ドル円 戻り高値を見てドル売りが先行しやすい(週報8月3週)

ドル円単体よりも周辺市場の動きの影響の方が大きかったと言えるでしょう。

ドル円 戻り高値を見てドル売りが先行しやすい(週報8月3週)

戻り高値を見てドル売りが先行しやすい

〇先週後半は107円台乗せるが目先の高値か
〇米、コロナ感染拡大により景気減速懸念高まる
〇金曜発表の主要国PMI速報値に注目、TikTok等の米中対立激化要注意
〇今週は105.95をサポートに107.00をレジスタンスとする流れ

今週の週間見通し

先週のドル円は前週後半からのドル買いの動きが強まり週後半は107円台乗せとなりましたが、107円台では売りも見られザラバチャートの動きを見ている限り107円台は目先の高値をつけたように見えます。ただ、週前半も106円台では上値が重かったにも関わらず、最終的には抜けたため、ドル円単体よりも周辺市場の動きの影響の方が大きかったと言えるでしょう。

ひとつは2000ドル台後半から調整売りが続き一時1862ドル台へと売りが強まったドル建て金の動きです。金価格上昇が米ドル離れの象徴的な動きとなっていた面もあり、金価格の下げはドル買い戻しのきっかけになりました。また米金利上昇も為替市場ではドル買いの動きにつながりました。10年債利回りは週初の0.546%から木曜には0.727%と6月24日以来の金利高となりました。

いっぽうで、全ての市場に影響するであろう新型コロナの感染拡大は一向に止まらず、米国では全体としての1日あたりの感染者数は7月下旬をピークとしているものの、一部の週では急増している状況に変化は無く、新型コロナによる死者数も例年の統計との比較から実際には5割近く多いという推計も出てきました。ニュージーランドではオークランドが再ロックダウンとなりましたし、ワクチンが行き渡るまでの期間を考えると今の状況が当面は続くと考えざるを得ません。

米国では大統領令で失業給付金は減額して継続していますが、9月には航空業界への補助金が切れるなど、当初は夏過ぎには落ち着くという見方は完全に裏切られ、終わりの無い財政出動もできない状況で今後の景気減速懸念は以前よりも確実に高まっています。そうした中で本日から秋の大統領選に向けて民主党の全国大会が開催されます。民主党の副大統領候補はバイデンメモの写真ですっぱ抜かれたハリス上院議員となったことで意外感はありませんでした。

既にバイデン陣営はトランプ大統領をリードしている中で、黒人女性初の副大統領候補ということがポジティブな結果につながるというのが大方の見方ですが、トランプ大統領は前回の大統領選では選挙当日まで不利と見られていたにも関わらず当選しましたし、新型コロナによる不況も現政権が悪いわけではありませんので、来週の共和党全国大会以降どのように切り返してくるのかも含め、いよいよ大統領選も材料のひとつとして見ていく時期になったと言えるでしょう。

それ以外では大きく環境が変化したこともなく、FRBとECBの前回会合の議事要旨公表や、金曜に集中する主要国の8月製造業・サービス業PMI速報値が注目材料となりますが、最近の経済指標は絶対的に悪い中で、どの程度改善しているのかというあたりを見ていることから方向感が決まるほどの材料とはならないと言えます。また米中間の通商合意後の点検協議は延期となりましたが、TikTok等の問題もあり引き続き米中対立激化の状況は要注意です。

テクニカルにも見てみましょう。

6月高値109.85と7月安値104.19の半値戻しが107.02(赤のターゲット)でしたが、先週の高値が107.05とほぼ一致したことを重視したいと思います。つまり、ドル高の調整は短期的には先週高値で終わり、現在は直近の上げに対しての調整を考えます。すると、7月安値と先週高値との押しを考えることとなりますが、38.2%押しが105.96(青のターゲット)となっていて同水準までの調整はあるだろうという見方です。

状況によっては半値押しの105.62(青のターゲット)も考えた方がよいのでしょうが、今週はドル円の値幅もそこまでは広がらないと思いますし。106円台での上値の重さを抜けてからの107円台でしたから106円が現状はサポートとなりやすいという見方でよさそうです。今週は105.95レベルをサポートに107.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2020年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、クリーブランド、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

8月17日(月)
08:01 英国8月住宅価格
08:50 本邦4〜6月期GDP速報値
23:00 米国8月NAHB住宅市場指数
25:00 (ボストン連銀総裁講演)
**:** 米国民主党全国大会(〜20日)

8月18日(火)
08:50 本邦7月貿易収支(通関)
10:30 豪中銀理事会議事要旨公表
17:00 デギンドスECB副総裁講演
21:30 米国7月住宅着工・許可件数

8月19日(水)
07:45 NZ4〜6月期PPI
15:00 英国7月CPI・PPI
18:00 ユーロ圏7月CPI
23:30 週間原油在庫統計
27:00 FOMC議事要旨公表

8月20日(木)
15:00 ドイツ7月PPI
18:00 ユーロ圏6月建設支出
20:00 トルコ中銀政策金利発表
20:30 ECB理事会議事要旨公表
21:30 米国新規失業保険申請数
21:30 米国8月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
23:00 米国7月景気先行指数
26:00 (サンフランシスコ連銀総裁講演)


8月21日(金)
08:01 英国8月消費者信頼感
08:30 本邦7月CPI
15:00 英国7月小売売上高
16:15 フランス8月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ8月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏8月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 英国8月製造業・サービス業PMI速報値
22:45 米国8月製造業・サービス業PMI速報値
23:00 ユーロ圏8月消費者信頼感速報値
23:00 米国7月中古住宅販売件数

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

8月10日(月)
東京が休場となった週明けのドル円は朝方こそドル売りが先行したもの下げきれず105.72を安値に欧州市場序盤からはユーロドルとともにドル買いの動きとなりました。NY市場が始まる直前からはドル売りが目立ちNY昼前には105.71とわずかに日中安値を更新したものの下げきれず、106円に近づいての引けとなりました。

8月11日(火)
ドル円は東京前場、欧州市場序盤と106円台前半を試したものの戻り売りも根強く押される展開が続きました。しかし下値も固く106円割れでは既にドル買いが出てくる流れとなりNY市場に入りましたが、PPIが予想よりも強かったことをきっかけに米長期金利が上昇、その動きからドル買いとなり106円台前半を上抜けると引けには106.69レベルの高値をつけ、やや押してのクローズとなりました。

8月12日(水)
ドル円は東京前場に前日高値を上抜けるとドル買いの流れが再開しましたが、きっかけとなったのはドル建て金価格が前日に続いて下げて始まったことでした。その後、金価格は持ち直しましたが欧州市場以降は日経先物が上昇する動きとともにNY市場朝方には107.02レベルの高値をつけ、その後は106円台後半でもみあいのまま引けました。

8月13日(木)
ドル円は前日に107円台での上値の重さを確認し東京市場では106.57レベルまでドル売りの動きが続きました。しかし106.50ではドル買いの動きが見られ海外市場に移ってからは買い戻しが目立ち再び107円台乗せ。NY市場では前日に続いて米金利上昇も重なって107.05レベルとわずかに高値を切り上げたものの上がりきらずに引けました。

8月14日(金)
東京市場のドル円は前場の間は動かず、後場に入ってからは107円台での上値の重さから週末を前にしたポジション調整の売りが見られました。欧州市場に入り株価の下げからじり安の動きを続け、米中貿易協議延期も嫌気されNY昼前には106.44レベルの安値をつけ、その後は若干戻しての引けとなりました。

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