ドル円見通し 安倍首相辞任報道からの過剰円高への巻き戻しだが、全般の流れはドル安(20/9/1)

28日夜安値の後は急落反応が一巡して下げ渋りに入り、31日は28日のやや過剰な円高に対する巻き戻しの動きで夜には106.08円まで上昇した。

ドル円見通し 安倍首相辞任報道からの過剰円高への巻き戻しだが、全般の流れはドル安(20/9/1)

ドル円見通し 安倍首相辞任報道からの過剰円高への巻き戻しだが、全般の流れはドル安

〇ドル円、首相辞任報道から8/28夜には105.17まで大幅下落、その後巻き戻しで8/31夜106.08まで上昇
〇8/31、ユーロ高・ポンド高・豪ドル高等ドルストレートでのドル安進んだが、ドル円は円安ドル高
〇パウエル議長講演での乱高下を通過し、ドルストレートはドル全面安の流れを再開し始めた印象
〇ドル円、ローカルな材料で乱高下したものの、落ち着きを取り戻せばドル安円高の流れへ回帰の可能性
〇106.08を超えないうちは反落警戒、105.50割れからは105.17前後試しへ向かうとみる
〇106.08を超える場合は106.20から106.50手前のゾーン試し、105.75割れからは下げ再開とみる

【概況】

ドル円は8月27日夜のパウエル米連銀議長によるジャクソンホール講演から乱高下となり、講演開始早々に105.59円まで急落したものの早々に切り返して27日深夜には106.70円を付けて8月25日深夜高値106.57円を超え、28日午前には106.94円まで続伸して107円へあと一歩に迫ったが、28日午後の安倍首相辞任報道から先行き不透明感による急激な円高となり、28日夜にはドルストレートでのドル安再燃も重なって105.17円まで大幅下落となった。28日の高値から安値までの下げ幅は1.77円となり、日足も大陰線での下落となったが、28日夜安値の後は急落反応が一巡して下げ渋りに入り、31日は28日のやや過剰な円高に対する巻き戻しの動きで夜には106.08円まで上昇した。この間の戻り幅は0.91円となり28日の急落幅に対する半値戻し106.05円をわずかに上回った。

【ドルストレートでのドル安は継続】

安倍首相辞任報道が前日までの辞任は無しとの見方が優勢だったためにサプライズ報道となり、後継問題等での混乱やアベノミクスと称されてきた金融及び経済政策が先行きどうなるのか、という不透明感が発生したためにクロス円においてはリスク回避のポジション圧縮が進んで円が買い戻された。
8月27日のパウエル議長講演での乱高下が落ち着いた後にユーロやポンド等が上昇してドル安再燃が進み始める中でもドル円は揺れ返しの上昇に弾みがついていたために28日昼まで高値を更新していたのだが、首相辞任報道で強気の梯子が外されたために直前までの上昇が過剰だったことの揺れ返しにより急激な円高へ旋回した。

8月31日はユーロ高、ポンド高、豪ドル高等ドルストレートでのドル安はさらに進んだのだが、ドル円が28日の急落がやや過剰だったとして今度は揺れ返しのドル買い円売りが勝ったために、ユーロ高ドル安等に反して円安ドル高となった。
首相辞任という為替市場にとってはローカルなリスク回避材料によりドル円の動きがドルストレート全般の動きとずれたということだろうと思われる。首相辞任によっても与野党の政権交代が発生するわけでもなく、政権与党内での首相後継争いも波乱なく進めば日銀による金融緩和政策、ETF買い入れ等による金融市場安定への姿勢が継続すれば慌てることもない話だ。

パウエル議長講演での乱高下を通過して、ドルストレートはドル全面安の流れを再開し始めた印象だ。ユーロドルは31日夜に1.1965ドルまで上昇して8月18日に付けた3月底以降の高値1.1964ドルを超えた。英ポンドも31日夜に1.33943ドルを付けて今年3月底以降の高値を更新した。豪ドルも対ドルで0.7402ドルへ上昇して3月底以降の最高値を更新している。総じてドル円以外はこの間の最高値を更新している。
メジャー通貨の加重平均であるドル指数は8月31日に91.99ポイントの安値を付けて3月20日天井以降の安値を更新した。7月末安値からいったん下げ渋りが見られたものの、8月18日に安値を更新し、8月21日までやや戻したものの一段安入りしたことでドル安基調が再び加速し始めた印象だ。

コロナ不況対策として世界的な金融緩和政策がとられており、その規模はリーマンショック時を上回るとされる。リーマンショックにおいてドル指数は2008年3月17日安値から同年10月の乱高下を経て2009年3月4日まで上昇していたが、米連銀による大規模な量的緩和の開始によりNYダウが3月に大底を付けて上昇に転じるとドル安感が強まって2009年11月へと大幅下落した経緯がある。今回もコロナショック当初のパニック的なドル買い戻しにより3月20日に102.99ポイントの高値を付けて2017年1月3日天井103.82ポイントに迫ったが、その後の金融緩和による過剰流動性供給からドル売りが加速し、2017年1月天井とのダブル天井を形成して大幅下落してきている。ドル円もローカルな材料で乱高下したものの、大きな流れとしてのドル全面安を超える円の独歩安は考え難く、落ち着きを取り戻せばドル安円高の流れへ回帰してゆくのではないかと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月28日の急落とその後の半値戻しを踏まえて8月28日昼高値を直近のサイクルトップ、28日夜安値を同サイクルボトムとした強気サイクル入りとする。28日夜安値割れ回避のうちは9月2日の日中から4日にかけての間への上昇余地ありとする。ただし戻りは短命の可能性があり、すでに戻り一巡から下落期に入りつつあるところとみて105.50円割れからは下げ再開と仮定して8月28日夜安値試しとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして9月2日夜から4日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では8月31日夜の上昇では先行スパンを突破できず、その後は先行スパンに潜り込んだ状況にある。31日夜高値を上抜けば先行スパン突破となるためもう一段高を試す余地ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパン転落からは下げ再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は8月28日夜の下落時に20ポイント台序盤まで急低下したがその後の反騰で31日夜には60ポイントをいったん超えた。50ポイントを割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとするが、45ポイント割れからは下げ再開と仮定して再び20ポイント台を目指す下落期入りと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、105.50円を下値支持線、8月31日夜高値106.08円を上値抵抗線とする。
(2)106.08円を超えないうちは反落警戒とし、105.50円割れからは下げ再開とみて28日夜安値105.17円前後試しへ向かうとみる。105円台序盤は買い戻しも入りやすいところだが、105.50円以下での推移が続く場合は2日の日中も安値試しを続けやすいとみる。また28日夜安値を割り込む場合は下値目途も104円台前半、さらに104円割れへと段階的に切り下がる可能性もあるとみる。
(3)106.08円を超える場合は106.20円から106.50円手前のゾーンを試すとみるが、そこは戻り売りにつかまりやすいとみてその後の105.75円割れからは下げ再開へ進みやすいとみる。

【当面の主な予定】

9/1(火)
米国の対イラン制裁復活をめぐりEU主宰で会合(ウィーン)
10:30 (豪) 7月 住宅建設許可件数 前月比 (6月 -4.9%、予想 -2.0%)
10:30 (豪) 4-6月期 経常収支 (1−3月 84億豪ドル、予想 130億豪ドル)
10:45 (中) 8月 財新製造業PMI (7月 52.8、予想 52.5)
13:30 (豪) 豪準備銀行、政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
16:50 (仏) 8月 製造業PMI改定値 (速報 49.0、予想 49.0)
16:55 (独) 8月 製造業PMI改定値 (速報 53.0、予想 53.0)
16:55 (独) 8月 失業者数 前月比 (7月 -1.80万人、予想 -0.20万人)
16:55 (独) 8月 失業率 (7月 6.4%、予想 6.4%)

17:00 (欧) 8月 製造業PMI改定値 (速報 51.7、予想 51.7)
17:30 (英) 8月 製造業PMI改定値 (速報 55.3、予想 55.3)
18:00 (欧) 7月 失業率 (6月 7.8%、予想 8.0%)
18:00 (欧) 8月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (7月 0.4%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 8月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (7月 1.2%、予想 0.8%)
22:45 (米) 8月 製造業PMI改定値 (速報 53.6、予想 53.6)
23:00 (米) 8月 ISM製造業景況指数 (7月 54.2、予想 54.6)
23:00 (米) 7月 建設支出 前月比 (6月 -0.7%、予想 1.0%)
26:00 (米) ブレイナードFRB理事、バーチャル討論会

9/2(水)
08:50 (日) 8月 マネタリーベース 前年同月比 (7月 9.8%)
10:30 (豪) 4-6月期 GDP 前期比 (1−3月 -0.3%)
10:30 (豪) 4-6月期 GDP 前年同期比 (1−3月 1.4%)
18:00 (欧) 7月 生産者物価指数 前月比 (6月 0.7%)
18:00 (欧) 7月 生産者物価指数 前年同月比 (6月 -3.7%)
21:15 (米) 8月 ADP非農業部門就業者数 前月比 (7月 16.7万人、予想 125.0万人)
23:00 (米) 7月 製造業新規受注 前月比 (6月 6.2%、予想 3.8%)
23:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、対話集会
25:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
26:00 (独) バイトマン独連銀総裁、講演
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)


注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る