ドル円の上昇と対ドルでのリラ安一服でやや持ち直す
〇トルコリラ円、ドル円上昇と対ユーロ、対ドルでのトルコリラ安一服で12日未明14.76へ上昇
〇イスタンブール100株価指数11日前日比3.21%高、為替市場の落ち着きを好感した動き
〇14.50以上で推移中は上昇余地あり、12日未明高値14.76超えからは15.00前後への上昇を想定
〇14.50割れを弱気転換注意、11日朝安値14.35割れからは弱気サイクル入り、14.10以下は反発注意
【概況】
トルコリラ円は8月6日夜に14.32円の安値を付けて5月7日に付けた14.61円を割り込み対円での史上最安値を更新したが、その後はやや持ち直しており、11日は早朝に14.35円の安値を付けてからはジリ高で上昇に入り、ドル円が106円台中盤へ戻し、対ユーロ及び対ドルでのトルコリラ急落が一服したことで12日未明には14.76円へ上昇した。8月10日朝へ急落する前の8月7日夜高値14.75円をわずかに上抜いた。12日午前はやや下げているが11日朝安値割れには至っていない。
【ドル円の上昇】
ドル円は8月12日未明に106.68円まで上昇して8月3日深夜高値106.46円を上抜いた。ドル全面安が進んだ過程で7月31日には104.17円まで下げたが、ドル安にブレーキがかかったことで8月3日深夜高値106.46円まで戻し、8月6日夜安値105.29円までジリ安で下げたものの反騰に対する半値押しレベルにとどまって持ち直しに入り、先週末には106円台をいったん回復した。週明けも10日夜に106.19円、11日夕刻に106.23円と高値を切り上げ、11日深夜には米10年債利回りが上昇する中で日米金利差拡大感から上昇に勢いがついて8月3日深夜高値を超える状況に入った。
7月31日へのドル安円高はユーロ高を先頭としたドル全面安を背景としたものだったが、ユーロドルは7月31日高値を8月6日午後高値でわずかに上抜いたもののダブルトップ型を形成して下落に転じており、ドル全面安にブレーキがかかった印象であり、ドル円を押し上げている。米連銀によるコロナ対策での利下げと大規模な量的金融緩和が米長期債利回りを低水準に押し込んでいたことがドル安の背景だったが、今週は米10年債や30年債の大量発行が予定されているために需給緩和による債券市場での手仕舞い売りが長期債利回り上昇を招いたようだ。
ドル円の日足では7月31日に当日安値から高値まで2円近い上昇となる陽線を付けて二段階で戻しているため、同様に当日の安値から高値へ2円近い上昇となった昨年8月26日の底打ちとの類似性も考えられるところだ。再び米長期債利回りが低下傾向に入ればドル円の上昇も後ろ盾を失うが、当面は戻り高値を試しやすい状況とみて、トルコリラ円には下支えとなりやすい状況かもしれない。
【対ドルでのトルコリラ急落一服】
トルコリラ円の8月10日朝安値にかけての下落は外貨準備高不足を懸念しての欧米勢によるトルコリラ売りによるものだったが、対ユーロ、対ドルでのトルコリラ急落は8月11日一服している。
トルコリラは8月6日に対ドルで7.32リラを付けて5月7日に付けた7.27リラを割り込んで史上最安値を更新し、8月7日には7.37リラまで続落して最安値を更新した。8月10日は新たな安値更新を回避したものの終値ベースでは8月5日から4日間の大幅続落となった。しかし8月11日は高値で7.18リラまで反騰して終値ベースでも前日比1.31%高の上昇となった。
対ドルでのトルコリラ急落を助長したのは対ユーロでのトルコリラ急落が先行したためだったが、対ユーロでは8月7日に8.72リラまで史上最安値を更新していたが、8月10日は新たな安値更新を回避し、11日は前日比で1.32%高の反騰となった。
トルコ通貨当局による規制強化と市場介入により、対ドルでのトルコリラは6月半ばから6.85リラを中心とした小幅なレンジに限定された動きが続いてきたが、外貨準備不足による通貨防衛力の低下懸念が膨張したために欧米勢のトルコリラ売りが加速し、通貨当局の抑えが効かなくなったことで対ユーロでの下落が進み、対ドルでも6.85リラ前後での抑えが突破されて急落商状に陥った。
8月11日に対ユーロと対ドルでトルコリラが反騰したのは、トルコ中銀がプライマリーディーラーに対する取引規制を解除したことにより流動性が確保されたためにトルコリラ売りがいったん収まったためとされる。イスタンブール100株価指数も11日は前日比3.21%高と上昇し、為替市場の落ち着きを好感した動きとなっている。
対ドル及び対ユーロでのトルコリラ急落はひとまず落ち着いた可能性もあるところだが、外貨準備不足への懸念は解消されていない。常態的に経常赤字傾向にあるトルコでは、輸出収入と観光収入による補填が必須であり、新型コロナウイルスの感染拡大に対してはうまく制御に成功して経済活動も再開しているが、世界的な感染拡大が収まらないことにはトルコへの観光客が劇的に戻ってくることは難しく、先行きは財政的な厳しさに直面する可能性もあり、早々にトルコリラ安が再開しても不思議ないところだ。
【60分足の一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月10日朝に最安値を更新してから戻しに入ったため、11日午前時点では10日朝安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。トップ形成期を10日夜から12日午後にかけての間と想定したが、12日未明高値まで続伸してからはやや失速しているので既にサイクルトップを付けた可能性もある。このため8月11日朝安値14.35円を割り込まないうちは上昇余地ありとするが、11日朝安値を割り込む場合は弱気サイクル入りとして14日朝から18日朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では8月11日の上昇により先行スパンを突破して遅行スパンも好転している。このため先行スパンから転落しないうちは遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンから転落する場合は下げ再開と仮定して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は8月11日夕刻高値から12日未明高値への上昇に際して指数のピークがほぼフラットとなる弱気逆行が見られる。50ポイントを一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、60ポイント超えからは上昇再開とみるが、45ポイント割れからは下げ再開と仮定して30ポイント以下を目指す下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す
(1)当初、8月11日朝安値14.35円を下値支持線、8月12日未明高値14.76円を上値抵抗線とする。
(2)14.50円以上での推移中は上昇余地ありとし、12日未明高値超えからは15.00円前後への上昇を想定するが、15円以上は反落警戒とみる。
(3)14.50円割れを弱気転換注意とし、11日朝安値14.35円割れからは弱気サイクル入りとみて8月10日朝安値14.07円試しへ向かうとみる。14.10円以下は反発注意とするが、11日朝安値を割り込んだ後も14.50円以下での推移なら13日午前にかけても安値試しを続けやすいとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
8月13日
20:30 外貨準備 8月7日時点 (前週 466.7億ドル)
8月14日
16:00 6月経常収支 (5月 −37.60億ドル、予想 34.00億ドル)
16:00 6月鉱工業生産 前年比 (5月 -19.9%、予想 -12.7%)
16:00 6月小売売上高 前月比 (5月 3.8%、予想 -7.4%)
16:00 6月小売売上高 前年比 (5月 -16.7%、予想 -9.7%)
8月20日
16:00 7月自動車生産 前年比 (6月 -5.4%)
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 8.25%、予想 8.75%)
20:30 週次、外貨準備高
8月21日
16:00 8月消費者信頼感 (7月 60.9)
17:00 7月観光客数 前年比 (6月 -96.0%)
注:ポイント要約は編集部
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