トルコリラ円見通し 最安値更新止まらず、トルコ中銀総裁更迭も逆効果か(20/11/9)

トルコリラ円は、6日夜に3日深夜安値を割り込んで持ち合いを下放れて一段安に入り、6日深夜には11.99円まで史上最安値を更新した。

トルコリラ円見通し 最安値更新止まらず、トルコ中銀総裁更迭も逆効果か(20/11/9)

最安値更新止まらず、トルコ中銀総裁更迭も逆効果か

〇トルコリラ円、6日深夜に11.99で史上最安値更新
〇対ドルでは6日夜に8.57まで最安値を更新、一段安に入る
〇11/7にトルコ中銀のウイサル総裁更迭、利上げ姿勢後退でさらに安値試しへ向かう可能性
〇フラッシュ・クラッシュを超えるパニック的な売りを誘う可能性に警戒
〇下値目途は市場としては未踏領域のため過去に付けた安値等の目安がない状況
〇概ね0.20刻みで安値更新が続いているため、安値更新後は11.80、11.60と下値目途切り下げか
〇9日朝高値12.32を超える場合は12.40前後へ戻り抵抗ラインをいったん切り上げ

【概況】

トルコリラ円は11月3日深夜に12.21円まで下げた後は4日午後高値12.47円まで戻しつつ下げ渋りの三角持ち合いとなっていたが、6日夜に3日深夜安値を割り込んで持ち合いを下放れて一段安に入り、6日深夜には11.99円まで史上最安値を更新した。ベンダーによっては12円割れには至らずに12.04円から12.11円前後までの下げとなっている。
対ドルでのトルコリラは11月3日深夜に8.53リラまで史上最安値を更新した後は為替市場全般のドル安もあって新たな安値更新を回避していたが、6日夜には8.57リラまで最安値を更新する一段安に入った。
11月7日にはトルコ中銀のウイサル総裁の更迭が報じられており、トルコ金融政策の混迷、リラ防衛への利上げ姿勢の後退としてさらに安値試しへ向かう可能性が懸念される。

11月9日朝の取引再開ではトルコリラ円が12.32円(ベンダーによっては12.30円弱)まで反騰して始まったが早々に失速気味となっている。中銀総裁更迭報道での先行き不透明感から利益確定の買い戻しが入った動きと思われる。対ドルでのトルコリラも9日朝に8.33リラまで反発して始まったがこれも早々に失速気味となっている。エルドアン大統領による中銀総裁更迭というサプライズに続いてさらに市場を刺激する動きをとるのか気になるところではある。

【トルコ中銀総裁更迭】

トルコのエルドアン大統領はトルコ中央銀行のウイサル総裁を更迭し、後任にアーバル前財務相を充てたと英紙フィナンシャル・タイムズが6日に報じた。7日付けのトルコの官報で確認された。ウイサル総裁が9月に利上げへ踏み切ったことを不満として更迭したと思われる。エルドアン大統領は2019年7月に当時のチェティンカヤ総裁が利下げを渋ったことから更迭して副総裁のウイサル氏に替え、ウイサル氏が総裁となってからは9会合連続で利下げを実施、2019年6月の24%から2020年5月には8.25%まで引き下げてきた。5月から8月までは3会合連続で利下げを見送り、リラ安が深刻化する中で9月24日には市場予想の現状維持に反して10.25%へと大幅な利上げを決断した。しかし10月22日の前回会合では利上げ継続予想に反して利上げを見送ったためにリラの一段安を招き、その後は連日の史上最安値更新に陥った。

エルドアン大統領としては、物価安定に失敗し自らが求める政策金利一桁台を守れなかったことの責任を中銀総裁に押し付けた格好だが、政権による経済財政政策や外交政策の失敗がリラ売りを招き、現実と乖離した利下げの強行がリラ安を助長し、輸入物価上昇と国内物価上昇により物価上昇率が政策金利を上回る実質マイナス金利状態で事態がさらに悪化、無理なリラ防衛介入がさらに外貨準備高不足を招く悪循環に陥っているのであり、中銀総裁更迭は利上げによるリラ防衛姿勢が後退したことを示して市場にとっては一層のリラ先安感を強めるものとなりかねないと思われる。

【トルコリラ円、週足では16週連続の陰線で下落】

トルコルラ円は11月4日を除き、連日の史上最安値更新であり、底打ちの接近感、下げ止まり感を持てない状況が続いている。週間足では16週連続の陰線で10月25日の週に前週比4.6%安、11月1日の週に同3.3%安と大幅下落となっている。
対ドルでのトルコリラは8月30日の週から10週連続の下落であり、10月25日の週に前週比4.8%安、11月1日の週に同2.1%安と大幅下落が続いている。週足の陰線の連続は11週となった。
気を付けたいのは、2018年8月の通貨危機では当時の史上最安値を付ける前週に週の安値6.87リラから同高値5.07リラまで26%も暴落した経験だ。トルコリラ円でも同週では週の高値21.84円から安値15.81円まで27%の下落率となっている。2018年8月暴落は大暴落週の翌週から反騰入りしているが、セリング・クライマックス的な投げ売りの殺到が発生すると、時々発生するようなフラッシュ・クラッシュの下落レベルを超える可能性があるということだ。そうしたパニック的な売りを誘う可能性も常に抱えた状況に入ると警戒したい。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

11月6日深夜安値の後は下げ渋って先週を終えているが、その後の中銀総裁更迭報道であり、11月9日の取引再開からの急落も警戒される。

(1)既に史上最安値の更新状態にあるため下値目途は市場としては未踏の領域となるので過去に付けた安値等の目安がない状況だ。10月27日夜安値12.66円から10月29日安値12.47円までの下げ幅が0.19円、11月3日深夜安値12.21円までが0.26円、11月6日深夜安値11.99円までが0.22円安と、概ね0.20円刻みでの安値更新が続いている。このため、安値更新からは11.80円、11.60円、11.40円と0.20円刻みで下値目途を切り下げてゆく必要があると思われる。

(2)11月3日深夜安値12.21円から4日高値12.47円まで0.26円の上昇幅だったがその後一段安している。9日朝の反発では6日深夜安値から0.33円高の戻りが入ったがその後は反落気味となっているので短期的な戻りに過ぎない可能性がある。このため9日朝高値12.32円を超えないうちは下げ再開からの一段安警戒とするが、9日朝高値を超える場合は12.40円前後へ戻り抵抗ラインをいったん切り上げ、その後の13.25円割れから下げ再開に向かうとみる。

(3)トルコリラ売り要因は外貨準備高不足、経常収支悪化と感染拡大による観光収入の激減、リラ防衛への無策と実質マイナス金利状態の放置、それらに加えての多々ある地政学的リスクであり、米大統領選挙に関してはエルドアン大統領を独裁者呼ばわりしたバイデン政権になればトルコと米国の関係悪化懸念も加わっている。それらの材料が一挙にクリアできるはずもないが、とにかく利上げないしは金融引き締めによるリラ防衛を決断しないことにはリラ安とインフレにより通貨危機的状況に陥る可能性があると懸念する。

【当面の主な経済指標等の予定】

11月10日
 16:00 8月失業率 (7月 13.4%、予想 13.8%)
11月11日
 16:00 9月経常収支 (8月 -46.3億ドル)
11月12日
 20:30 週次外貨準備高 11/6時点 (10/30 422.6憶ドル)
11月13日
 16:00 9月鉱工業生産 前年比 (8月 10.4%、予想 7.2%)
 16:00 9月小売売上高 前年比 (8月 5.8%、予想 3.6%)

11月19日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 10.25%、予想 12.0%) 
 20:30 週次外貨準備高 11/13時点
11月20日
 16:00 11月消費者信頼感 (10月 81.9)
11月23日
 17:00 10月観光客数 前年比 (9月 -59.4%)
11月24日
 16:00 11月製造業景況感 (10月 108.1)

注:ポイント要約は編集部

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