トルコリラ円見通し ドル円の反発と対ドルでのリラ急落一服で下げ渋る
〇トルコリラ円、8/10朝史上最安値更新後は14.50を挟んだ揉み合い
〇対ドル・対ユーロでのリラ急落基調続く、リラへの先安感・通貨危機への不安拡大
〇トルコリラ円、4か月周期による下落期、8月末にかけて安値試し続く流れか
〇14.25以上で推移中は上昇余地あり、14.60超えから14.75前後への上昇想定、14.75円以上は反落警戒
〇14.25割れからは14.07試しとし、13.80円前後への下落を想定、13.80以下は反騰注意
【概況】
トルコリラ円は8月6日夜に14.32円の安値を付けて5月7日に付けた14.61円を割り込んで対円での史上最安値を更新した。トルコの外貨準備高不足とトルコリラの流動性低下を背景に7月に入ってから対ユーロでのトルコリラ急落が進み、対ドルでも6.85リラを中心とした小動きに抑制しきれなくなって急落となり、対ユーロ及び対ドルでトルコリラが史上最安値を更新する流れとなったことが背景だった。
週明け朝には14.07円まで一段安となりトルコリラ円としての史上最安値を更新したが、その後は対ユーロ及び対ドルでのトルコリラ安が一服してやや持ち直したことでトルコリラ円も下げ渋りとなり、8月10日の日中から11日朝にかけては14.50円を挟んだ揉み合いとなっている。
8月10日夜にかけてはドル円が106円台序盤へ戻す中でトルコリラ円もやや上昇して深夜には14.60円の高値を付けたが、10日朝へ一段安する前の8月7日夜高値14.75円には届かずにいる。
【対ドル・対ユーロでのトルコリラ急落基調続く】
トルコリラは8月6日に対ドルで7.32リラを付けて5月7日に付けた7.27リラを割り込み史上最安値を更新したが、7日には7.37リラまで続落して最安値を更新した。8月10日は新たな安値更新を回避したものの終値ベースでは8月5日からの上昇を継続している。
トルコ国営銀行等による介入や取引規制の動きを背景に対ドルでは6.85リラを中心としたわずかな値動きに管理されていたが、規制が効かなくなってドル高リラ安が一挙に進行した印象だ。7月26日の週は前週比1.80%安、8月2日の週は前週比4.62%安と大幅下落している。
対ドルでのトルコリラ急落に先行したのは対ユーロでのトルコリラ急落だったが、7月26日の週の上昇で前週比2.88%安の下落となり8.30リラの安値を付けて2018年8月のトルコ通貨危機時につけた安値8.23リラを割り込んで史上最安値を更新したが、8月2日の週も前週比4.70%安と大幅続落して8.72リラまで最安値を更新した。週末値ベースでは6月21日の週から7週連続の下落となった。
8月10日は新たな安値更新を回避して8.49リラまでいったん戻したものの、その後は再び下落に転じており8.60リラ台へ下げている。大幅下落にやや一服感も見られるものの、トルコリラへの先安感、通貨危機への不安は拡大している。
対ユーロ及び対ドルでのトルコリラの大幅下落と史上最安値更新は、本来は高金利通貨であったところをトルコ中銀が昨年7月から大胆な利下げに入り、今年5月まで9会合連続での利下げを実施して政策金利である週間レポレートが2019年6月の24.0%から今年5月には8.25%まで低下させたこと、その一方で消費者物価は6月時点で12.62%、7月時点で前年比11.76%と10%以上の水準となり、実質的なマイナス金利状態が拡大したことにより高金利通貨の魅力が大幅に後退していることにある。
外貨準備高が大幅に減少しており、通貨貿易のための介入力が低下してきたために欧米勢によるトルコリラ売りによる下落を阻止できなくなってきているとの認識も広がっている。
コロナショックによる新興国通貨全般の下落が一服していたが、ここにきて新興国通貨に対するドル高感も全般に強まってきている。ロシア、インド、南ア等と共に中南米の感染拡大と景気悪化が中南米通貨安を再燃し始めていることもトルコリラ急落との負の相乗効果を招いている印象だ。米中対立の深刻化がアフターコロナの復興がなかなか進まない中で新興国には重石となりつつあるようだ。
【ドル円はやや戻す】
トルコリラ円は対ドルでのトルコリラの動きが一服すればドル円との同調性がメインとなるが、ドル円は7月31日安値104.17円から8月3日深夜高値106.46円まで戻ってから8月7日深夜安値105.29円まで凡そ半値押しとなる下落となっていたものの、米雇用統計が予想以上の改善となったことやメジャー通貨におけるドル安が一服していることで106円台を回復して戻している。このためトルコリラ円も8月10日朝に最安値を更新した後は下げ渋っているところだ。
ドル円が8月3日深夜高値106.46円を超える上昇へ発展すれば、トルコリラ円にとっては円安による押し上げ効果で新たな安値更新を回避して戻りを試しにかかってもよいところだが、対ユーロ及び対ドルでの急落商状が加速し始めればフラッシュクラッシュ的な下げにとどまらずに一段安へ向かいかねないと注意したい。
【4か月サイクルによる下落期、月末にかけて安値試し続くか】
トルコリラ円は概ね4か月周期の底打ちサイクルで推移してきた。2018年8月の通貨危機的暴落後は、2019年1月3日底、同年5月9日底、同年8月26日底、2020年1月6日底、同年5月7日底とほぼ4か月間隔で底打ちしてきた。現状は5月7日底からの上昇が6月2日高値で一巡して下落期に入り、すでに5月7日安値も割り込む一段安に入っている状況だ。
4か月サイクルにおける次の底打ち期は5月7日安値を基準として9月序盤にかけての間と想定されるが、8月後半に重要な底を付けている(2018年8月の通貨危機等)ことも多いため、当面は8月末にかけて安値試しを続けてゆく流れとなりやすいと考え、戻り売り有利の展開と考える。
【60分足の一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月10日日朝に最安値を更新してから戻しているため、10日朝安値を直近のサイクルボトムとする。トップ形成期は10日夜から12日午後にかけての間と想定されるので既に反落注意期にあるが、14.25円以上での推移中は上昇余地ありとし、14.25円割れからは下げ再開を警戒し、10日朝安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして13日朝から17日朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では8月6日夜以降14.50円を挟んでの騰落が続いているので方向感に乏しい。14.50円を超えてくれば先行スパン突破となり高値試しへ進みやすくなるが、先行スパンから再び転落するところからは下げ再開を疑い遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は8月10日朝への一段安時には指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られたが、60ポイント前後に抵抗が見られる。このため60ポイントを超えて続伸に入らないうちは40ポイント割れからの下げ再開を疑う。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、14.25円を下値支持線、8月10日深夜高値14.60円を上値抵抗線とする。
(2)14.25円以上での推移中は上昇余地ありとし、10日深夜高値超えからは14.75円前後への上昇を想定するが、14.75円以上は反落警戒とみる。
(3)14.25円割れからは10日朝安値14.07円試しとし、底割れからは13.80円前後への下落を想定する。13.80円以下は反騰注意とするが、10日朝安値を割り込んだ後も14.20円以下での推移なら12日も安値試しを続けやすいとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
8月13日
20:30 外貨準備 8月7日時点
8月14日
16:00 6月経常収支 (5月 −37.60億ドル)
16:00 6月鉱工業生産 前年比 (5月 -19.9%)
16:00 6月小売売上高 前月比 (5月 3.8%)
16:00 6月小売売上高 前年比 (5月 -16.7%)
8月20日
16:00 7月自動車生産 前年比 (6月 -5.4%)
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 8.25%、予想 8.75%)
20:30 週次、外貨準備高
8月21日
16:00 8月消費者信頼感 (7月 60.9)
17:00 7月観光客数 前年比 (6月 -96.0%)
注:ポイント要約は編集部
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トルコリラ円レポート月曜版(20/8/10)
トルコの当局の政策のまずさとテクニカルな材料が大きかったのですが、それ以外のトルコリラを取り囲む材料自体に目立った変化はありません
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