ポンド未来予想図
ポンドに関しては未だ先が見えない状態
ブレグジット直後の世界的な金融市場の混乱もいったんは落ち着いたかに見えますが、昨日のNY市場ではポンドが安値を更新しています。月曜の週報のタイトルには、終わりの始まりという言葉を使いましたが、少なくともポンドに関しては先が見えない状態にあるとしか言いようがありません。
1992年ポンド危機の例
こういう時には過去の相場に聞くのが一番ですが、ブレグジットのレポートでも取り上げた1992年にポンド危機を振り返ってみましょう。まずは、ポンド危機の概要から。時のサッチャー首相がERM*への加盟には反対だったにもかかわらず、英国は1990年に加盟することとなりました。
*ERM=European Rate Mechanism、通貨間の変動幅を±2.25%に抑える管理変動相場制度
しかし、ERM加盟の弊害により急激に景気が悪化、1992年9月からポンドは投機筋から売り浴びせられ、特にジョージ・ソロスの巨額なポンド売りにより9月15日にはERMの定めた変動幅を下回り、翌16日には英中銀が利上げに加え大規模な介入をしたにもかかわらず、17日にはERMを離脱することとなったのです。
下の日足チャートは1992年のポンド危機と今回のブレグジットの比較ですが、黄色のラインマーカーの3日間が1992年9月15〜17日にあたります。この間の値幅は、高値1.9100、安値1.7280と下落幅は1820ポイント、9.5%に達したことは先のレポートでも示した通りです。
GBP/USD日足 ポンド危機とブレグジットの比較
今回の今後の動きをポンド危機で占う
今回のブレグジットでは、当日高値1.5002、同安値1.3231でしたから、下落幅1771ポイント、率にすると11.8%にも達します。さて、この先どこに向かうのか先が見えないとは書きましたが、1992年のポンド危機から可能な限りの憶測を立ててみます。
1.3231→1.2879→1.3819→1.1444 !!?
1992年9月17日にERMを離脱後、9月23日には安値1.6820を付けました。17日安値から更に460ポイントの下落、2.7%の下落となります。今回の24日安値1.3231にこれをあてはめると、1.2879というレートが出てきます。短期的な安値として1.28台後半をターゲット視する可能性はいかにもありそうです。
その後1992年9月30日にはいったん短期筋の買い戻しが入り、1.8040レベルまで戻しました。9月23日安値の1.6820から1220ポイント、7.3%もの上昇です。先ほどの仮定レート1.2879に当てはめるならば、1.3819と現在の水準から考えても難しそうな水準ですが、相場は急騰、急落時にはしばしばオーバーシュート(行き過ぎ)するものですから注意するに越したことはありません。
そして、1992年12月25日東京市場で1.4940の安値まで、戻し高値から3100ポイント!17.2%もの更なる下落を演じることとなったのです。これも上記1.3819にあてはめると、なんと1.1444というとんでもないレートとなります。
ポンド危機の際の値動きを参考に心の準備を
もちろん過去と今とは状況が異なりますし、参加者も違います。しかし、人間の心理というのは思いのほか変わるものではありません。ポンド危機の際の値動きは参考にしておくべきです。もう一度まとめておきます。
今回のブレグジットを1992年のポンド危機にあてはめるとするならば、当面の安値は1.28台後半。その後、短期ショート筋のカバーで大きな揺り戻しが来て1.38水準への買い戻し、そして数か月という時間枠で考えた場合の安値は1.14台半ばとなります。
上記のような過去の経験に基づいた未来予想図をベースに、実際の動きを重ね合わせた上で、フィボナッチによる値幅観測を加え今後のポンドの値動きのシナリオを立てる、というのが私のスタイルです。ぴったり当たらなくても、それなりに心の準備ができるメリットは大きいと言えます。
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