ユーロは上げても下げても売りの展開
〇先週のユーロドル、ウ露戦争激化懸念から年初来安値更新
〇欧州PMI速報値の弱い結果に12月ECBでの追加利下げ意識され、2022年11月以来の1.0335レベルに
〇ターゲットは2022年安値と2023年高値との61.8%押し1.0200
〇ユーロ円、9月安値と10月高値の61.8%押し159.55が次のターゲット
〇今週は1.0220レベルをサポート、1.0480レベルをレジスタンスとする週を見る
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルはウクライナ・ロシアの戦争激化懸念から年初来安値を大きく更新する一週間となりました。きっかけは18日にバイデン大統領がウクライナに米国製長距離ミサイルの使用を認め、翌19日にウクライナがロシア国内に向けミサイルを発射したことです。初めは最悪核戦争の可能性もと急速にリスクオフの動きが広がりましたが、ロシア外相がロシアは核戦争が起きない立場との表明をしたことで急速に値を戻しました。
しかし、その後もロシアからの報復攻撃、ウクライナによる英国製ミサイルの攻撃と、双方ミサイルの撃ち合いとなり戦争が激化する方向となってきたことに加え、金曜に発表された欧州主要国のPMI速報値が弱かったことから改めて12月ECB理事会での追加利下げが意識され、一時1.0335レベルと2022年11月以来の安値を見る流れとなり、週末前にやや戻しての週末クローズとなりました。
12月ECB理事会での利下げはこれまでも確実視されていましたが、経済指標も弱いことから規定路線という見方で良いでしょう。見送りという線は消えたと思いますが、今週はエコノミストのレーンECB理事をはじめECB関係者の発言がありますので、念の為注意しておきたいところです。他にはロンドン・フィキシングといった月末実需はありますが、引き続き最大の材料はロシア・ウクライナ間の戦争激化懸念です。
ロシアもミサイルの量産で対応という発言をしていますが、米国や英国をはじめNATOからのサポートが更なる戦争激化につながるリスクを考えると、ユーロドルは戻り売りは当然のこと、新値売りでも狙えるという見方が広がっていると見られます。
テクニカルには今週は週足チャートから見て行きます。
既に2023年安値も下回ってきましたので、2022年安値と2023年高値との押しを考える流れになってきました。半値押し1.0405は既に達成し、いったんは1.04水準でのもみあいを挟む可能性はあるものの、ターゲットは61.8%押しの1.0200となります。当面はこの1.02水準を視野に入れての売りが続きやすいと言えるでしょう。
上値の戻しは日足チャートをご覧ください。
9月高値からの動きを見ると、大きく下げてフラッグ、大きく下げてフラッグと来ていますので、今回の下げも上述したターゲット1.02に向けて大きめの下げを見る可能性が高いことがわかります。9月まで動かな過ぎたのでその反動もあるというところです。なお、戻しのポイントは直近のフラッグの下限にあたる1.05水準となります。今週は1.0220レベルをサポートに、1.0480レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
今週のコラム
今週もユーロ円日足を見ておきましょう。
先週示した9月安値と10月高値の半値押し160.91はあっさりと下抜けてきたので次のターゲットを見ると61.8%押し159.55が次のターゲットとなっていることがわかります。先週安値は160円の大台を割り込んですぐに反発しましたが、ユーロドルだけでなく他のクロスでも一段の下げの余地がありますので、ユーロ円は159円台半ばを試す流れにあると見ておきます。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
11月25日(月)
18:00 ドイツ11月ifo企業景況感
25:30 レーンECB理事講演 ☆
26:30 ドイツ連銀総裁講演 ☆
11月26日(火)
17:00 フランス中銀総裁講演 ☆
11月27日(水)
16:00 ドイツ12月消費者信頼感
16:45 フランス12月消費者信頼感
27:00 レーンECB理事講演
11月28日(木)
**:** 米国市場休場 ☆
19:00 ユーロ圏11月消費者信頼感
22:00 ドイツ11月CPI速報値 ☆
11月29日(金)
16:00 ドイツ10月小売売上高
16:45 フランス11月CPI速報値 ☆
16:45 フランス10月PPI
16:45 フランス7〜9月期GDP改定値
17:55 ドイツ11月失業率
19:00 ユーロ圏11月CPI速報値 ☆
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
11月18日(月)
週明けのユーロドルは東京時間はドル円の買いとともにユーロ円の買いも見られたことから底堅いスタートとなりました。海外市場に移ってからも一時的な下押しはあったものの、金曜高値を上抜けるとストップも巻き込み1.0607レベルまで買われてから、若干押しての引けとなりました。
11月19日(火)
ユーロドルは欧州市場に入りウクライナがロシアに向けて長距離ミサイルによる攻撃を行ったこと、またロシアが核ドクトリンを変更したと伝わったことからリスクオフによる株安とユーロ売りが広がりました。影響が特に大きい欧州や北欧の株式市場は軒並み大幅安、ユーロも対ドルだけでなく、対円やクロスでも売られる展開となりましたが、ロシア外相の核戦争が起きない立場との発言を受けて行って来いとなりました。また併せてイランが各施設への査察を受け入れることで合意と発表されたことも買い戻しの助けとなりました。
11月20日(水)
ユーロドルは早朝こそ底堅いスタートとなりましたが、ウクライナとロシアとの戦争が激化するリスクを考えると買うことはできず、すぐに下げに転じ終日売りが続く流れとなりました。NY市場では前日安値を下抜け1.0507レベルまで下押しした後に若干戻して引けました。
11月21日(木)
ユーロドルは東京市場では動きが鈍かったものの欧州市場に入り、ロシアがウクライナに向け中距離ミサイルで報復攻撃したことを受け改めて売りが広がりました。その後は買い戻しも見られましたが、NY市場に入りECB追加利下げとロシアウクライナの戦争激化懸念から1.0462レベルと年初来安値を更新し安値圏での引けとなりました。
11月22日(金)
ユーロドルは東京時間は方向感が見られないもみあいを続けていましたが、欧州時間に入り発表されたPMI速報値が軒並み弱く下落。ウクライナとロシアとのミサイル撃ち合いも収まる様子が見られず、地政学的にもユーロを買う材料は無く、1.0331レベルの安値をつけました。その後は週末前の買い戻しも見られ1.04台を回復しての週末クローズとなりました。
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