4か月サイクルの底形成期における三角持ち合い
〇トルコリラ円、新たな安値更新を回避、14.30前後の下値支持線を維持できるかの試しへ
〇ドル円が105円を割り込む場合104.17試し、安値更新でトルコリラ円にも売り圧力となる可能性
〇円高の進行や対ドル、対ユーロ等でトルコリラ安が重なると下落規模も拡大か
〇14.52超えで14.65試し、14.50以上は反落警戒圏に
〇14.30割れで下げ再開、8/19午前安値14.21、8/10安値14.07を目指す下落期入りへ
【概況】
トルコリラ円は8月24日朝安値の後は新たな安値更新を回避して14.30円を下値支持線としたややジリ高の推移となり、8月28日午後にはパウエル米連銀議長講演後のドル円上昇を背景に14.52円まで戻り高値を切り上げた。しかし8月28日午後からは安倍首相辞任報道から急激な円高となったために下落に転じて28日深夜には14.31円まで失速した。8月24日以降の安値更新を回避して14.30円台も維持して週を終え、戻り高値を若干切り上げる動きも見られたものの8月21日夜高値14.65円には届かずに上値の重さも再認識させられた印象だ。
トルコリラ円は7月3日安値15.40円の後は7月27日に一段安に入るまでは横ばい推移が続いていた。対ドルでのトルコリラが6.85リラを中心とした膠着状態での推移にとどまり、ドル円も107円を挟んだ持ち合い推移にとどまっていたためだったが、7月後半からは対ユーロでのリラ安が加速に入り、対ドルでも通貨当局による抑制が効かなくなってリラ安が進行し始め、さらにドル円も107円前後の持ち合いから転落して7月31日に104.17円まで急落したため、トルコリラ円も横ばい推移から転落となった。
7月31日以降はドル円の下落がいったん落ち着いたためにやや戻す場面もあったが、対ユーロ及び対ドルでトルコリラが史上最安値を更新する下落に入ったために8月10日安値14.07円まで一段安となった。その後も対ユーロ及び対ドルでのトルコリラ安が続いたが、ドル円が8月14日未明まで戻したことでトルコリラ円の安値更新は回避されてきた。
8月18日に対ユーロ及び対ドルでトルコリラが最安値を更新した際も新たな安値更新は回避されたが、14.30円前後を下値支持線としてややジリ高の推移程度に留まってきたのだが、8月28日の反落により14.30円前後の下値支持線を維持できるのかどうか試し始めた印象だ。
【円高とドル全面安の再開】
ドル円は8月28日午後に安倍首相辞任報道から急落に転じた。8月19日午前安値105.08円から戻してきたのは、8月20日未明に公表された米連銀のFOMC議事録においてYCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作)への消極姿勢が示されたこと、米長期国債の大量入札による需給緩和感による債券安・長期債利回り上昇によるドル高が背景だった。
8月27日夜のパウエル米連銀議長によるジャクソンホール講演でもいったんドル安へ振れたものの早々に切り返して8月19日以降の高値を更新し、28日午前も米長期債利回りが高止まりしていたことでドル円は106.94円まで戻り高値を切り上げていたのだが、すでに28日午前からはユーロやポンド及び豪ドル等が上昇再開に入ってドル安が進み始めていた中で28日午後に安倍首相辞任の速報が入ったことでドル円においても円高ドル安へと急旋回が始まった。
28日夜には105.17円まで下げて8月19日安値105.08円に迫り、底割れはひとまず回避したものの、直前7日間の上昇幅を一挙に解消する急落となった。8月28日のドル円の日足は高値から安値まで1.77円の下げ幅となる大陰線であり、8月14日未明高値に届かずに急落したことにより、7月31日からの反発基調を継続できずに下落再開に入り始めた印象がある。
米国の大量国債入札による債券需給の緩和が米国株高とともに米長期債利回りの上昇を招いたことでドル円も反発していたわけだが、米連銀のゼロ金利長期化と量的金融緩和拡大姿勢の継続により一時的な利回り上昇が発生してもトレンドとしては長期金利低下傾向を継続すると再認識されれば、3月後半からのドル安基調も継続し、ドル円も短期的な戻りを消化しつつもう一段安を試して行きやすいのではないかと思われる。105円を割り込む場合は7月31日安値104.17円試しへ向かい、さらに安値更新へ進めばトルコリラ円にも大きな売り圧力となってくるのではないかと思われる。
【トルコリラは対ドル及び対ユーロでの史上最安値近辺に留まる】
対ドルでのトルコリラは8月26日に7.42リラを付けて史上最安値を更新したが、当日から8月28日までの3日間は反発している。
メジャー通貨や資源通貨等におけるドル高が一服して8月27日夜のパウエル議長講演後はドル安へ傾斜していることが背景と思われるが、7.30リラを超える反発局面では戻り売りにつかまっており、史上最安値近辺に留まる状況となっている。
対ユーロでのトルコリラは8月18日に8.82リラの史上最安値を更新した後は8月21日に8.46リラまでいったん反発したものの再び売られて8月26日には8.78リラへ下落した。先週後半は小動きにとどまっているが、対ドル同様に史上最安値近辺での推移にとどまっている。
対ドルでのトルコリラは7月後半から通貨当局による抑制が効かなくなり、外貨準備不足と消費者物価上昇率が政策金利を上回る実質マイナス金利状態の継続を背景に急落してきた。トルコ中銀は利上げを見送り3会合連続で政策金利を据え置いたもののオーバーナイトの貸し出し金利窓口を通常よりも割高なものを適用してトルコリラ供給を絞り通貨防衛に動いたことでひとまず落ち着いているが、史上最安値を更新してきたトルコリラ安の背景は変わらないため、対ドル及び対ユーロでの史上最安値更新へ再び向かっても不思議ないところであり、トルコリラ円にとっては円高の進行と対ドル等でのトルコリラ安が重なると下落規模も大きくなりかねないところと注意したい。
【4か月サイクルの底形成手前の時期、40週サイクルの底打ち期はかなり先か】
トルコリラ円は概ね4か月周期の底打ちサイクルで推移してきた。2018年8月13日の通貨危機的暴落で当時の史上最安値をつけた後は、2019年1月3日、同年5月9日、同年8月26日、2020年1月6日、同年5月7日で直近のサイクルボトムを付けた。すでに6月2日高値で戻り一巡となって下落期に入っているが、今回の底形成期は5月7日安値から4か月目となる9月序盤を前後する時期と想定される。
8月10日安値で史上最安値を更新した後は下げ渋っているものの、8月12日高値から8月21日高値へと戻り高値は切り下がっている。8月24日朝安値の後は新たな安値更新を回避して14.30円台を維持しているが、戻り高値切り下がりと14.30円をほぼフラットな下値支持線とした三角持ち合いであり、14.30円割れから続落に入れば三角持ち合い下放れに入り、8月10日安値を割り込んで一段安へ向かう可能性が考えられる。仮に8月10日安値を割り込む一段安に入る場合、9月4日の米雇用統計を前後する時期に差し掛かったところで4か月サイクルの底を付けていったんは戻しに入る可能性も考えられる。もちろん、さらに長引く可能性もあると注意する。
4か月サイクルの底を付けて戻しに入る場合、4か月サイクルのピークを付ける時期は6月2日高値を基準として10月序盤を前後する時期と想定される。5月7日底の後は6月2日高値まで1か月近い上昇だったことから同様の展開もあり得るところだが、戻りは短い可能性もある。1月6日底からの上昇は1月17日高値まで数えで10日しか続かなかった。このため、仮に底打ちの可能性が考えられる反騰が発生する場合は、まず1週間、2週間程度の反騰を想定し、反騰幅の半値以上を削る下落発生の場合には早々に次の4か月サイクルによる下落期に入る可能性を警戒すべきということになるかもしれない。
4か月サイクルで底打ち反騰したとしても、それよりも上位のサイクルではまだまだ安値試しを続けてゆきやすい状況にあることも抑えておく必要がある。週足レベルでの底打ち周期は、概ね40週前後のサイクルで推移しているが、2018年8月13日底から39週目の2019年5月9日で前々回の底を付け、さらに53週目の今年5月7日安値で直近の底を付けたと思われるのだが、すでに今年5月7日安値を割り込んでいるため、40週サイクルレベルでは新たな弱気サイクルに入ってまだ序盤の時期に過ぎないと思われる。40週サイクルにおける次の底打ち期は今年の年末から来年初頭、さらにやや長引く場合は来年春にかけての間まで伸びる可能性もある。
【当面のポイント】
(1)8月24日朝安値14.28円の後は14.30円が下値支持線となってきた。一方で8月24日朝安値以降は8月26日夕、8月28日午後と戻り高値をやや切り上げてきた。このため14.30円を維持するうちは高値切り上げを試す可能性が残るので、8月28日午後高値14.52円を超える場合は8月21日夜高値14.65円をもう一度試す可能性がある。ただし、8月10日以降を日足レベルの三角持ち合い型の調整期に過ぎないとすれば、14.50円以上は反落警戒圏と思われる。
(2)14.30円割れからは下げ再開を疑い、8月19日午前安値14.21円、次いで8月10日安値14.07円を目指す下落期入りと考える。8月10日安値を割り込む=対円での史上最安値を更新するには対ドルや対ユーロにおいてもトルコリラが史上最安値を更新するような下落に入る必要があると考えるが、14.30円を割り込んだ状況が続くうちは安値試しを続けやすいとみる。
(3)9月4日の米8月雇用統計を前後してドル円が反騰する場合は4か月サイクルレベルの反発期に入る可能性がある点に注意する。その際は、雇用統計後に一段安した後に下げ一服から戻しに入るケース、雇用統計をきっかけに戻しに入るケースの両面に注意する。
※ 8月31日のトルコ4−6月期GDP、9月3日のトルコ消費者物価上昇率、9月4日の米8月雇用統計等からの変動に注意する。
【当面の主な経済指標等の予定】
8月28日
16:00 8月経済信頼感指数 (7月 82.2、予想 79.0)
8月31日
16:00 4−6月GDP 前年比 (1−3月 4.5%、予想 -12.4%)
16:00 4−6月GDP 前期比 (1−3月 0.6%、予想 -8.2%)
16:00 7月貿易収支 (6月 -28.5億ドル)
9月1日
16:00 8月イスタンブール製造業PMI (7月 56.9、予想 54.1)
9月3日
16:00 8月消費者物価 前年比 (7月 11.76%、予想 12.1%)
16:00 8月消費者物価 前月比 (7月 0.58%、予想 1.2%)
16:00 8月生産者物価 前年比 (7月 8.33%、予想 10.7%)
16:00 8月生産者物価 前月比 (7月 1.02%、予想 1.6%)
9月10日
16:00 6月失業率 (5月12.9%、予想 15.8%)
20:30 週次外貨準備高
9月11日
16:00 7月経常収支 (6月 −29.3億ドル)
9月14日
16:00 7月鉱工業生産 前年比 (6月 0.1%)
16:00 7月小売売上高 前月比 (6月 16.5%)
16;00 7月小売売上高 前年比 (6月 -0.8%)
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