8月27日夜から28日夜への乱高下は一服、106円では戻り売りに圧される
〇ドル円、9/1深夜106.15まで上昇するも、106円超えは再び売られ106円台維持に至らず
〇米8月製造業景況指数、市場予想大きく上回る56.0で米国株高とドルの買い戻しを助長
〇米FRBブレイナード理事の金融緩和拡大姿勢で、米長期国債買われ10年債、30年債共に利回り低下
〇米長期債利回り低下傾向で、メジャー通貨に対してはドル安進行の流れに
〇105.50割れからは下げ再開で8/28夜安値105.17前後試し、105円台序盤は押し目買いも入りやすい
〇106.15超えからは106.25から106.50にかけての試し、106.50手前は戻り売りに注意
【概況】
ドル円は8月27日夜のパウエル米連銀議長によるジャクソンホール講演に対する反応と28日午後の安倍首相辞任報道により乱高下状態が続いた。パウエル議長講演では物価上昇率が2%を超えてもゼロ金利を長期間継続する姿勢が示されたことでいったんドル売りとなったがそれ以外でのサプライズ内容はないとみて米長期債利回り上昇と共にドル高がぶり返し、ドル円は27日夜安値105.59円へ急落したところから28日昼高値106.94円まで1.35円の急上昇となった。しかし28日午後の安倍首相辞任報道から急激な円高となり、28日夜には105.17円まで下落して28日昼高値からの下げ幅は1.77円となった。辞任はないだろうとみていた市場にはサプライズ報道だったことで先行き不透明感からクロス円の手仕舞いで円の買い戻しが集中したためと思われるが、27日夜からユーロ等が上昇してドル安再開に入っていたことも重なったために急落商状に陥ったようだ。
辞任騒動による急落一巡で31日は揺れ返しの上昇となったものの、その一方ではユーロやポンド及び豪ドル等の上昇は続いていたために31日夜に106.08円まで戻したところからは再び下げたが、105.50円割れを回避して9月1日深夜には米ISM製造業景況指数が予想を超えたことや米国株高により106.15円まで上昇した。しかし106円超えは再び売られて106円台維持には至らなかった。
【米長期債利回りは低下傾向、米連銀はジレンマ?】
9月1日は米国株高となり、週末に反落していたNYダウは前日比215.61ドル高と反騰、ナスダック総合指数は同164.21ポイント高となり3日連続で終値ベースでの史上最高値を更新した。米サプライ管理協会(ISM)が発表した8月の製造業景況指数が56.0となり7月の54.2から上昇して市場予想の54.5を大きく上回ったことが製造業の復興感を強めて米国株高とドルの買い戻しを助長したようだ。
しかし株高の一方で米長期国債は買われて米10年債利回りは前日比0.04%低下の0.67%となり、30年債利回りも0.06%低下の1.42%となった。米FRBのブレイナード理事が1日の講演で金融緩和拡大への積極姿勢を示したことが影響したと思われる。ブレイナード理事は「金融政策の軸足を安定化から緩和に移すことが重要」「追加緩和についても今後すべての手段を議論する」と述べている。
8月20日未明に公開された米FOMC議事録ではYCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作)への消極姿勢が示されたとして米長期債利回りが上昇に転じ、8月27日のパウエル議長によるジャクソンホール講演でも長期金利を抑制するような言及が見られなかったために長期債利回り上昇が続き、米10年債利回りは0.79%まで上昇した。しかしゼロ金利政策の長期化とともに量的緩和の拡大姿勢は維持されているとみてその後は長期債利回り低下へ転じている。
ナスダックが連日の史上最高値を更新しているのは、アフターコロナの復興期待が背景だが、米連銀によるゼロ金利と量的緩和による過剰流動性供給が投機マネーとなって株買いを助長しているからといえる。米連銀にとっては過度な金融緩和は資産インフレ、金融市場のバブル形成となりバブル破裂のリスクを負うこととなるために避けたいところかもしれないが、金融緩和拡大期待で既に走りだしている株式市場にとっては金融緩和拡大姿勢の継続という大前提が崩れると足元のコロナ不況を再認識して崩れかねないため、米連銀としても舵取りが難しいところと思われる。しかし、リーマンショック対策時と同様にある程度の資産インフレ進行・バブル形成となることが脆弱な実体経済を持ち堪えさせるには必要であり、米連銀の緩和拡大姿勢は続き、米長期債利回りも再び低下傾向を辿ってメジャー通貨に対してはドル安が進行してゆくのだろうと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月28日の急落とその後の半値戻しを踏まえて8月28日昼高値を直近のサイクルトップ、28日夜安値を同サイクルボトムとした強気サイクル入りとした。また高値形成期を9月2日の日中から4日にかけての間としたが、戻りは短命の可能性があるので105.50円割れからは下げ再開と仮定するとした。
9月1日の反落時も105.50円以上を維持して深夜に戻り高値を切り上げたので、まだ上昇余地は残るが、106円到達では売られているので下落再開に向かいやすいところとみて、105.50円割れからは弱気サイクル入りと仮定して9月2日夜から4日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では8月31日夜及び9月1日夜の上昇では先行スパンを突破しきれずに終わった。105円台後半での往来となっているので遅行スパンは実線と交錯し始めると思われる。105.50円以上での推移中は上昇余地ありとし、1日夜高値超えからはもう一段高へ進むとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。105.50円割れからは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は8月31日夜高値と9月1日夜高値がほぼフラットなのに対して指数のピークがやや切り下がっているために弱気逆行となる可能性がある。40ポイント以上での推移中は60ポイント超えから高値切り上げへ進むとみるが、40ポイント割れからは弱気逆行による下落期入りとみて30ポイント以下への低下を伴う下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、105.50円を下値支持線、9月1日深夜高値106.15円を上値抵抗線とする。
(2)105.50円以上での推移中は上昇余地ありとし、106.15円超えからは106.25円から106.50円にかけてのゾーンを試すとみる。106.50円手前は戻り売りにつかまりやすいとみてその後に106円を割り込むところからは下げ再開を疑う。
(3)105.50円割れからは下げ再開とみて8月28日夜安値105.17円前後試しを想定する。105円台序盤は押し目買いも入りやすいところとみるが、105.50円を割り込んだ後も105.75円以下での推移が続くうちは一段安警戒とし、8月28日夜安値を割り込む場合は104円台後半を目指す流れとみる。
※ 週末の米雇用統計まで106円強から105円強までのレンジ内での推移を続ける可能性もあると思われ、大きな流れは雇用統計後からとなるのではないかと考える。
【当面の主な予定】
9/2(水)
10:30 (豪) 4-6月期 GDP 前期比 (1−3月 -0.3%、予想 -6.0%)
10:30 (豪) 4-6月期 GDP 前年同期比 (1−3月 1.4%、予想 -5.3%)
18:00 (欧) 7月 生産者物価指数 前月比 (6月 0.7%、予想 0.5%)
18:00 (欧) 7月 生産者物価指数 前年同月比 (6月 -3.7%、予想 -3.4%)
21:15 (米) 8月 ADP非農業部門就業者数 前月比 (7月 16.7万人、予想 95.0万人)
23:00 (米) 7月 製造業新規受注 前月比 (6月 6.2%、予想 6.0%)
23:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、対話集会
25:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
26:00 (独) バイトマン独連銀総裁、講演
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
9/3(木)
10:30 (豪) 7月 貿易収支 (6月 82.02億豪ドル、予想 50.00億豪ドル)
10:45 (中) 8月 財新サービス業PMI (7月 54.1、予想 54.0)
16:50 (仏) 8月 サービス業PMI改定値 (速報 51.9、予想 51.9)
16:55 (独) 8月 サービス業PMI改定値 (速報 50.8、予想 50.8)
17:00 (欧) 8月 サービス業PMI改定値 (速報 50.1、予想 50.1)
17:30 (英) 8月 サービス業PMI改定値 (速報 60.1、予想 60.1)
18:00 (欧) 7月 小売売上高 前月比 (6月 5.7%、予想 1.4%)
18:00 (欧) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 1.3%、予想 3.0%)
21:30 (米) 7月 貿易収支 (6月 -507億ドル、予想 -527億ドル)
21:30 (米) 4-6月期 非農業部門労働生産性改定値 前期比 (速報 7.3%、予想 7.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 100.6万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1453.5万人)
22:45 (米) 8月 サービス業PMI改定値 (速報 54.8、予想 54.8)
23:00 (米) 8月 ISM非製造業景況指数 (7月 58.1、予想 57.0)
26:00 (米) エバンズ・シカゴ連銀総裁、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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