トルコリラ円見通し トルコ中銀の大幅利上げの上昇を打ち消す隣国の大規模軍事衝突(20/9/29)

週明けの9月28日朝にトルコリラ円は13.28円まで急落した。直後には13.70円台まで戻したが、その後は再び下落基調に入り、28日夜には13.43円まで下落した。

トルコリラ円見通し トルコ中銀の大幅利上げの上昇を打ち消す隣国の大規模軍事衝突(20/9/29)

トルコリラ円見通し トルコ中銀の大幅利上げの上昇を打ち消す隣国の大規模軍事衝突

〇トルコリラ円、9/28朝に13.28まで急落、その後13.70台まで戻したが再び夜には13.43まで下落
〇アゼルバイジャンとアルメニアの大規模軍事衝突、地政学的に入り組んでおり今後の展開注視
〇トルコリラ、対ドル・対ユーロでも史上最安値更新、地政学的リスク影響か
〇13.70以下での推移中は一段安警戒、13.40割れからは13.30、13.20を段階的に試す流れとみる
〇13.60から13.70手前にかけては反落注意、反騰入りには13.70を超えて続伸する必要ありと考える

【概況】

トルコリラ円は9月24日夜にトルコ中銀が予想外の大幅利上げに踏み切ったことから直前安値13.58円から13.93円まで急伸した。当初の買い一巡でいったん13.80円を挟んだ揉み合いに入ったが25日夕刻には14.01円まで一段高となり、9月17日以来の14円台到達となったが、その後はサプライズ利上げによる買い材料一巡として失速して25日夜には13.71円まで下落、25日の日足は長い上ヒゲを付けた陰線に終わり、終値ベースでは前日比マイナス0.04円安で先週を終えた。週足でも前週終値の13.77円から13.75円へ続落となり、7月後半から10週連続の週足陰線による下落だった。
週明けの9月28日朝にトルコリラ円は13.28円まで急落した。直後には13.70円台まで戻したが、その後は再び下落基調に入り、28日夜には13.43円まで下落した。28日早朝の安値はベンダーによっては13.40円台前半までの下げだったが、その後の下落により安値更新となっているところもある。

【アゼルバイジャンとアルメニアの大規模軍事衝突】

9月28日朝の一時的急落といったん戻した後の28日夜への下落再開は、トルコと国境を接するアゼルバイジャンとアルメニアの旧ソ連領域での大規模軍事衝突による地政学的リスクが一挙に高まったためと思われる。衝突は現地9月27日の6時頃であり、ヘリコプター4機の撃墜等と死者23人等の報道があったが、その後も衝突が続いており死者も大幅に増加しているようだ。
衝突が起きたのは、ナゴルノカラバフ自治州周辺のアゼルバイジャン領であるが、アルメニア人が多く住んでおりアルメニアが実効支配している。このため両国には領有権を巡る対立がある。
軍事衝突した両国は南コーカサスにあり、カスピ海原油や天然ガスを欧州へ運ぶパイプラインがある。アゼルバイジャンは産油国であり首都はバクー油田で有名なバクーである。アルメニアはエネルギー産出国ではない。
トルコのエルドアン大統領はアゼルバイジャンを支持しているが、アゼルバイジャンはトルコ系住民が大多数を占め、トルコとの関係は兄弟民族の様に深い。

アルメニアはロシアが支持と支援を行っている。またフランスもアルメニアを支持しているが、フランス国内にはアルメニア系住民の大規模コミュニティーがある。
アルメニアはオスマン帝国時代にトルコによるアルメニア人大虐殺の因縁がありトルコとの関係は劣悪とされるが、シリアはアルメニアと友好関係にある。
シリア人権監視団によると、トルコが支援するシリア人傭兵300人以上がアゼルバイジャンに到着しているという。
当面は事態の成り行きを見定める必要があるが、地政学的にはかなり入り組んだ関係諸国が集まっており、トルコ、シリア、ロシア、フランス、イラン等の出方及び世界の警察官的な米国のスタンスがどうなるのかも今後の進展次第というところか。

【トルコリラは対ドルでの史上最安値更新】

対ドルでのトルコリラはトルコ中銀のサプライズ利上げにより9月25日午後には7.50リラまで上昇していたが、28日夜には7.83リラまで一段安となり市場最安値を更新している。対ユーロでも28日には9.14リラまで急落して史上最安値を更新している。
トルコリラが中銀による利上げ前に史上最安値を更新してきた背景は、トルコの外貨準備不足と実質マイナス金利状態の長期化、世界的な感染拡大継続による観光収入の激減及び経常収支悪化、東地中海ガス田を巡るギリシャやフランスとの対立やリビアへの介入問題での地政学的リスク等であり、9月11日には米格付け大手のムーディーズがトルコの格付けを「B1」から「B2」に格下げし、格付け見通しを「ネガティブ」で維持したことが一段安へのきっかけとなった。

これらのうち、東地中海問題ではギリシャとトルコの協議再開が報じられてて材料としては一服していたが、アゼルバイジャンとアルメニアの軍事衝突により新たな地政学的リスクが発生したことになる。またこの軍事衝突により大幅利上げによるリラ上昇が一挙に解消されてしまったため、トルコ通貨当局及び中銀は新たな通貨防衛のための追加利上げに追い込まれる可能性があるが、国内外でのコロナ不況長期化を踏まえれば利上げしづらい状況にあり難しい舵取りとなりそうだ。
当面はアルメニア情勢を見ながら、トルコ通貨当局の通貨防衛姿勢を見定めつつ、対円、対ドル等での史上最安値をさらに試してゆく流れと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月24日の中銀利上げによる反騰とその後の一段安により、24日夜安値を直近のサイクルボトム、25日夕高値を同サイクルトップとした弱気サイクル入りと考える。ボトム形成期は29日夜から10月1日夜にかけての間とし、13.70円以下での推移中は一段安警戒とし、13.70円超えからは強気転換注意とする。

60分足の一目均衡表では9月28日朝の急落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、強気転換は両スパンそろって好転するところからとする。

60分足の相対力指数は28日朝の急落で20ポイント台へ急落したが、29日午前時点も40ポイント以下での推移で軟調なままと思われる。強気転換には50ポイントを超える反騰が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、13.40円を下値支持線、13.70円を上値抵抗線とする。
(2)13.70円以下での推移中は一段安警戒とし、13.40円割れからは13.30円、13.20円を段階的に試す流れと考える。
(3)13.60円から13.70円手前にかけては反落注意とみる。反騰入りには13.70円を超えて続伸する必要があると思われる。

【当面の主な経済指標等の予定】

9月29日
 16:00 9月経済信頼感指数 (8月 85.9、予想 84.0)
9月30日
 16:00 8月貿易収支 (7月 -26.9億ドル、予想 -22.0億ドル)
10月1日
 16:00 9月イスタンブール製造業PMI (8月 54.3、予想 54.7)
 20:00 トルコ中銀 MPC議事要旨公開
 20:30 週次外貨準備高 9/25時点 (9/18 452.81億ドル)
10月5日
 16:00 9月消費者物価上昇率 前月比 (8月 0.86%、予想 0.70%)
 16:00 9月消費者物価上昇率 前年比 (8月 11.77%、予想 11.40%)
 16:00 9月生産者物価上昇率 前月比 (8月 2.35%、予想 1.00%)
 16:00 9月生産者物価上昇率 前年比 (8月 11.53%、予想 12.50%)
10月8日
 20:30 週次外貨準備高 10/2時点
10月12日
 16:00 7月失業率 (6月 13.4%、予想 15.0%)
 16:00 8月経常収支 (7月 -18.17億ドル)

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