9月3日早朝に14.30円を割り込む、対ドルでトルコリラは3日続落
〇トルコリラ円、9/3早朝14.25まで下落し14.30円台の持ち合いからいったん転落
〇トルコとギリシャ本格的軍事衝突には進まないが、偶発的な衝突による緊張激化の可能性も
〇9/1ポンペオ米国務長官がキプロスに対する武器禁輸措置を33年ぶりに解除、トルコ政府反発
〇14.30割れからは下げ再開と仮定し9/3朝安値14.25試し、14.20以下は買い戻し注意
〇14.38超えからは14.42前後への上昇を想定、14.40以上は反落注意
【概況】
トルコリラ円は8月24日朝に14.28円まで下落した後は14.30円割れを回避しての持ち合いを続けてきたが、9月3日早朝に14.25円まで下落して14.30円台の持ち合いからいったん転落し、8月24日安値も割り込んだ。その後は14.30円台へ戻しているが、ドル円が8月28日夜以降のジリ高基調を維持して106円台序盤へ戻している一方で対ドルでのトルコリラは9月2日まで3日間の続落となり再び最安値更新を伺いつつあることが影響している印象だ。
【トルコリラの対ドル、対ユーロでの下落基調は継続中】
トルコリラは対ドルで8月26日に7.42リラまで下落して史上最安値を更新した。8月26日当日から8月28日までは最安値更新後の揺れ返しにより3日間の上昇となったが、8月28日に7.27リラまで戻した後は再び下落に転じており、8月31日に前日比0.19%安、9月1日に同0.25%安、2日も0.13%安と3日間の続落となり、安値では7.39リラを付けて徐々に8月26日の最安値に迫っている印象だ。
対ドルでのトルコリラは6月中旬から7月後半までは6.85リラを中心として通貨当局による規制や介入等から7月3日のフラッシュクラッシュ的な下落を除いて安定した動きが続いてきたが、7月27日から抑制が効かなくなって急落商状に陥った。8月18日に7.40リラまで史上最安値を更新してから乱高下しつつ8月26日に7.42リラへ最安値をさらに更新、8月28日までいったん戻したもののドル高リラ安基調は継続するとみられて最安値更新を伺うところへ下げ始めている印象だ。
対ユーロでのトルコリラは8月18日に8.82リラまで史上最安値を更新した後はいったん戻していたが、9月1日には8.84リラを付けて最安値を更新した。9月1日深夜からはユーロが対ドルで下落したことでトルコリラの対ユーロにおける下落一服となっているが、最安値更新後の調整という印象にとどまっている。ユーロドルでのユーロ安が続くうちは多少の下支え効果はあるかもしれないが、史上最安値更新を試す流れは継続していると思われる。
ドル円は8月27日夜のパウエル米連銀議長講演や8月28日の安倍首相辞任報道により乱高下に見舞われたが、8月28日夜安値105.17円で8月19日午前安値105.08円割れを回避してその後は持ち直しの上昇となっている。7月31日に104.17円まで急落してから8月13日高値107.05円まで戻し、その後は105円台序盤を下値支持線としてボックス型の持ち合いとなっている印象だが、8月13日高値を超える一段高へ進めないうちは下げ一服による持ち合いにとどまり、ドル安感が再燃するところからは下落再開へ向かいかねないところと思われる。週末の米8月雇用統計からメジャー通貨市場においてドル安再開に向かうようだとドル円の一段安がトルコリラ円の下落を加速しかねないと思われる。
【東地中海ガス田探査による地政学的緊張】
トルコは東地中海のギリシャ近海におけるガス田探査を継続している。海軍を同行しており、ギリシャも対抗して艦隊を近海に派遣、フランスが空軍機をギリシャへ派遣、ドイツが緊張緩和への調整に乗り出す等、緊張感が高まっている。トルコもギリシャもNATO加盟国であり両国の本格的軍事衝突へ進む可能性は低いと思われるが、艦船同士の接触事故も起きており、偶発的な衝突による緊張激化の可能性も続いている。
そうした中、ポンペオ米国務長官が9月1日にキプロスに対する武器禁輸措置を33年ぶりに解除して同国と安全保障面の協力を強化していくと表明したことにトルコ政府が反発している。キプロスは1974年のトルコ進攻により南北に分裂しており、北部が北キプロス・トルコ共和国を宣言しているもののトルコ以外はこれを承認せずに紛争状態が続いている。米国は1987年に南北双方の軍備競争防止を理由に南部のキプロスへの武器輸出を禁止してきたが、ガス田探査を巡るギリシャとトルコの対立の深刻化へのけん制としてキプロスへの武器供与を再開する姿勢を示したようだ。暫くは緊張が続くとみるが、トルコリラにとっては地政学的リスクとして売り圧力となりやすいと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月28日深夜の下落で8月27日朝安値を割り込んだために28日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして9月1日朝から3日朝にかけての間への下落を想定してきた。9月3日朝に14.30円を割り込む一段安となってから14.30円台へ戻しているため、9月3日朝安値を直近のサイクルボトムとする。新たな安値更新を回避するうちは9月4日にかけての間へ上昇余地ありとするが、持ち合いから下放れる下落となったために戻りは短命の可能性もあると注意し、再び14.30円を割り込むところからは下げ再開を警戒し、9月3日朝安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして9月8日朝から10日朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では9月3日朝の一時的急落から戻したものの先行スパンが上値抵抗となっている。14.30円台の持ち合い圏へ戻したために遅行スパンは実線との交錯を繰り返している。先行スパンを上抜くところからは戻り高値を試しに入るとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、14.30円を再び割り込むところからは下げ再開と仮定して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は9月3日朝の下落時に40ポイントを割り込んだが早々に切り返したために50ポイントをいったん超えるところまで戻した。しかし60ポイント以上へ上昇できないうちは3日朝からの戻りも短命とみて40ポイントを再び割り込むところからは下げ再開とみて20ポイント台への下落を想定する。
以上を踏まえて今週のポイントを示す。
(1)当初、14.30円を下値支持線、14.38円を上値抵抗線とする。
(2)14.30円台を維持するうちは戻り高値を試す余地ありとし、14.38円超えからは14.42円前後への上昇を想定する。14.40円以上は反落注意とするが、14.30円以上を維持するなら4日の日中も高値を試す余地ありと考える。
(3)14.30円割れからは下げ再開と仮定して9月3日朝安値14.25円試しとし、安値更新からは14.20円前後への下落を想定する。14.20円以下は買い戻しも入りやすいとみるが、14.30円以下での推移が続く場合は4日午前にかけても安値試しへ向かいやすいとみる。また先行きは8月10日安値14.07円を割り込む一段安へ進みやすいとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
9月3日
16:00 8月消費者物価 前年比 (7月 11.76%、予想 12.1%)
16:00 8月消費者物価 前月比 (7月 0.58%、予想 1.2%)
16:00 8月生産者物価 前年比 (7月 8.33%、予想 10.7%)
16:00 8月生産者物価 前月比 (7月 1.02%、予想 1.6%)
9月10日
16:00 6月失業率 (5月12.9%、予想 15.8%)
20:30 週次外貨準備高
9月11日
16:00 7月経常収支 (6月 −29.3億ドル)
9月14日
16:00 7月鉱工業生産 前年比 (6月 0.1%)
16:00 7月小売売上高 前月比 (6月 16.5%)
16:00 7月小売売上高 前年比 (6月 -0.8%)
注:ポイント要約は編集部
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