ドル安の流れは今週も継続(週報11月第2週)

先週のドル円は、FOMCを前に追加緩和思惑によるドル売りが広がり、金曜には一時103.18レベルと3月ドル急落時以来のドル安値を見ています。

ドル安の流れは今週も継続(週報11月第2週)

ドル安の流れは今週も継続

〇先週のドル円、金曜一時103.18レベルと3月ドル急落時以来の安値
〇大統領選、トランプの敗北宣言なければ各州の票集計最終確定日12/8まで長引く可能性
〇債券購入による追加緩和で、金利低下による株式市場の上昇、ドル安の流れか
〇日経平均株価が29年ぶりの高値で26000円台後半を目指す流れ
〇海外投資家の日本株買いの動きもドル円での円買い要因になる可能性
〇今週は102.50レベルをサポートに104.00レベルをレジスタンスとする流れ

今週の週間見通し

先週のドル円は米国大統領選の開票速報においてトランプ大統領が善戦しているヘッドラインにドル買いで反応、一時105.35レベルの高値をつけましたが、これは同時刻にユーロドルが170pipsほど急落した動きに追随した動きで、どうも大統領選の開票速報のどさくさに大口で仕掛けた動きに思えました。その後は、大統領選が想定以上の激戦となり結果判明が遅れるという判断となり、FOMCを前に追加緩和思惑によるドル売りが広がり、金曜には一時103.18レベルと3月ドル急落時以来のドル安値を見ています。

先週は米国大統領選、FOMC、米国雇用統計と米国関連の重要イベントが続きましたが、このうち雇用統計は予想以上に強かったもののあまり材料とはなっていません。大統領選は今回も事前予想ではバイデン候補圧勝、下院も民主党圧勝、上院は50:50まで民主が肉薄(同数ならば副大統領が最後の1票で民主優位)といったあたりがコンセンサスであったと思いますが、蓋を開けてみたらトランプ大統領が勝利するのではないかという大接戦を演じました。

今回は遅れて開票が進んだ郵便投票でバイデン候補が着実に追い上げ逆転していく動きがあったことで、事前の世論調査は間違ってはいなかったものの、バイデン圧勝で早期に勝負が決着という流れにはなりませんでした。それどころか、僅差の州では再集計が行われますし、トランプ大統領は法廷での闘争を続けると明言していますので、最終的な決着は先延ばしということとなります。

20年前の2000年の大統領選ではフロリダ州の集計を巡って最終的には最高裁による判決で勝者が確定したのは12月12日でした。今回は当時ほどの僅差では無いため、再集計してトランプ大統領が逆転勝利となる可能性は限りなく低いのですが、それでも法廷に持ち込まれた場合は確定とはなりません。今年の場合は、各州による票集計最終確定日が12月8日(選挙人集会12月14日の6日前)となっていますので、トランプ大統領が敗北宣言しなければそれまで長引く可能性はあり得ます。

また、郵便投票の結果で確定したことからトランプ大統領は郵便投票自体の問題や不正も取り上げているようですが、たしかに不審な点はあるもののそれを12月8日までに証明するのは無理でしょう。そのため、一部では選挙人集会まで確定させず州議会で共和党が優位なことを利用して別の選挙人を選ぶ可能性も取りざたされていますが、さすがにそんなことをしたら大統領選挙の意味が無くなりますし、その後の米国がどうなるのか想像もつきません。各所で激しい抗議行動が起きるのは目に見えていますので、個人的にはそこまではしないだろうと見ています。

トランプ大統領が勝つ可能性があるとしたら、何らかの不正が実際に見つかることでしょうが、米国でそんなことが起こりうるのかと考えると、まず無いだろうとしか思えません。それではどこかの発展途上国における選挙と変わらなくなってしまいますので、冷静に考えるとバイデン新大統領の確定が1か月遅れるのみで終わるのではないかと思います。

そうなると、政治的には来年の1月20日まではトランプ大統領によるこれまでの政治が続くこととなりますし、新型コロナの対応が目の前の最大課題であることを考えるとバイデン新大統領後の増税公約は先送りとなり、政治要因による相場の影響はまだかなり先のテーマであって現在どうこう言うものでは無いと言えます。

今は12月17日にも債券購入プログラムの強化などの追加緩和策を決定する可能性が高い金融政策が改めて市場のテーマになって来ています。債券購入による追加緩和は金利低下による株式市場の上昇、そして為替市場では素直にドル安という見方につながっています。当面は米国株高下によるドル安の流れという動きがもっとも可能性が高いシナリオということになってくるでしょう。

そして、週報に先立って日経平均株価が29年ぶりの高値をつけていることから日経平均の動きを振り返っていますが、こちらもテクニカルには26000円台後半を目指す流れにあると考えられ、海外投資家からこれまで出遅れていた日本株買いが入る動きもドル円での円買い要因と言われることとなりそうです。

テクニカルには日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

レジスタンスライン(ピンクの太線)からは更に離れてきましたがドル安トレンド続いていることは明確で、先週の安値は直近の逆N波動(8月下旬の高値を起点に9月安値までの下げ、その後の10月高値の戻しを3点)による100%エクスパンション、年初来安値とその後の高値の78.6%(61.8%の平方根)押しとほぼ重なり短期的にはいったん安値を見たと考えることもできます。

しかし、9月、10月と抜けられなかった104円を下抜いてきたことから、もう一段の下げを考える向きも多く、ある程度下がるところまで下がらないと反発は期待できそうもありません。次のターゲットとしては逆N波動の127.2%(161.8%の平方根)エクスパンションとなる102円台前半となります。

今週は一気にそこまで行くとは思えませんが、下げる時はドル円は速いですから当面の下値のターゲットとして考えておきたい水準です。今週も引き続き上値の重たい展開が継続すると考え、102.50レベルをサポートに104.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2020年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、クリーブランド、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

11月9日(月)
08:50 日銀会合主な意見公表
16:00 ドイツ9月貿易収支
17:00 フィンランド中銀総裁講演
18:25 ラガルドECB総裁講演
19:35 英中銀総裁講演
21:00 メルシュECB理事講演
27:30 クリーブランド連銀総裁講演

11月10日(火)
08:50 本邦9月貿易収支(国際収支)
09:01 英国10月小売売上高
09:30 豪州10月企業景況感
10:30 中国10月CPI・PPI
16:00 英国10月失業率
16:00 トルコ8月失業率
16:45 フランス9月鉱工業生産
19:00 ドイツ11月ZEW景況感指数
19:00 ユーロ圏11月景況感指数
23:00 オランダ中銀総裁講演
24:00 クオールズFRB副議長議会証言
24:00 ダラス連銀総裁講演

11月11日(水)
**:** 米国市場休場
08:30 豪州11月消費者信頼感
10:00 NZ中銀政策金利発表
11:00 NZ中銀総裁会見
16:00 トルコ9月経常収支
22:00 ラガルドECB総裁講演

11月12日(木)
09:01 英国10月住宅価格
16:00 英国7〜9月期GDP速報値
16:00 英国9月貿易収支、鉱工業生産
16:00 ドイツ10月CPI
19:00 ユーロ圏9月鉱工業生産
22:30 米国新規失業保険申請数
22:30 米国10月CPI
25:00 週間原油在庫統計
25:45 パウエルFRB議長・ラガルドECB総裁・ 英中銀総裁講演
27:00 (シカゴ連銀総裁講演)

11月13日(金)
16:00 ドイツ10月PPI
16:00 トルコ9月鉱工業生産
16:45 フランス10月CPI
19:00 ユーロ圏7〜9月期GDP改定値
19:00 ユーロ圏9月貿易収支
19:00 ドイツ連銀総裁講演
22:30 米国10月PPI
22:30 (セントルイス連銀総裁講演)
24:00 米国11月ミシガン大消費者信頼感速報値

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

11月2日(月)
週明けのドル円は金曜海外市場のドル買い戻しの動きを継続しドル買いが先行しました。欧州市場では一時104.95レベルと105円の大台に迫ったもののトライしきれずに反落、いったん東京朝方の水準へと押したもののNY市場では再び買い戻しが入り底堅い印象が続きました。

11月3日(火)
東京が休場となった3日は米国大統領選を前に金曜からのドル買いに対する調整が入りました。104円台後半を中心として値幅は狭かったものの上下しながらもユーロ買いに引っ張られ104円台半ばまで水準を下げて引けました。

11月4日(水)
米国大統領選の開票速報でトランプ大統領が事前予想に反して善戦しているヘッドラインに東京前場はドル買いで反応し105.35レベルの高値をつけましたが、ニュースに反応したというよりもユーロドルで誰かが仕掛けた動きから来た動きと感じられました。その後の欧州市場では引き続きトランプ大統領がリードする展開となっていたものの為替市場は東京前場の動きに対する調整が続いていました。

11月5日(木)
ドル円は欧州市場までは上値は重たいもののもみあいを続けていました。ユーロドルが急騰する動きに遅れてドル円にもドル売りの動きが強まり、前日安値を下回るとストップオーダーも巻き込みながら一段安。FOMCを前に追加緩和思惑によるドル売りが目立ちましたが、FOMCでは将来の追加緩和の可能性が示唆され、FOMC後に103.43レベルまで下げ安値引けとなりました。

11月6日(金)
ドル円は前日からのドルの上値の重たい流れが続き欧州市場ではユーロ高の動きとともに一時103.18レベルの安値をつけました。NY市場に入り発表された米国雇用統計がNFP、失業率ともに予想より良かったことを受けて103.72レベルの戻り高値をつけたものの東京前場高値は抜けられず、引けにかけてはドル売り再開となり安値圏での引けとなりました。

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