ユーロドル 復興基金可否次第もテクニカルには上げやすい(週報7月第3週)

今週は材料的にも大きなものが無く、本日の欧州時間次第となりますので、純粋にテクニカルな観点から見通しを立ててみたいと思います。

ユーロドル 復興基金可否次第もテクニカルには上げやすい(週報7月第3週)

復興基金可否次第もテクニカルには上げやすい

〇ユーロドル7/15に1.1452まで上昇するも、以後高値圏でもみ合い、1.1444レベルで週末クローズ
〇EUサミットは協議が難航、合意に至らず日程延長
〇EU復興基金についての結果が出るまで、ユーロ動きなしと予測
〇今週は1.1375レベルをサポート、1.1500レベルをレジスタンスと想定
〇来週以降に1.16を目指す展開も

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロは、前週からの上昇地合いを継続し15日には年初来高値まで43pipsまで迫りましたが、週後半のECB理事会、そして最大の注目材料であるEUサミットを前に高値もみあいを続けることとなりました。ECB理事会は予想通りで市場への影響はあまり見られませんでしたが、EUサミットを前にオランダをはじめ反対している国への根回しが進まず、復興基金が決まるかどうかは五分五分という見通しにも関わらず、市場参加者は楽観的なまま週末を迎えました。

そして、EUサミットは各国政府関係者の見通し通りに協議が難航、オランダ等に配慮する形で交付金の減額と貸し付けの増額が提案されましたが、合意に至らないまま2日の日程は延長。日曜にも協議は続いたものの結論は出ず、おそらく本日の段階で合意できるのか、あるいはEUサミット自体を開催し直してそれまでに詰めるのか、どうも当初の楽観、悲観とも違う状況となっていますが、ここまで延長するということは何とか合意に持ち込みたいという表れでもあります。

そもそもEU復興基金は、総額7500億ユーロのうち返済義務のない交付金が4500億ユーロ、返済義務のある低利融資が3000億ユーロで検討されてきました。しかしオランダをはじめ財政規律に厳しい4か国(他にオーストリア、デンマーク、スウェーデン)とそれに同調するフィンランドは当初案に反対、そこで交付金を500億減額し、融資を500億増やすという妥協案が検討されましたが、それも拒否し対案として更に500億の変更(交付金3500億、融資4000億)ならば同意可能という流れで日曜を終えています。

ドイツなどは3500億の交付金では効果が薄いという見方をしていますし、最大の交付金を得るイタリアも当然のように同調していますが、通貨や金融政策は統一されていても財政は各国ばらばらであるEUの国による考え方の違いが前面に出てきています。前回の週報において「個人的には調整失敗、採決先送りというニュースが出てきた時のユーロ売りの動きの可能性の方が高いのではないか」という意見を書きましたが、現時点では交付金4000億なら先送り、3500億なら本日中に可決という間を刻んでくるのかどうかといったところです。いずれにしても、その結果を見るまではユーロの動きは出ないと思いますし、決まれば若干上昇、延期ならばある程度の反落を見るという動きが予想されます。

今週は材料的にも大きなものが無く、本日の欧州時間次第となりますので、純粋にテクニカルな観点から見通しを立ててみたいと思います。日足チャートをご覧ください。

今週の週間見通しと予想レンジ

年初来高値まであとわずかであることや、3月後半から5月末までのトライアングル(△もちあい)を上抜けたことを考えると、トライアングルを抜ける前の押しを起点とした上昇N波動を考えることも可能です。その場合のフィボナッチ・エクスパンションでは61.8%エクスパンションが1.1509とほぼ年始来高値と重なる水準、そして次のターゲットは78.6%(61.8%の平方根)エクスパンションとなる1.1602です。

テクニカルには6月高値を上抜けてきたことから、年初来高値をトライし次のターゲットとなる1.16水準を試す可能性が高いという見方をすることができます。そうなると、本日の欧州時間にサミットの再会合はなしに何らかの妥協案で可決し無事にイベントを通過、金曜のPMIが思いのほか良い数字となって年初来高値を更新する動き、そして来週以降に1.16を目指す展開というシナリオを考えてみました。

今週はテクニカルな観点のみから、1.1375レベルをサポートに1.1500レベルをレジスタンスとする週を見ておくことにしますが、どうなるでしょうか。

今週のコラム

今週もユーロ円の日足チャートを見てみましょう。先週はユーロ円の下げ見通しが大いなるダマシとなって、その後上昇に転じてきましたので、上昇チャンネルを引き直すこととしました。

今週のコラム

また引き直す可能性もありますが、現時点ではピンクの平行線で示した上昇チャンネルの中で上限に近い水準に位置しています。ユーロドルがテクニカルに上昇を続けることとなった場合、このチャンネルを上抜け6月高値と安値の78.6%(61.8%の平方根)戻しとなる123.33を目指す流れになる可能性があります。

ただ、ユーロ高がドル安という長江になる場合にはチャンネルを抜けられずに反落という可能性もありますので、どちらの可能性も考えながらいまだ継続中のEUサミットの結果を待ちましょう。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

7月20日(月)
**:** EUサミット(継続中)
15:00 ドイツ6月PPI
17:00 ユーロ圏5月経常収支

7月21日(火)
 (特になし)

7月22日(水)
 (特になし)

7月23日(木)
15:00 ドイツ8月GFK消費者信頼感
15:45 フランス7月企業景況感
23:00 ユーロ圏7月消費者信頼感速報値

7月24日(金)
08:01 英国7月GFK消費者信頼感
15:00 英国6月小売売上高
16:15 フランス7月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ7月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏7月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 英国7月製造業・サービス業PMI速報値

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

7月13日(月)
ユーロドルは東京市場ではドル円同様にドル売り(ユーロ買い)先行後のドル買い戻し(ユーロ売り)となりましたが、NY市場ではユーロが対ドル、対円で大幅高となり、それぞれ1.1375レベル、121.97レベルの高値をつけました。株高の動きとともにユーロ円の買いが目立っていた印象ですが、ユーロ円は先週月曜、木曜、昨日と3度121.97が高値となっていて122円には売りオーダーがあり、引けにかけては株価反落がユーロ円でも売りとなって、ユーロドルもやや水準を下げての引けとなりました。

7月14日(火)
ユーロドルは東京市場では鈍い動きとなっていましたが、欧州市場に入りユーロ円が4度目のトライで121.97レベルを上抜けたことをきっかけにユーロが対円、対ドルともに一段高となり、NY市場ではユーロ円が122.32レベル、ユーロドルが1.1409レベルの高値をつけ若干押しての引けとなりました。

7月15日(水)
ユーロドルは、前週後半からの着実な上昇を継続し、NY市場では高値1.1452レベルと年初来高値(1.1495)にかなり近づく動きを見せました。ただユーロは金曜からのEUサミットで復興基金が可決されるかどうかが不透明なため、週末の引け前に高値更新の有無に関わらずポジション調整が入りやすいと考える参加者も多い様子でした。

7月16日(木)
ユーロドルは、ECB理事会までは若干調整の売りが出ていましたが、理事会では予想通りの動きとなり、ラガルド総裁会見でもやれることは何でもするとの発言を好感し1.1441レベルまで上昇しました。引けにかけてはドル買いの動きからユーロは日中安値を下抜け上値が重たいまま引けました。

7月17日(金)
ユーロドルは東京市場では動きが見られず、欧州市場に入り強めのユーロ圏経済指標を背景に対ドル、対円でユーロ買いの動きが強まりました。またEUサミットで復興基金が可決されるとの市場参加者の思惑も根強く、引けにかけてもユーロはじり高のまま1.1444レベルまで水準を切り上げ高値引けとなりました。


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