ユーロドル急反発するもここからの上昇は限定的か
〇先週のユーロは1.17台後半までじり高となるも米大統領選の影響で1.16台前半へ割り込む展開に
〇FOMC自体は現状維持だったが12月の追加緩和の可能性もあり株式市場は株高、為替市場はドル安の動き
〇当面は米国の政治材料より金融政策に目が向かいやすい状況か
〇通商協議は合意に近づきつつも双方に溝がある状態、合意に至らない展開に警戒
〇今週のユーロドルは1.1780レベルをサポートに1.1920レベルをレジスタンスとする流れ
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロは、週初に底固めをした後に米国大統領選を経て1.17台後半までじり高の展開となりましたが、選挙の開票速報で市場参加者が警戒する中で大口の売りにより一気に1.16台前半へと月曜安値を割り込む展開となりました。後から振り返ると、この上昇後の急落がその後のユーロ買いを加速させた大きな要因になったと見られますが、FOMCでの追加緩和思惑による全体的なドル売りの動きがユーロドルで特に目立つ展開になりました。FOMC自体は現状維持であったものの先のECB理事会と同様に12月の追加緩和の可能性を含んだ発言と見られ、株式市場は株高、為替市場はドル安という動きになっています。
また注目の米国大統領選は郵便投票がダメ押しでバイデン候補の勝利が確実となっていますが、トランプ大統領が法廷闘争を辞さない構えを示していることから、最終的な勝者確定にはまだ時間がかかりそうです。詳細はドル円週報に書きましたので、そちらを見ていただくとして、当面は米国の政治材料よりは金融政策に目が向かいやすい状況が続きそうです。また欧州材料としては引き続き新型コロナの感染者増が続く中で、各国のロックダウンが予定通りに終わるのかどうかは気になるところです。
そして、ブレグジット後の通商協議は7日に電話会議が行われ、本日はロンドンで継続協議となっていますが、合意には近づきつつあるものの依然として双方に溝があり、合意後の批准手続き等の時間を考えると今週末から来週初めには合意に至らないと、1月にいったん関税復活という事態に陥ります。今週は協議のヤマ場と考えられますので、本日からのロンドンでの協議を含めて、合意なのか結局合意できないのかユーロとポンドにとっては大きな材料になることは間違いありません。これまでの展開を考えるとギリギリで合意となる可能性が高そうですが、7日協議におけるEU側からの発言は決して楽観的とは言えず、合意に至らない展開には警戒しておく必要があります。
材料的には米国だけでなく欧州も追加緩和の流れですから、株式市場は欧州株にとっても好材料で、この部分はユーロ買い材料。いっぽう主要国で続くロックダウンによる景気悪化懸念はユーロ売り材料。EUと英国との協議はどちらにもなりうるのでユーロにとっては現状ニュートラルですが、先週ユーロ高で動いてきたことから合意に至らずユーロ売りという流れにより注意が必要と言えます。
テクニカルにはどうでしょうか。日足チャートをご覧ください。
テクニカルにも混乱してきた感があります。特に11月に入ってからの9月安値下抜け失敗、その後の10月高値上抜けと先週の動きが更に方向感を失わせる動きとなっています。現時点での個人的な見方ですが、ピンクの水平線で示した9月中旬高値と先週安値の中で横方向のもみあいとなっていて、ピンクの点線で示した半値がニュートラルな水準とも思えます。
そうであるとすれば、現状はやや買われすぎている水準ですが、上限を超えるような動きになってくると上記のシナリオも放棄せざるを得ません。先週はユーロの下げを見ていて、まだこの一週間のユーロ高の動きが本流であるかどうか見極め出来ないでいるのですが、当面は上限、下限を超えない限りにおいてレンジ相場は抜けていないと見たいところです。
今週はユーロが対ドル、対円で上値に限界があるという見方をして、1.1780レベルをサポートに1.1920レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
今週のコラム
先週はユーロドルもユーロ円も大きく方向性を見誤ったので、コラムでもユーロ円の日足チャートを見ます。
ユーロ円も三角もちあいを下抜けたものの先週のユーロ高の動きで反転上昇となっていることがわかります。全体的なドル安の動きの中でドル円以上にユーロドルの上昇が強かったことがわかるチャートですが、ユーロドル同様にユーロ円も上昇が本流とは見ていません。現状は10月後半高値と10月末安値との半値戻しとなる123円台前半が10月中旬の安値とも重なり戻りの限界点となる動きを想定しています。
一つのシナリオとして、ユーロドルの上値が重くなる中でドル円での円高が進行することでユーロ円も下げにつながるという動きを考えていますがどうなるか、ユーロドルがレンジを上抜けてくる時にはユーロ円の見通しも修正せざるをえませんが、ユーロドルの動きは難しくなってきました。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
11月9日(月)
16:00 ドイツ9月貿易収支
17:00 フィンランド中銀総裁講演
18:25 ラガルドECB総裁講演
19:35 英中銀総裁講演
21:00 メルシュECB理事講演
11月10日(火)
09:01 英国10月小売売上高
16:00 英国10月失業率
16:45 フランス9月鉱工業生産
19:00 ドイツ11月ZEW景況感指数
19:00 ユーロ圏11月景況感指数
23:00 オランダ中銀総裁講演
11月11日(水)
**:** 米国市場休場
22:00 ラガルドECB総裁講演
11月12日(木)
09:01 英国10月住宅価格
16:00 英国7〜9月期GDP速報値
16:00 英国9月貿易収支、鉱工業生産
16:00 ドイツ10月CPI
19:00 ユーロ圏9月鉱工業生産
25:45 パウエルFRB議長・ラガルドECB総裁・英中銀総裁講演
11月13日(金)
16:00 ドイツ10月PPI
16:45 フランス10月CPI
19:00 ユーロ圏7〜9月期GDP改定値
19:00 ユーロ圏9月貿易収支
19:00 ドイツ連銀総裁講演
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
11月2日(月)
ユーロドルは終日安値圏でのもみあい、一日の値幅も30pips強と動意薄の展開が続きました。しかし、ドル円でドルが底堅かったのと同様ユーロドルは上値が重たい印象が続きました。
11月3日(火)
ユーロドルはユーロ買い戻しが目立つ一日となりました。欧州時間以降は特に欧州株の上昇を好感したユーロ買いが強まり、NYの昼前には1.1739レベルへと上昇、引けにかけては1.17近辺へと押しが入って引けました。
11月4日(水)
ユーロドルは東京朝方にはユーロ買いが先行し1.1770レベルまで上昇していたところから一気に1.1602レベルへと170pips近い急落を演じました。これはトランプ大統領が善戦しているとの選挙速報よりも、選挙後の値動きの混乱を狙った大口の仕掛けが出たと見る方が自然で、結局のところNY市場では前日NY終値の水準へと戻して引けました。
11月5日(木)
ユーロドルは欧州市場に入り欧州株高によるユーロ買いをきっかけに前日高値を上抜けると一気に1.18台乗せ。その後もユーロ買いが続く大幅高の展開となりました。NYの朝方には1.1859レベルの高値をつけ、その後やや押した後にFOMC後は再びドル売り(ユーロ買い)と上下しながらも1.18台前半と半ばそれぞれにオーダーが出ている動きでの引けとなりました。
11月6日(金)
ユーロドルは前日からのユーロが底堅い動きを続けていましたが、前日高値を上抜けるとテクニカルな買いも加わって1.1890レベルの高値をつけました。NY市場では雇用統計後に若干の押しも見られましたが、ドルが全体にドル安となっていることもあって、底堅いまま高値圏での週末クローズとなりました。
ディスクレーマー
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オーダー/ポジション状況
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