トルコリラ円見通し 円高に押されて下落、7月10日深夜安値割れはひとまず回避(20/7/16)

底割れはひとまず回避していったん戻したものの15.60円には届かずに16日午前にかけてはジリ安推移となっている。

トルコリラ円見通し 円高に押されて下落、7月10日深夜安値割れはひとまず回避(20/7/16)

トルコリラ円見通し 円高に押されて下落、7月10日深夜安値割れはひとまず回避

〇トルコ円15日深夜に15.53まで下げ10日深夜安値に迫る、戻りは鈍く15.60に達せず
〇対ドルでのトルコリラは小動き。トルコリラ円はドル円と同調した動き続く
〇米国は「トルコストリーム」牽制に関係企業への制裁可能性示唆、米土関係悪化懸念拡がる
〇トルコの感染者は抑制され経済活動再開が進む
〇15.60以下での推移は一段安余地あり、15.55割れからは下げ再開を警戒
〇15.60超えからは上昇再開、14日午前高値15.63試しを想定

【概況】

トルコリラ円はドル円と同調した動きが続いている。7月10日深夜15.51円まで下げてからはドル円の反発と同調して15.60円台前半まで戻したが、7月14日午前高値15.63円の後は新たな高値更新へ進めず、15日夕刻からはドルストレートでドル安が進行したことや日銀黒田総裁会見後の円高を反映して15日深夜には15.53円まで下げて10日深夜安値に迫った。底割れはひとまず回避していったん戻したものの15.60円には届かずに16日午前にかけてはジリ安推移となっている。
対ドルでのトルコリラは引き続き小動きにとどまっている。7月3日のトルコ消費者物価指数発表直後に一時的に急落するフラッシュクラッシュが発生したものの早々に元の水準へ回帰し、その後は6.85リラを挟んでの小動きへ戻り、今週は6.87リラから6.84リラの範囲内での推移にとどまり、7月15日も6.86リラから6.85リラの範囲での推移だった。

【ドル円は7月10日安値割れへ余裕乏しく、トルコリラ円への売り圧力も警戒される】

対ドルでのトルコリラが小動きのため、トルコリラ円はドル円と同調した動きに終始している。
ドル円は7月10日に106.62円まで下落したが6月23日深夜安値106.06円割れを回避して13日から14日夜にかけて反発していた。しかし14日夜高値107.42円の後は伸びず、15日は夕刻から株高によるリスク選好感が為替市場でのユーロ、ポンド、豪ドル買い等を助長してドルストレートでのドル安感が強まり、ドル円もドル高に押されて下落した。また日銀金融政策は現状維持とされたが、黒田総裁が会見で景気は底打ちしたとの楽観見通しを示したことで円安を招く現状以上の金融緩和政策の拡大等は期待できないとして円高感が強まったこともドル円の下落を助長した。

ドル円は7月10日安値106.62円を割り込まずに106.64円までの下げにとどまったが、その後の反発では107円台を回復できずに7月10日安値割れに対する余裕が乏しくなっている。底割れの場合は5月6日安値105.98円と6月23日安値106.06円によるダブル底ラインを試し、あるいはダブル底を割り込んで下落感が強まる可能性があるが、その場合はトルコリラ円においても6月2日高値以降の安値更新へ進みやすくなると注意したい。

【米国によるトルコストリームへの牽制】

7月15日にポンペオ米国務長官が、ロシアから欧州とトルコに天然ガスを輸送する2本のパイプラインに関係している企業について、米国の制裁対象になる可能性があると述べた。対象となるのはロシア−ドイツ間の「ノルドストリーム2」とロシア−トルコ間の「トルコストリーム」であり、同氏は「ロシアの悪影響を広げるプロジェクトを後押しする企業は許されないとはっきり警告する」と述べた。ノルドストリーム2は欧州企業の撤退により昨年末から建設が中断しているがロシアのガスプロムが主導して完成を目指す可能性がある。トルコストリームはすでに完成して供給が始まっているが、ロシアとトルコの共同事業であり、トルコ側の反発が予想される。

トルコのエルドアン大統領は7月18日から東地中海での天然ガス掘削を開始すると発表した。東地中海では天然ガスと原油の探査を巡ってイスラエルや地中海沿岸諸国との対立も見られる。感染拡大を抑制しつつ経済活動再開に入る中で、これらプロジェクトの進行やシリアを巡る対テロ作戦等により地政学的リスクが再び上昇する可能性があると注意したい。
7月15日は国家統一の日でトルコは祝日だったが、この日は4年前のクーデター事件により251人が殉職した事件の記念日であり、エルドアン大統領体制が確立した日でもある。

【トルコの感染者増加数は2日連続で千人を切る】

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は続いているがトルコの感染拡大は抑制されている。7月15日時点でのトルコにおける新規感染者数は前日から947人増えて21万5940人となたが、7月14日の992人増に続いて2日連続で千人を切った。6月2日に786人増まで増加ペースが落ちた後、経済活動再開により6月15日には1592人増までいったん増えて第2波への懸念が強まりかけたが、その後は漸減傾向が続いている。4月11日のピーク時には5138人増だったため、相当に抑制されつつ経済活動再開が進んでいる印象だ。
しかし、入国制限が緩和されて観光入国が増えれば再び増加しかねないこと、世界全体の感染拡大が止まずに以前の水準まで景気が回復しなければトルコの輸出も停滞せざるを得なくなる点が心配される。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは7月10日深夜安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りしたが、14日午前高値の後は失速気味だったために15日午前時点では既にサイクルトップをつけた可能性があるとし、15日朝安値15.58円を割り込むところからは弱気サイクル入りとして15日夜から17日深夜にかけての間への下落を想定するとした。15日朝安値を割り込んで15日深夜へ一段安となったため、現状は14日午前高値をサイクルトップとして弱気サイクル入りした状況となっている。すでに10日深夜安値から3日を経過しているので早ければ15日深夜安値でサイクルボトムを付けた可能性もある。このため15.60円以下での推移中は一段安余地ありとするが、15.60円超えからは強気サイクル入りと仮定して17日午前から20日午前にかけての間への上昇を想定する。ただし戻りは短命の可能性もあるので、いったん強気サイクル入りした後に15.55円を割り込むところからは下げ再開を警戒する。

60分足の一目均衡表では、7月15日夜の下落で遅行スパンが悪化し、先行スパンからも転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、新たな安値更新を回避しての推移なら遅行スパンは好転しやすくなると注意し、遅行スパン好転からは上昇再開とみて高値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は15日夜の下落で30ポイントを割り込んだがその後は50ポイント手前へ戻している。50ポイント超えからはいったん戻しに入るとみて60ポイント台序盤への上昇を想定するが、40ポイント割れからは下落継続とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月15日深夜安値15.53円を下値支持線、15.60円を上値抵抗線とする。
(2)15.60円以下での推移中は一段安余地ありとし、15.55円割れからは下げ再開とみる。15日深夜安値を割り込む場合は15.40円台後半への下落を想定する。また15.55円以下での推移なら17日午前も安値試しへ進みやすいとみる。
(3)15.60円超えからは上昇再開とみて14日午前高値15.63円試しを想定する。15.62円以上は反落警戒とするが、15.57円以上での推移なら17日午前も高値を試す余地があるとみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

7月20日
 19:30 6月自動車生産 前年比 (5月 -53.7%) 
7月23日
 16:00 7月消費者信頼感指数 (6月 62.6)
 20:00 トルコ中銀政策金利発表 (現行 8.25%、予想 8.00%)
7月27日
 16:00 7月製造業景況感 (6月 92.6)
 16:00 7月設備稼働率 (6月 66.0%)
7月29日
 16:00 6月貿易収支 (5月 -34.2億ドル)
 16:00 第2四半期観光収入
 16:30 トルコ中銀インフレレポート
 17:00 6月観光客数 前年比 (5月 -99.3%)
 20:00 トルコ中銀MPC議事要旨
7月30日
 16:00 7月経済信頼感指数 (6月 73.5)

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