ドル円の反発で戻すも対ドル及び対ユーロでのリラ安基調継続で上値は重い
〇トルコリラ円、8/31夕刻に14.44まで戻したもののその後は14.40を割り込んだ状況、14.30円台は維持
〇トルコリラ対ドル、8/26からは3日間の反発となったものの、下落再開感出始める
〇トルコリラ対ユーロ、8/18以降史上最安値更新回避しているが下落再開、8/31には最安値に迫る
〇トルコGDP2期連続のマイナス、観光収入激減の影響も続きリラ売り圧力強める可能性
〇14.44以下は一段安余地あり、14.30割れから14.20前後へ下落を想定、14.20前後買い戻し入りやすい
〇14.44を上抜くと14.52試し、14.50手前では戻り売りにつかまりやすいく14.40割れからは下げ再開
【概況】
トルコリラ円はドル円の反騰により8月28日昼過ぎに14.52円まで上昇していたが、28日午後からの安倍首相辞任報道からの円高により下落に転じ、28日深夜には14.31円まで下げた。14.30円台を維持してドル円が揺れ返しの反発となったことで31日夕刻には14.44円まで戻したが、その後は伸びずに14.40円を割り込んだ状況でややジリ安の推移となっている。
8月24日朝に14.28円まで下げた後は14.30円台を維持して新たな安値更新を回避してきた。8月27日夜のパウエル米連銀議長講演からドル円がいったん急落してから急騰に転じ、28日は安倍首相辞任報道のサプライズからリスク回避で円高となるなど波乱が続いたが、週末及び週明けの31日も14.30円台は維持しており、8月24日以降の横ばい推移の範囲にとどまっている。
【ドル全面安のなかでドル円が戻したが、一時的な動きか】
パウエル議長講演での乱高下を通過してからはドル安が進んでいる。ユーロやポンド及び豪ドルは8月31日夜の上昇で3月のコロナショックで急落し抵抗の戻り高値を更新している。米連銀が物価上昇率目標の2%を超えても長期間のゼロ金利政策や量的緩和政策を継続する姿勢を示したため、ドル安基調も継続するとの見方が再確認されたためと思われる。
その一方でドル円は8月28日に安倍首相辞任報道で急落したものの、やや過剰な下落だったとして31日はドル安基調の中にあっても戻していた。31日夜には106.08円を付けて28日の急落に対する半値戻しをわずかに超えたのだが、9月1日に入ってからは上値が重くなっており、ドルストレート全般におけるドル安基調に合わせて下落再開に入りつつある印象だ。ドル円が下落感を強めればトルコリラ円も14.30円台を維持しきれなくなる可能性があると注意したい。
【トルコリラは対ドルでしっかりだが、対ユーロでは史上最安値に迫る】
対ドルでのトルコリラは8月26日に7.42リラを付けて史上最安値を更新したが、その後はメジャー通貨におけるドル安もあって28日には7.27リラまで反発し、26日からは3日間の反発となった。しかし31日は7.37リラの安値を付ける等下落再開感が出始めている。週間ベースでは8月16日の週が0.41%高、8月23日の週も0.05%の上昇だったが、週明けは今のところ0.36%安と失速気味となっている。
対ユーロでのトルコリラは8月18日に8.82リラの史上最安値を更新した後は新たな安値更新を回避しているが、8月21日に8.46リラまでいったん反発したところから下落を再開しており、8月28日は前日比0.34%安、31日も0.56%安と続落となり、31日の安値では8.81リラを付けて8月18日の史上最安値に迫っている。
消費者物価上昇率が政策金利を上回る実質マイナス金利状態が続いていること、外貨準備高不足による通貨防衛力の低下を背景として内外でトルコリラからユーロやドルへの換金が進んでいること、コロナ不況による観光収入の激減等がリラ売りの背景だが、この流れを改善する動きは見られず、先安不安はぬぐえない印象だ。
【トルコのGDP、2期連続のマイナス】
8月31日に発表されたトルコ4-6月期GDPは、前期比がマイナス11.0%となり、1−3月期のマイナス0.1%から悪化、前年比ではマイナス9.9%となり1−3月期のプラス4.4%から悪化した。前期比としては2四半期連続のマイナスでありリセッションを示すが、欧米等が4−6月期にマイナス30%を超える規模の悪化だったことを踏まえればトルコはよく持ち堪えたともいえる。ただし今後の回復には7−9月期において感染拡大の第二波的な拡大を回避して経済活動正常化がさらに進むことが必要であり、国内消費の改善に加えて観光収入等の改善も必須となるだろう。
8月31日に発表されたトルコの7月貿易統計では、貿易収支が26.9億ドルの赤字となり6月の28.5億ドルの赤字からはやや赤字幅が減った。慢性的な貿易赤字国のために収支の赤字額が最近の流れの中で突出しない限りは大きな材料にならない。収支よりも輸出入の伸びが重要であるが、7月の輸出は前年同月比でプラスマイナス0%となった。コロナショックにより3月にはマイナス20.8%、4月にはマイナス41.5%、5月にはマイナス30.8%と悪化していたが、6月はマイナス6.4%まで回復し、7月は前年同期並みを回復したことになる。
7月の輸入は前年比マイナス3.2%となったが、4月にマイナス25.1%まで悪化した後は5月にマイナス16.8%、6月にマイナス9.1%へと徐々に改善傾向にある。輸出が改善し輸入も改善基調にあることは好ましいが、貿易収支では経常赤字を埋め合わせられないために、観光収入等がより重要になるのだが、観光収入は激減したままの状況にある。国内の経済活動が正常化へ向かいつつある中でトルコ経済も立ち直ってきているが、観光収入激減の影響は今後も続き、外貨準備高不足と共にトルコリラへの売り圧力を強めてゆくと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月27日朝安値からの上昇で26日夕刻高値を超えたために28日午前時点では27日朝安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとしたが、28日深夜の下落で27日朝安値を割り込んだため、28日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は9月1日朝から3日朝にかけての間と想定されるのでまだ一段安余地ありとするが、31日夕高値14.44円を超える場合は強気転換注意として28日午後高値試しを想定する。
60分足の一目均衡表では8月31日夕刻への上昇では先行スパン突破に失敗し、その後の下落で遅行スパンも悪化している。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開の可能性ありとして遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は9月1日午前時点で50ポイントを割り込んできているので50ポイント以下での推移か一時的に超えても維持できないうちは一段安余地ありとし、強気転換は60ポイント超えからとする。
以上を踏まえて今週のポイントを示す。
(1)当初、14.30円を下値支持線、31日夕高値14.44円を上値抵抗線とする。
(2)14.44円以下での推移中は一段安余地ありとし、14.30円割れからは14.20円前後への下落を想定する。14.20円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、14.30円以下での推移が続く場合は2日午前にかけても安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)31日夕高値を上抜く場合は28日午後高値14.52円試しへ向かうとみるが、14.50円手前では戻り売りにつかまりやすいとみて、その後の14.40円割れからは下げ再開とみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
9月1日
16:00 8月イスタンブール製造業PMI (7月 56.9、予想 54.1)
9月3日
16:00 8月消費者物価 前年比 (7月 11.76%、予想 12.1%)
16:00 8月消費者物価 前月比 (7月 0.58%、予想 1.2%)
16:00 8月生産者物価 前年比 (7月 8.33%、予想 10.7%)
16:00 8月生産者物価 前月比 (7月 1.02%、予想 1.6%)
9月10日
16:00 6月失業率 (5月12.9%、予想 15.8%)
20:30 週次外貨準備高
9月11日
16:00 7月経常収支 (6月 −29.3億ドル)
9月14日
16:00 7月鉱工業生産 前年比 (6月 0.1%)
16:00 7月小売売上高 前月比 (6月 16.5%)
16:00 7月小売売上高 前年比 (6月 -0.8%)
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トルコリラ円ショートコメント(2020年8月31日)
実際のレンジは安値が14.31レベル、高値14.53レベルと、最近としてはかなり狭いレンジの中でのもみあいに終始しました。
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