8月28日夜安値からの持ち直し続くが米長期債利回り低下とのギャップに注意
〇ドル円、ADP民間雇用報告の反応は限定的、8/28夜からの上昇基調継続
〇ADP民間雇用報告、前月比42万8000人増で市場予想の95万人増を下回る
〇9/2NYダウ終値2万9100.50ドルで凡そ6か月ぶりの2万9000ドル台到達
〇ナスダック総合指数116.77ポイント高と続伸、4日連続で終値ベースの史上最高値更新
〇2日朝安値105.83割れからは上昇一巡による下落期入りで105円台前半への下落想定
〇106.30超えからは106.50超えを目指すとみるが、106.50前後では戻り売りにつかまりやすい
【概況】
ドル円は8月28日夜安値からの持ち直しの動きを続けており、9月3日未明には106.30円まで戻り高値を切り上げてきた。9月2日夜はADP民間雇用報告が冴えない内容だったものの市場の反応は限定的なものにとどまり、米国株高の進行によるドル買いでドル円も8月28日夜からの上昇基調を継続した。
8月27日夜のパウエル米連銀議長によるジャクソンホール講演内容に対して乱高下の反応となり、いったん105.59円まで急落してから106円台後半へ反騰して8月28日昼には106.94円まで上昇したが、安倍首相辞任報道のサプライズから急落に転じて8月28日夜には105.17円まで下げた。しかし8月19日午前安値105.08円割れを回避して持ち直しに入った。
8月28日はユーロ高を先導役としたドル全面安も影響しての急落であり、8月31日もユーロ高ドル安が続いていたもののドル円は28日の急落し過ぎの反動で戻しに入り、他のメジャー通貨におけるドル安継続とずれる動きだったが、9月1日夜にユーロが2018年5月以来となる1.20ドル台に到達したところから高値警戒感を招いてユーロ安ドル高となり、英ポンド等も反落に入ったことで8月27日からのドル安が一服したためにドル円の8月28日夜からのリバウンドもズレを解消して継続となった印象だ。
米民間雇用サービス会社オートマティック・データ・プロセッシング(ADP)が発表した8月の全米雇用報告では非農業部門民間就業者数が前月比42万8000人増となり市場予想の95万人増を下回った。弱い内容だったものの7月分が当初の16万7000人増から21万2000人増へ上方修正されたこともあり市場の反応は薄かった。ADPによれば雇用の増加は最小限にとどまっているようだ。その後に米商務省が発表した7月の製造業受注は前月比6.4%増となり3か月連続の増加で市場予想の6.0%を上回った。
【米国株高とドルの反発、米長期債利回りは低下】
9月2日のNYダウは前日比454.84ドル高と大幅上昇して終値は2万9100.50ドルとなり凡そ6か月振りの2万9000ドル台到達となった。ハイテク株中心のナスダック総合指数は116.77ポイント高と続伸して4日連続で終値ベースの史上最高値を更新した。
8月27日夜のパウエル米連銀議長のジャクソンホール講演で2%を超える物価上昇率を実現しても長期間のゼロ金利を続ける姿勢が示されたことに続き、9月1日にはブレイナード理事が金融緩和政策の追加的拡大姿勢を示したことにより、米連銀による金融市場サポートによる株高は続くとの期待感が強まっていることが背景と思われる。
新型コロナウイルスの米国感染者累計は629万人に達して死者も19万人に迫っているが、日々の感染増加者は6月24日の7万8663人をピークに減少傾向にあり、3月後半から4月にかけての増加時を第一波とすれば、第二波が6月24日から落ち着いてきている印象だ。経済活動が活発化すれば再び第三波へと進みかねず、第一波のボトム時が日々の増加数で2万人を切った状況だったことと比較すれば4万人前後の現状はまだかなり高い水準といえるので油断はできない。しかし株式市場は楽観的であり、すでにナスダックは3月のコロナショック暴落を解消して一段高に入ってからも上昇基調を続けており、ダウもコロナショック前の2月高値に迫る勢いだ。
米国株高なら安全資産としての米長期国債は売られて利回りは上昇しやすく、現に8月中旬の大量国債入札が続いたところでは米長期債利回りが需給緩和感もあって大幅に上昇してピーク時には0.79%まで上昇した。
しかしパウエル議長講演及びブレイナード理事講演で長期債利回り上昇も一服しており、9月2日の米10年債利回りは前日比0.02%低下の0.65%、30年債利回りも0.04%低下の1.38%と低下傾向に入っている。米長期債利回りの低下傾向を踏まえれば、9月2日のユーロ安等によるドル高はやや行き過ぎの印象であり、ユーロの反落も1.20ドル台に到達したことでの高値警戒感、他通貨も連騰に対する調整として下落した印象に留まる。米長期債利回り低下が続いてユーロやポンド及び豪ドル等が持ち直しの上昇に入れば、ドル円にとってもドル安円高圧力が再開するのではないかと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月28日の急落とその後の半値戻しを踏まえて8月28日昼高値を直近のサイクルトップ、28日夜安値を同サイクルボトムとした強気サイクル入りとして9月2日の日中から4日にかけての間への上昇を想定した。
9月3日未明へ高値を切り上げて106円台を維持しているのでまだ上昇余地ありとみるが、前回サイクルトップから4日目に入るので反落警戒期とし、9月3日早朝安値106.03円割れを弱気転換注意、2日朝安値105.83円割れからは弱気サイクル入りとして3日夜から4日深夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では9月2日夜の上昇で先行スパンを上抜いてきているので、先行スパンを上回るうちは遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパン転落からはいったん下落に向かうとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は8月28日夜からのジリ高基調が続いているために50ポイントを支持線としてしっかりしているが、2日夜から3日未明への高値切り上げに対しては指数のピークが切り下がり気味のため、50ポイント割れからは下げ再開を警戒し、40ポイント割れからは30ポイント以下を目指す下落期入りと考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月3日早朝安値106.03円を下値支持線、9月3日未明高値106.30円を上値抵抗線とする。
(2)106.03円以上での推移中は上昇余地ありとし、106.30円超えからは106.50円超えを目指すとみるが、106.50円前後では戻り売りにつかまりやすいとみてその後に106.15円を割り込むところからは下げ再開を疑う。
(3)106.03円割れを弱気転換注意とし、2日朝安値105.83円割れからは28日夜からの上昇一巡による下落期入りとみて105円台前半への下落を想定する。105.25円以下は反発注意とするが、105.83円を割り込んだ後も106円台を回復できないうちは4日にかけて下落継続しやすいと考える。
【当面の主な予定】
9/3(木)
10:30 (豪) 7月 貿易収支 (6月 82.02億豪ドル、予想 50.00億豪ドル)
10:45 (中) 8月 財新サービス業PMI (7月 54.1、予想 54.0)
16:50 (仏) 8月 サービス業PMI改定値 (速報 51.9、予想 51.9)
16:55 (独) 8月 サービス業PMI改定値 (速報 50.8、予想 50.8)
17:00 (欧) 8月 サービス業PMI改定値 (速報 50.1、予想 50.1)
17:30 (英) 8月 サービス業PMI改定値 (速報 60.1、予想 60.1)
18:00 (欧) 7月 小売売上高 前月比 (6月 5.7%、予想 1.0%)
18:00 (欧) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 1.3%、予想 1.9%)
21:30 (米) 7月 貿易収支 (6月 -507億ドル、予想 -580億ドル)
21:30 (米) 4-6月期 非農業部門労働生産性改定値 前期比 (速報 7.3%、予想 7.5%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 100.6万件、予想 95.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1453.5万人、予想 1400.0万人)
22:45 (米) 8月 サービス業PMI改定値 (速報 54.8、予想 54.7)
23:00 (米) 8月 ISM非製造業景況指数 (7月 58.1、予想 57.0)
26:00 (米) エバンズ・シカゴ連銀総裁、講演
9/4(金)
10:30 (豪) 7月 小売売上高 前月比 (6月 2.7%、予想 3.3%)
15:00 (独) 7月 製造業新規受注 前月比 (6月 27.9%、予想 5.0%)
15:00 (独) 7月 製造業新規受注 前年同月比 (6月 -11.3%、予想 -6.0%)
21:30 (米) 8月 雇用統計・非農業部門雇用者数 前月比 (7月 176.3万人、予想 135.0万人)
21:30 (米) 8月 雇用統計・失業率 (7月 10.2%、予想 9.8%)
21:30 (米) 8月 雇用統計・平均時給 前月比 (7月 0.2%、予想 0.0%)
21:30 (米) 8月 雇用統計・平均時給 前年同月比 (7月 4.8%、予想 4.4%)
9/7(月)
休場 米国、カナダ(レーバーデー)、ブラジル(独立記念日)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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