ドル円見通し 米雇用統計後に戻すが8月3日深夜高値には届かず(週報8月第2週)

10日深夜には105.70円まで下げたものの10日午前安値割れを回避してその後はやや持ち直している。

ドル円見通し 米雇用統計後に戻すが8月3日深夜高値には届かず(週報8月第2週)

ドル円見通し 米雇用統計後に戻すが8月3日深夜高値には届かず

〇ドル円、8/7深夜ドル買戻し、106.04まで戻す、8/10は行って来いの商状
〇8/7発表の米雇用統計、失業率、非農業部門就業者数ともに市場予想下回るが雇用改善ペース鈍化の印象
〇ドル、対ユーロ、対新興国通貨においてドル高の傾向
〇米中対立、香港関連や中国IT企業排除の動きをめぐり、深刻化の様相
〇米国株高基調続く、感染のピーク減少傾向から経済活動継続の動き
〇105.70を上回るうちは上昇余地あり、106.19超えからは106.46試しとする
〇105.70割れから弱気サイクル入り105円台序盤への下落を想定、105.50以下で推移なら安値試しとみる

【概況】

ドル円はドル全面安が進む中で7月31日午前安値104.17円まで下落していたが、7月31日夜からのドル反発を反映して8月3日深夜高値106.46円までいったん戻した。その後はジリ安の推移となり8月6日深夜には105.29円まで安値を切り下げたが、7日夜の米雇用統計発表を控えて模様眺めとなり、105.50円を挟んだ小動きのまま雇用統計発表へ向かった。

米労働省が8月7日に発表した7月雇用統計では失業率が10.2%となり6月の11.1%から低下して3か月連続の改善となり、市場予想の10.5%を下回った。非農業部門就業者数も前月から176万3000人増となり市場予想の158万人増を超えた。前月の479.1万人増に続く改善となったが、米国南部や西部諸州の感染拡大が影響しており雇用改善ペースは鈍化している印象も与えた。失業率も4月に戦後最悪となる14.7%を付けてからは改善しているとはいえ感染爆発が発生する前の3.5%からは大幅に悪化した状況が続いている。
米雇用統計が予想よりは改善していたことで株式市場は上昇、為替市場はドルの買い戻しとなりドル円は7日深夜には106.04円まで戻した。

週明けの8月10日は日本市場が休場だったが序盤に105.69円まで小反落したものの10日夜は週末からのドル高基調が続いたために106.19円まで戻り高値を切り上げたが、106円を超えたところは再び売られ、10日深夜には105.70円まで下げたものの10日午前安値割れを回避してその後はやや持ち直している。
7月31日安値から8月3日深夜高値までの反発幅は2.29円であり、8月6日深夜安値までの下げ幅は1.17円で、凡そ半値押しまで緩やかに下落した処から持ち直している状況だ。

【米中対立とドルの反発】

7月に入ってからはドル全面安の流れが続き、特にユーロドルでのユーロ高が目立っていたが、ユーロドルは8月6日に1.1914ドルまで上昇して今年3月23日以降の高値を更新して2018年5月以来の高値水準に到達していたが、8月7日から反落している。
メジャー通貨の加重平均であるドル指数は3月20日からの下落基調を続けて8月6日には92.50ポイントまで下げて3月9日安値を割り込む一段安となり2018年5月以来の安値水準となっていたが、8月6日安値の後は下げ渋り、7日と10日は2日連続の上昇となっている。米雇用統計が強かったことでドルの買い戻しが入ったことに加え、レバノンの大爆発事故、米中対立の深刻化等がドル買い戻しを助長している印象だ。

新興国通貨の対ドルでの上昇もストップしている。株高によるリスク選好感からメジャー通貨が買われる中で新興国通貨売りが大幅に後退したとして持ち直しの動きに入っていたのだが、中南米の感染拡大と景気悪化による中南米通貨安の再燃、米中関係の悪化による先行き不安、トルコリラの急落等が新興国通貨全般を再び下落させ始めているが、これらもドル高圧力としてメジャー通貨におけるドルの反発要因となっている。
ブラジルレアルは8月10日に対ドルで5.49レアルまで下落、6月30日安安値に迫っており、6月8日からの下落が二段下げに入りつつある。ブラジル中銀が政策金利を0.25ポイント引き下げて過去最低の2%とし、追加利下げの可能性も示唆していることも影響している。

トルコ・リラは対ドル及び対ユーロ、対円で史上最安値を更新している。外貨準備高の減少により通貨貿易力が大幅に低下していることで市場介入による通貨安定に失敗し始めて欧米勢によるリラ売りが加速している。
ベイルート港の大爆発事件が発生したレバノンでは内閣が総辞職した。8月4日のベイルート港爆発では150人余りが死亡、数千人が負傷、数十万人が家を失ったが、財政破綻の中でも汚職事件が続いて政府批判が強まる中で事故への対応力も鈍く政情不安状況に陥っている。レバノンの政情不安は中東の地政学的バランスを崩し先行き不安を助長している。

【米中関係の深刻化続く】

米財務省は8月7日に香港の自治を侵害したとして香港の林鄭月娥行政長官ら11人を制裁対象に指定したが、中国外務省はこれを非難し、10日には米上院議員ら11人に対抗的な制裁を科すことを決定した。米中対立への懸念は日々強まっている印象であり、ゴールドにとっては下支え要因となっている。
トランプ米大統領は中国の動画投稿アプリTikTokおよび通信アプリの「微信(ウィーチャット)」が関わる取引を米国居住者が行うことを禁止する大統領令に署名、中国政府はティックトックの米事業を巡りマイクロソフトによる買収を受け入れずに対抗措置をとる可能性があると中国英字紙チャイナ・デーリーが報じている。最先端技術や5G等を巡る中国IT企業排除の動きは強まる一方であり、そこにウイグルや香港の人権問題、新型コロナウイルス感染源としての反中姿勢が深刻化している。

米メディアによると今年2月に発効した米中貿易協議「第1段階合意」の履行状況検証のために両国閣僚が8月15日に会談する予定だという。両国の通商協議が進展する流れとなれば市場の米中対立懸念もいったん後退する可能性があるが、険悪な状況になる場合は先行き不安が一挙に高まる可能性がある。

【米国株高基調続く、感染拡大のなかでも経済活動再開続く】

米国株式市場は概ね堅調だ。8月10日のNYダウは前週末比357.96ドル高と続伸して6月8日高値を上抜いて5か月振りの高値水準となった。ハイテク株中心のナスダック総合指数は前日比42.62ポイント安と下げたが、8月7日に史上最高値を更新するところまで上昇したために利益確定の売りに押された動きであり、最高値圏を維持した状況にある。
トランプ米大統領は8月8日に新型コロナウイルス感染拡大に対する追加経済対策の実施を大統領権限で命じ、7月末に失効した失業給付の上乗せについては週400ドルに減額した上で年末まで継続するとした。また家賃滞納者への強制退去の禁止措置なども延長した。ムニューシン財務長官は8月10日に追加経済対策に関する政権と議会の協議は早ければ週内に合意すると言及した。

米国の新型コロナウイルスの感染者数は8月9日時点で前日から4万4849人増の519.9万人、死者は16.5万人に達した。日々の感染者増加数は7月24日の7万8446人増をピークに減少傾向にあり、NY州を超える感染者数となったカリフォルニアやフロリダ及びテキサスの感染増加数もピーク時からは減少傾向だ。感染爆発のピークを超えて落ち着きを見せ始めればアフターコロナの復興期待が強まって金融市場先般も楽観ムードが強まる可能性もある。規制を緩めればまた次の感染拡大の波が来るのが新型コロナウイルスの特徴でもあるが、米ファウチ国立アレルギー感染症研究所長は先週末のメディアのインタビューで「少なくとも一つのワクチンの供給が年内に間に合う可能性がある」「再び経済活動を止める必要はない」と述べ、マスク着用など公衆衛生対策を取りながら経済活動の継続は可能との見方を示している。

【7月31日の日足陽線効果はまだ継続中】

7月31日に104.17円まで急落した当日に安値から高値まで1.88円の反発となり、下ヒゲの目立つ大きな日足陽線を付けた。3月24日高値から凡そ4か月の下落で下げ幅は7.54円に達したところからの反発だが、8月3日深夜高値からやや下げたものの新たな底割れは回避して概ね半値押しレベルまででしっかりしている。
4か月の下落で7円を超える下げ幅となってから当日の安値から高値まで2円近い反騰となる日足陽線を付けたのが昨年8月26日底であり、昨年4月24日高値から4か月、下げ幅は7.94円、当日の反騰幅は1.92円であり、今回の7月31日からの反騰に近い印象もある。昨年8月底からの上昇期に入ったような展開へ進めるのかどうか、105円台を維持して確りし、戻り高値を更新する流れへ向かえるのか、105円割れから続落に入って7月31日の陽線を潰す展開に陥るのか、今週の動きが注目される。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月31日午前安値から4日半となる8月6日深夜安値で直近のサイクルボトムを付けて強気サイクル入りした。トップ形成期は8月3日深夜高値を基準とすれば8月6日深夜から10日深夜にかけての間と想定されるので、10日夜高値ですでにサイクルトップを付けた可能性がある。
8月10日深夜反落時の安値105.70円を割り込む場合は弱気サイクル入りとみて11日夜から13日深夜にかけての間への下落を想定するが、10日深夜安値割れ回避で戻り高値を切り上げる場合はサイクルトップ形成期の延長入りにより8月3日深夜高値を試しにかかる可能性があると考える。

60分足の一目均衡表では8月7日夜の上昇で先行スパンを突破した。先行スパンを上回るうちは遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンから転落する場合はいったん下落期に入るとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は8月7日深夜高値から10日夜高値への高値切り上げに対して指数のピークがほぼ横ばいとなる弱気逆行が見られるので、10日深夜安値割れからは下落期に入るとみて30ポイント台への下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8月10日深夜安値105.70円を下値支持線、10日夜高値106.19円を上値抵抗線とする。
(2)105.70円を上回るうちは上昇余地ありとし、10日夜高値超えからは8月3日深夜高値106.46円試しとする。106.40円以上は反落警戒とするが、105.70円以上での推移なら12日午前も高値試しを続けやすいとみる。
(3)105.70円割れからはいったん弱気サイクル入りとみて105円台序盤への下落を想定する。105円台序盤は押し目買いも入りやすいとみるが、105.50円以下での推移が続くうちは12日午前にかけても安値試しへ向かいやすいとみる。またドル急落やリスク回避感が強まっての円高発生の場合は105円割れへ向かう可能性もあると注意する。

注:ポイント要約は編集部

【当面の主な予定】

10:30 (豪) 7月 NAB企業景況感指数 (6月 -7)
14:00 (日) 7月 景気ウオッチャー現状判断DI (6月 38.8)
14:00 (日) 7月 景気ウオッチャー先行判断DI (6月 44.0)
17:30 (英) 7月 失業保険申請件数 (6月 -2.81万件)
17:30 (英) 7月 失業率 (6月 7.3%)
17:30 (英) 6月 失業率・ILO方式 (5月 3.9%)
18:00 (独) 8月 ZEW景況感期待指数 (7月 59.3)

21:30 (米) 7月 生産者物価指数 前月比 (6月 -0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 生産者物価指数 前年同月比 (6月 -0.8%、予想 -0.7%)
21:30 (米) 7月 生産者物価コア指数 前月比 (6月 -0.3%、予想 0.1%)
21:30 (米) 7月 生産者物価コア指数 前年同月比 (6月 0.1%、予想 0.0%)
25:00 (米) デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、オンライン討論会

8/12(水)
08:50 (日) 7月 マネーストックM2 前年同月比 (6月 7.2%)
09:30 (豪) 8月 ウエストパック消費者信頼感指数 (7月 87.9)
11:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行 政策金利 (現行 0.25%)
15:00 (英) 6月 月次GDP 前月比 (5月 1.8%)
15:00 (英) 4-6月期GDP速報値 前期比 (1−3月 -2.2%)
15:00 (英) 4-6月期GDP速報値 前年同期比 (1−3月 -1.7%)
15:00 (英) 6月 鉱工業生産指数 前月比 (5月 6.0%)
15:00 (英) 6月 鉱工業生産指数 前年同月比 (5月 -20.0%)
15:00 (英) 6月 貿易収支・物品 (5月 -28.05億ポンド)
15:00 (英) 6月 貿易収支・全体 (5月 42.96億ポンド)

18:00 (欧) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 12.4%)
18:00 (欧) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 -20.9%)
21:30 (米) 7月 消費者物価指数 前月比 (6月 0.6%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 消費者物価指数 前年同月比 (6月 0.6%、予想 0.7%)
21:30 (米) 7月 消費者物価コア指数 前月比 (6月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 消費者物価コア指数 前年同月比 (6月 1.2%、予想 1.1%)
23:00 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、オンライン講演
24:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、質疑応答
28:00 (米) デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、オンライン討論会
27:00 (米) 7月 月次財政収支 (6月 -8641億ドル)

8/13(木)
08:50 (日) 7月 国内企業物価指数 前月比 (6月 0.6%)
08:50 (日) 7月 国内企業物価指数 前年同月比 (6月 -1.6%)
10:30 (豪) 7月 新規雇用者数 (6月 21.08万人)
10:30 (豪) 7月 失業率 (6月 7.4%)
15:00 (独) 7月 消費者物価指数改定値 前月比 (6月 -0.5%)
15:00 (独) 7月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (6月 -0.1%)

21:30 (米) 7月 輸入物価指数 前月比 (6月 1.4%、予想 0.5%)
21:30 (米) 7月 輸出物価指数 前月比 (6月 1.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 118.6万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1610.7万人)
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 5.00%)

8/14(金)
11:00 (中) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 -1.8%、予想 0.2%)
11:00 (中) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 4.8%、予想 5.1%)
13:30 (日) 6月 第三次産業活動指数 前月比 (5月 -2.1%)
16:00 (ト) 6月 経常収支 (5月 -37.6億ドル)
16:00 (ト) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 17.4%)
18:00 (欧) 6月 貿易収支・季調済 (5月 80億ユーロ)
18:00 (欧) 6月 貿易収支・季調前 (5月 94億ユーロ)
18:00 (欧) 4-6月期GDP改定値 前期比 (速報 -12.1%)
18:00 (欧) 4-6月期GDP改定値 前年同期比 (速報 -15.0%)

21:30 (米) 7月 小売売上高 前月比 (6月 7.5%、予想 1.4%)
21:30 (米) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 7.3%、予想 1.3%)
21:30 (米) 4-6月期非農業部門労働生産性 速報値 前期比 (1−3月 -0.9%、予想 1.5%)
21:30 (米) 4-6月期単位労働コスト 速報値 前期比年率 (1−3月 5.1%、予想 5.5%)
22:15 (米) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 5.4%、予想 3.0%)
22:15 (米) 7月 設備稼働率 (6月 68.6%、予想 70.3%)
23:00 (米) 6月 企業在庫 前月比 (5月 -2.3%、予想 -1.2%)
23:00 (米) 8月 ミシガン大学消費者信頼感指数 速報値 (7月 72.5、予想 71.0)

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