緩やかな下降トレンドを続けやすい(週報10月第3週)

今週は上記の下降ウェッジの中で上値の重たい展開を考え、1.1620レベルをサポートに、1.1790レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

緩やかな下降トレンドを続けやすい(週報10月第3週)

緩やかな下降トレンドを続けやすい

〇先週のユーロは週初から週末まで下降トレンドを継続
〇英国のEUからの合意無き離脱の可能性が高く、オーストラリア方式になりそうな印象
〇新型コロナ第二波は深刻なレベル、フランスや英国でもロックダウンの検討段階へ
〇今週にECB総裁と英中銀総裁の講演もある為、第二波についての言及もあるか
〇今週は1.1620レベルをサポートに1.1790レベルをレジスタンスとする流れ

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロは上下しながらも週初から週末まで下降トレンドを継続したと言えますが、その最大の要因は16日のEUサミット前日15日を英国が協議期限と定め、その期限を前に何ら協議に前進が無かったという点です。そしてもうひとつは欧州における新型コロナ感染者が急増し第二波となっていることから、一部の国で部分的なロックダウンが行われているという点です。

前者については4年前の国民投票から続いている話とも言え、あまり目新しさは無いのですが、いよいよブレグジット移行期間も年末に終わることで、合意無き離脱が現実のものとなってきたことがポンドとユーロの売り材料となっています。金曜のジョンソン首相の発言も相変わらずの強気発言でしたが、協議自体は今週も続くこと、それを前に週末に改めて合意無き離脱の可能性を繰り返すと、他に戦略が無いのかというほど同じ戦略でEUからの譲歩を探っています。

さすがにEUも譲歩する姿勢は見せていませんので、これまでもこれからも合意に辿り着かない可能性が高く、英国が言うオーストラリア方式になりそうな印象です、これは離脱後の英国とEUとの関係でよく出てくるカナダ方式、オーストラリア方式のことで、カナダ方式は包括的な自由貿易協定、オーストラリア方式は自由貿易協定が無くWTOの一般ルールを適用するものの貿易障壁を低くするための合意は存在するといったものです。

現状はこのオーストラリア方式に着実に近づいていると言えますので、今までのような自由な貿易が行われないという点で英国にもEUにもマイナス、ただEUとオーストラリアがそれで困っているわけでも無いことを考えると、当初はオーストラリア方式でスタートし、やはり英国とEUとの貿易量の多さを考慮して、部分合意を積み重ねていくという流れになるのかもしれません。

ただ、こうなると今までとの比較ということになってきますので、英国にとってもEUにとっても悪材料で結果的に欧州通貨安につながりやすそうですが、実際に結論が見えるまでは思惑相場が続きやすいと言えます。

そして新型コロナの第二波ですが、こちらは思いのほか深刻です。スペイン、フランス、英国では1日あたりの感染者数が過去最大を記録し、夏と比べると感染者数が約3倍程度と急増し、まだロックダウンはチェコとオランダ、そしてスペインのマドリッドの一部に限られていますが、フランスや英国でも既に検討段階に入っていることから、現状よりも更に感染者が増えることになれば、何らかの部分的なロックダウンが行われる可能性が高い状況です。

これまで金融緩和と財政出動で景気回復を目指してきた欧州にとってこの最近の動きは景気回復に対する懸念を強める以外の何物でもありませんので、延々と続いているEUと英国との協議以上に短期的な悪材料としては影響が大きいと言えそうです。今週はECB総裁と英中銀総裁の講演もありますので、第二波について何らかの言及があるかどうかは気になるところです。

材料面では悪材料のほうが目立っていますが、テクニカルにはどうでしょうか。日足チャートをご覧ください。

緩やかな下降トレンドを続けやすい

テクニカルには、上値は9月高値と10月高値を結んだレジスタンスライン、下値は9月安値からの水平線という見方で良いでしょう。現状はレジスタンスラインが1.1790レベルを下降中、水平線は1.1612です。

今週は上記の下降ウェッジの中で上値の重たい展開を考え、1.1620レベルをサポートに、1.1790レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週のコラム

短期的な影響よりも少し長めの影響を考えると、ユーロもポンドも売られる可能性を考えなくてはなりませんが、そうなるとドルを買えるのか、あるいは円を買えるのかと考え始めると悩ましい面があります。

ただ、同じ欧州通貨の中でも他国に比べて中立的なイメージのスイスフランを対価にしたユーロスイスでのユーロ売り、ポンドスイスでのポンド売りはどうかと考えます。新型コロナの第二波はスイスでも似たような状況ですから、その点は同一条件として今回はユーロスイスの日足チャートを見てみましょう。

緩やかな下降トレンドを続けやすい 2枚目の画像

チャートを見ての通りですが、7月に上昇して以降は横方向へのもみあいを続け、1.17(ピンクの水平線)がサポートとなっていましたが、先週その水準を下抜ける動きを見せました。買い戻しも出てはいるもののネックラインを下抜けたチャートと考えるともう一段の下値を探りに行く可能性もありそうです。

今後はユーロスイスのチャートももう少し頻度を上げて見ていくこととしましょう。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

10月19日(月)
08:01 英国10月住宅価格
18:00 ユーロ圏8月建設支出
21:45 ラガルドECB総裁講演

10月20日(火)
15:00 ドイツ9月PPI
17:00 ユーロ圏8月経常収支

10月21日(水)
15:00 英国9月CPI・PPI
27:00 ベージュブック

10月22日(木)
15:00 ドイツ11月GFK消費者信頼感
15:45 フランス10月企業景況感
18:25 英中銀総裁講演
23:00 ユーロ圏10月消費者信頼感速報値

10月23日(金)
08:01 英国10月GFK消費者信頼感
10:00 大統領選TV討論会
15:00 英国9月小売売上高
16:15 フランス10月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ10月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏10月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 英国10月製造業・サービス業PMI速報値

10月25日(日)
**:** 欧州冬時間移行

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

10月12日(月)
ユーロドルはユーロ円がドル円同様に円の動きが目立ったことから、東京市場では動かず、欧州市場序盤にいったん押しは入ったものの買い戻されと、1日のレンジは40ポイントに留まりました。ユーロ円は週明け早朝には125円台でしたが、NY市場でドル円の下げとともに124.29レベルの安値をつけました。

10月13日(火)
ユーロドルはNY市場まではドル円同様に緩やかなドル買いユーロ売りの動きとなっていましたが、英国が定めた15日の協議期限を前に英国が合意なき離脱の準備があると述べ、EU側も協議に何の進展もなくこのままでは合意なき離脱の可能性が高いとしたことからポンドが値を崩し、それとともにユーロにも売りが広がりました。NY昼過ぎには1.1731レベルまで売られ安値圏でのもみあいのまま引けました。

10月14日(水)
ユーロドルは東京市場では動かず、欧州市場序盤に協議期限が迫っていることから売りが先行していましたが、英国側が協議継続につながる発言をしたことをきっかけにポンドが上昇、ユーロにも買い戻しが入りました。ただ、進展自体は無いため、協議がEUサミット後に持ち越しとなるだけで週末前の合意の可能性は少ないという見方がコンセンサスとなっていました。

10月15日(木)
ユーロドルはEUサミットに向けての不透明感と新型コロナの第二波感染拡大がきっかけとなり欧州市場に入り下げを拡大。前日安値を下抜けその後も上値の重たい展開が続いていましたが1.17割れでは買い戻しも出ていました。EUサミット、ジョンソン首相による今後の協議についての発言を確認するまでは積極的に売り込む動きも見られませんでした。

10月16日(金)
ユーロドルは欧州市場まではジョンソン英首相の発言とEUサミット待ちで動かず、NY市場前には株高の動きによるユーロ円の上昇がユーロドルでも買いの動きとなったこと、またジョンソン首相の発言は表面的には合意なき離脱も厭わないとは言っている一方で協議は継続されることから、いつもの強気発言と取られました。ポンドは週末前のポジション調整も重なって上下に振れたものの、最終的に底堅い動きとなったことから、ユーロドルも底堅い動きになりました。

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