に史上最高値を更新している。10月に下落していた欧州株も軒並み戻している。日経平均も4週連続の大上昇でバブル崩壊後の最高値を更新するなど、足元の感染拡大よりも来年の株高を先取するような強気ぶりを見せている。
リスクオンでの株高なら為替市場でのクロス円投資が活発となって円安となり、ドル円でも円安となっても不思議ないが、それ以上にドル全面安での動きが強いため、ドル円は株高と概ね逆相関的な動きとなり、株式市場が3月からの上昇基調を維持する一方でドル円は3月の戻り天井からの下落基調を続けている状況だ。
【ドル指数、終値ベースで底割れ】
ドル指数は11月28日安値で91.76まで下落、終値91.79で週を終えた。9月1日安値91.74割れをぎりぎりで回避しているものの終値ベースでは8月31日の92.16を割り込み、2018年4月以来の安値となった。
3月のコロナショック第一波当初にドル資金需給ひっ迫としてドル買いが殺到して3月20日に102.99を付けたが2017年1月3日天井103.82に届かず、両高値を週足レベルのダブルトップとして下落に転じた。コロナショックからの回復期待で株高・リスク選好となる一方でG7によるドル供給、米連銀の大規模な量的緩和とゼロ金利長期化政策によりドル安が進んできたが、9月からは下げ一服でやや持ち直していたところ、11月9日の米ファイザー社ワクチン報道をきっかけに為替市場でのリスク選好感が一段と強まったことでドル売りが進んでいる状況だ。
米10年債利回りは8月序盤の0.51%から11月10日には0.97%まで上昇したものの長期的に見れば0.50%から1.00%手前までの低水準にあり、日々の短期的な値動きでは米10年債利回りの上昇や下落で為替も反応するが、大きな情勢変化をもたらすものにはなってこなかった。
ユーロドルは9月1日高値から調整気味の推移だったが11月4日安値からの上昇で9月1日高値に迫って3月以降の上昇基調を維持している。ポンドドルも英国とEUのFTA合意に至らずに上値の重さも見せているものの9月23日安値からの上昇基調を続けている。感染抑制に成功したNZドル米ドルは11月27日に3月以降の最高値を更新、豪ドル米ドルも9月1日高値超えへあと一歩に迫っている。新興国通貨もトルコリラの波乱を除外すれば堅調であり、南アランドやメキシコペソは対ドルでの上昇基調を4月から継続している。ドルは対人民元でも9月3日と5月27日をダブルトップとした下落を続けている。総じてドル安基調であり、3月コロナショック時の一時的なパニックからドル需給は緩んでおり、株高によるリスク選好が投機通貨買い、資源輸出国や新興国への投資意欲を回復させた結果ドル安が進むという状況に入っている。
【ドル円はドル指数の流れと概ね同調】
ドル円は必ずしもドル指数と正相関するものではないが、3月のコロナショック暴落とX字反騰、その後の下落基調は同調しており、株高債券売りで米長期債利回りが上昇する際には株高同調での円安がやや勝ってドル高円安を発生させるが、ドル高円安も長続きせずに戻り高値を切り下げて一段安する展開であり、11月6日に103円台序盤へ急落して3月以降の安値を更新したのはドル円がドル指数よりも先行している。
ドル指数が終値ベースで底割れに至ったことは、ドル円におけるドル売り圧力も継続してゆくものと思われる。11月9日の米ファイザー社ワクチン報道をきっかけにドル円が一時的に急伸したような反応も時々あるとしてもそうした短期的な上昇は戻り売りにつかまり、徐々に直前の安値へ進み、結果的には安値更新へ進むということになりやすい環境だろうと思われる。ならば、ドル指数はすでに3月底を割り込んでいるのだから、ドル円も3月底101.23円を割り込んでも不思議ないと思われる。
【当面のポイント】
11月24日深夜高値からの下落は27日午後安値で一服している印象だが、24日深夜高値を戻り天井とした下落基調がさらに続きやすい状況と考える。
(1)当初、11月27日午後安値103.90円を下値支持線、104.50円を上値抵抗線とする。
(2)27日午後安値割れ回避のうちは104.30円超えから104.50円前後を試す余地があるとみるが、104.50円前後は戻り売りにつかまりやすいとみて、その後に104円を割り込むところからは下げ再開とみる。
(3)27日午後安値割れからは24日深夜高値を起点とした下落継続とみて11月18日深夜安値103.65円試し、さらに底割れなら11月6日安値103.17円試しへ進み、11月6日安値を割り込む場合は102円台中盤(102.75円から102.25円)を目指すとみる。
(4)強気転換は11月24日深夜高値104.75円を上抜く反騰からとし、高値更新へ進めないうちは戻り一巡後の下げ再開を警戒する。(了)<29日15:50執筆>
【当面の主な予定】
11/30(月)
OPEC総会
08:50 (日) 10月 鉱工業生産・速報値 前月比 (9月 3.9%、予想 2.2%)
08:50 (日) 10月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (9月 -9.0%、予想 -4.6%)
08:50 (日) 10月 小売業販売額 前年同月比 (9月 -8.7%、予想 6.3%)
10:00 (中) 11月 国家統計局・製造業PMI (10月 51.4、予想 51.5)
14:00 (日) 10月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (9月 -9.9%、予想 -9.1%)
18:30 (英) 10月 消費者信用残高 (9月 -6億ポンド、予想 0億ポンド)
18:30 (英) 10月 マネーサプライM4 前年同月比 (9月 12.3%)
19:00 (欧) ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、欧州政策センターフォーラム講演
22:00 (独) 11月 消費者物価指数・速報値 前月比 (10月 0.1%、予想 -0.7%)
22:00 (独) 11月 消費者物価指数・速報値 前年同月比 (10月 -0.2%、予想 -0.2%)
23:30 (英) テンレイロ英中銀委員、講演
23:45 (米) 11月 シカゴ購買部協会景況指数 (10月 61.1、予想 59.0)
24:00 (米) 10月 住宅販売保留指数 前月比 (9月 -2.2%、予想 1.0%)
24:00 (米) 10月 住宅販売保留指数 前年同月比 (9月 21.9%)
12/1(火)
休場、フィリピン(ボニファシオの日)、インド(シーク教ナナック生誕日)
OPECプラス会合
06:30 (豪) 11月AiG製造業PMI
08:30 (日) 10月 失業率 (9月 3.0%)
08:30 (日) 10月 有効求人倍率 (9月 1.03)
08:50 (日) 7-9月期 法人統計調査・全産業設備投資額 前年同期比 (4-6月 -11.3%)
09:30 (豪) 7-9月期 経常収支 (4-6月 177億豪ドル)
09:30 (豪) 10月 住宅建設許可件数 前月比 (9月 15.4%)
10:45 (中) 11月 財新製造業PMI (10月 53.6)
12:30 (豪) 豪準備銀行(中央銀行)、政策金利 (現行 0.10%)
17:50 (仏) 11月 製造業PMI改定値 (速報 49.1)
17:55 (独) 11月 製造業PMI改定値 (速報 57.9、予想 57.9)
17:55 (独) 11月 失業者数 前月比 (10月 -3.50万人)
17:55 (独) 11月 失業率 (10月 6.2%)
18:00 (欧) 11月 製造業PMI改定値 (速報 53.6)
18:30 (英) 11月 製造業PMI改定値 (速報 55.2)
19:00 (欧) 11月 消費者物価指数 前年同月比 (10月 -0.3%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価コア指数 前年同月比 (10月 0.2%)
22:30 (加) 7-9月期 GDP 前期比年率 (4-6月 -38.7%)
23:45 (米) 11月 製造業PMI改定値 (速報 56.7)
24:00 (米) 上院銀行委員会・新型コロナ緊急対策四半期報告(ムニューシン米財務長官、パウエルFRB議長)
24:00 (米) 11月 ISM製造業景況指数 (10月 59.3、予想 57.8)
24:00 (米) 10月 建設支出 前月比 (9月 0.3%、予想 0.8%)
26:00 (欧) ラガルドECB総裁、講演
26:00 (米) ブレイナードFRB理事、討論会参加
27:15 (米) デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演
29:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、地域会議での開会挨拶
12/2(水)
08:50 (日) 11月 マネタリーベース 前年同月比 (10月 16.3%)
09:00 (豪) ロウ豪中銀総裁、経済委員会で議会証言
09:30 (豪) 7-9月期 GDP 前期比 (4-6月 -7.0%)
09:30 (豪) 7-9月期 GDP 前年同期比 (4-6月 -6.3%)
14:00 (日) 11月 消費者態度指数・一般世帯 (10月 33.6)
19:00 (欧) 10月 生産者物価指数 前月比 (9月 0.3%)
19:00 (欧) 10月 生産者物価指数 前年同月比 (9月 -2.4%)
19:00 (欧) 10月 失業率 (9月 8.3%)
22:15 (米) 11月 ADP・非農業部門民間雇用者数 前月比 (10月 36.5万人、予想 52.0万人)
23:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
24:00 (米) 下院金融サービス委員会証言 (ムニューシン米財務長官、パウエルFRB議長)
27:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、記者会見
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
12/3(木)
06:45 (NZ) 10月 住宅建設許可件数 前月比 (9月 3.6%)
09:30 (豪) 10月 貿易収支 (9月 56.30億豪ドル)
10:45 (中) 11月 財新サービス業PMI (10月 56.8)
17:50 (仏) 11月 サービス業PMI改定値 (速報 38.0)
17:55 (独) 11月 サービス業PMI改定値 (速報 46.2、予想 46.2)
18:00 (欧) 11月 サービス業PMI改定値 (速報 41.3)
18:30 (英) 11月 サービス業PMI改定値 (速報 45.8)
19:00 (欧) 10月 小売売上高 前月比 (9月 -2.0%)
19:00 (欧) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 2.2%)
22:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 77.8万件)
22:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 607.1万人)
23:45 (米) 11月 サービス業PMI改定値 (速報 57.7)
24:00 (米) 11月 ISM非製造業景況指数 (10月 56.6、予想 56.2)
12/4(金)
09:30 (豪) 10月 小売売上高 前月比 (9月 -1.1%、予想 0.5%)
16:00 (独) 10月 製造業新規受注 前月比 (9月 0.5%)
16:00 (独) 10月 製造業新規受注 前年同月比 (9月 -1.9%)
18:30 (英) テンレイロ英中銀委員、講演
22:30 (米) 10月 貿易収支 (9月 -639億ドル、予想 -650億ドル)
22:30 (米) 11月 雇用統計・非農業部門民間就業者数 前月比 (10月 63.8万人、予想 50.0万人)
22:30 (米) 11月 雇用統計・失業率 (10月 6.9%、予想 6.8%)
22:30 (米) 11月 雇用統計・平均時給 前月比 (10月 0.1%、予想 0.1%)
22:30 (米) 11月 雇用統計・平均時給 前年同月比 (10月 4.5%、予想 4.2%)
23:00 (米) エバンズ・シカゴ連銀総裁、質疑応答セッション参加
24:00 (米) 10月 製造業新規受注 前月比 (9月 1.1%、予想 0.8%)
24:00 (米) ボウマンFRB理事、講演
オーダー/ポジション状況
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