14.30円台での持ち合い続くが上値重く、トルコリラは対ユーロで最安値更新
〇トルコリラ円、14.30割れを回避しての持ち合い続き、28日午後以降は戻り高値が切り下がる
〇8月イスタンブール製造業PMI、7月の56.9から低下し54.3に
〇トルコのコロナ感染者数、7月からの規制解除や観光客の入国規制緩和等により漸増傾向
〇9/1対ユーロでトルコリラ8.84、史上最安値を更新
〇14.42以下は一段安余地あり、14.30割れから14.20前後へ下落を想定、14.20前後は買い戻し注意
〇14.42超えからは8/28午後高値14.52試しを想定するが、戻り高値を切り下げての下落再開に注意
【概況】
トルコリラ円は8月24日朝に14.28円まで下落した後は14.30円割れを回避しての持ち合いを続けている。8月28日午後高値まではやや戻り高値を切り上げていたが、28日午後以降は戻り高値が切り下がってきている。
8月28日午後高値からの下落は安倍首相辞任報道をきっかけとした円高だったが、28日夜以降はドル円も安値更新を回避して落ち着いている。しかしドル円も106円に到達するところでは上値が重く、9月1日夜には106.15円まで上昇して8月31日夜高値106.08円をわずかに超えたものの106円台を維持できずにいる。また9月1日は対ユーロでトルコリラが史上最安値を更新、対ドルでも下落基調にあるためにトルコリラ円も戻り高値がやや切り下がり気味の展開にとどまっているという状況だ。
【トルコの製造業PMIは予想に届かず前月から低下】
9月1日夕刻に発表された8月のイスタンブール製造業PMIは54.3となり7月の56.9から低下したものの市場予想54.1を上回った。同PMIは今年2月に52.4まで改善していたが、コロナショックにより3月に48.1へ低下、感染拡大により経済活動が大幅に停滞した4月は33.4まで悪化した。その後は徐々に持ち直して7月には56.9まで上昇していたのだが、8月に入ると感染者数が再び増加し始めて経済活動への規制も出始めたために悪化したようだ。
8月31日に発表された4−6月期のトルコGDPは前期比でマイナス11%となり、市場予想のマイナス8.2%を超える悪化となり、前年比もマイナス9.9%で市場予想は下回ったものの深刻な悪化となった。欧米と比較すればそれでも持ち堪えている印象だが、7月からの経済活動規制の緩和によりトルコ国内の感染者数が再び増加傾向を示し始めていることから復興期待がやや後退しつつある状況だ。
9月1日時点のトルコの新型コロナウイルス感染者累計は27万133人で前日からは1587人増となった。死者も44人増で6370人に増えた。4月11日の5138人増がピークとなり6月序盤には千人を切った。6月15日に1592人まで増えたもののその後は再び千人を切る水準への抑制に成功していたのだが、7月からの規制解除や観光客の入国規制緩和等により千人を超えて増加数も漸増傾向にあるため、第二波への警戒感が強まっている。現状よりもさらに感染者数が拡大して第二波到来という印象が強まれば国内経済活動が再び停滞するだけではなく、トルコにとって重要な観光収入の回復も大幅に先送りされかねないと懸念される。
【トルコリラは対ユーロで史上最安値を更新】
対ドルでのトルコリラは8月26日に7.42リラを付けて史上最安値を更新した後は新たな安値更新を回避しているが、8月31日に前日比0.19%安、9月1日も同0.31%安と下落している。
対ユーロでのトルコリラは8月18日に8.82リラの史上最安値を更新した後はいったん戻していたが、8月21日高値8.46リラから下落再開に入り、9月1日には8.84リラを付けて最安値を更新した。日足の終値ベースでは8月28日が前日比0.34%安、31日が0.46%安、9月1日も0.22%安と3日間続落となっている。9月2日の序盤はやや戻しているのは9月1日夜高値からユーロドルが下落したことを反映しているが、対ドルでのユーロやポンド、豪ドル等の上昇基調が続く中でもユーロ高が先導役となっているために、トルコリラにおいても対ドルでの下落よりも対ユーロでの下落が先行する形となっている。7月後半のトルコリラ安も対ユーロでの下落が先行する中で対ドルでの下落もやや遅れたところから一挙に進んだ経緯があるので、対ユーロでのトルコリラ安基調の継続はトルコリラ円にとっても大きなプレッシャーとなっていると認識しておきたい。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月28日深夜の下落で8月27日朝安値を割り込んだために28日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして9月1日朝から3日朝にかけての間と想定した。9月2日朝時点では14.30円を割り込まずに下支えられているものの戻り高値がやや切り下がりで推移しているのでまだ一段安余地ありとみる。また8月24日朝安値から5日目となる8月31日朝安値を直近のサイクルボトムとした場合は安値形成期が9月3日朝から7日朝にかけての間へ延長される可能性もあると注意する。強気サイクル入りは9月1日夜高値14.42円超えからとし、その場合は9月2日の日中から4日にかけての間への上昇と8月28日午後高値試しを想定する。
60分足の一目均衡表では14.30円を下値支持線とした持ち合いのために遅行スパンは実線と交錯して方向感にかけるが、8月31日夕刻と9月1日夜の上昇局面では先行スパン突破に失敗しているので、先行スパンを上抜けないうちは遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパン突破からは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は持ち合い相場が続いているために方向感に欠ける。60ポイント超えからは上昇に弾みも付くと思われるが、50ポイントを挟んでの推移中はもう一段安余地ありとし、40ポイント割れからは下げ再開とみて20ポイント台への低下を伴う下落を想定する。
以上を踏まえて今週のポイントを示す。
(1)当初、14.30円を下値支持線、9月1日夜高値14.42円を上値抵抗線とする。
(2)14.42円以下での推移中は一段安余地ありとし、14.30円割れからは14.20円前後への下落を想定する。14.20円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、14.30円以下での推移が続く場合は3日午前にかけても安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)14.42円超えからは8月28日午後高値14.52円試しへ向かう上昇を想定するが、戻り高値を切り下げての下落再開に注意して14.50円手前では戻り売りにつかまりやすいとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
9月3日
16:00 8月消費者物価 前年比 (7月 11.76%、予想 12.1%)
16:00 8月消費者物価 前月比 (7月 0.58%、予想 1.2%)
16:00 8月生産者物価 前年比 (7月 8.33%、予想 10.7%)
16:00 8月生産者物価 前月比 (7月 1.02%、予想 1.6%)
9月10日
16:00 6月失業率 (5月12.9%、予想 15.8%)
20:30 週次外貨準備高
9月11日
16:00 7月経常収支 (6月 −29.3億ドル)
9月14日
16:00 7月鉱工業生産 前年比 (6月 0.1%)
16:00 7月小売売上高 前月比 (6月 16.5%)
16:00 7月小売売上高 前年比 (6月 -0.8%)
注:ポイント要約は編集部
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