実質金利のマイナス幅拡大とリラ安防衛能力への不信感が相場の重石
〇今週トルコリラ円はインフレ高進、感染者拡大、トルコの外貨準備不足懸念等から一時15.53まで反落
〇テクニカルには三役逆転成立等で上値の重さ目立ち、ファンダメンタルズも売り要因多い
〇トルコリラ円相場の軟調推移をメインシナリオとして予想、来週の予想レンジ15.25ー15.75
今週のレビュー(7/6−7/10)
今週のトルコリラ円相場は、週初15.66円で寄り付いた後、早々に週間高値15.74円まで上昇しました。しかし、先週半ばに記録した直近高値15.78円をバックに戻り売りが強まると、@先週末金曜日に発表されたトルコ6月消費者物価指数(結果12.62%、予想12.09%、前回11.39%)にてインフレ高進が確認されたこと(インフレ高進→追加利下げ打ち止め観測→株価下押し→トルコリラ売りの波及経路と、インフレ高進→実質金利のマイナス幅拡大→トルコリラ売りの波及経路)や、Aトルコ国内における新型コロナ感染者数再拡大の動き、B外貨準備急減を受けたリラ安防衛能力への不信感、C香港情勢を巡る米中対立激化懸念が重石となり、週末にかけては、約1週間ぶり安値となる15.53円まで反落しました。引けにかけて小反発するも上値は重く、結局15.57円前後での越週となっております。
来週の見通し(7/13−7/17)
トルコリラの対円相場は、6/3に記録した約1ヵ月半ぶり高値16.26円をトップに反落に転じると、6/23には一時15.47円(5/15以来)まで下落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドを下抜けするなど、テクニカル的に見て、「上値の重さ」を印象づけるチャート形状となっております(強い売りシグナルを示唆する三役逆転も成立)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@トルコ経済の先行き不透明感や、A外貨準備急減を受けたリラ安防衛能力への不信感、B対外収支の悪化懸念(4月経常収支は約2年ぶりの赤字幅)、C実質金利のマイナス幅拡大(インフレ圧力の上昇を背景に実質金利は一段とマイナス)、D経済的な結び付きの強いユーロ圏経済の先行き不透明感(EU新型コロナ復興基金を巡る不確実性)、E中東を巡る地政学的リスク、F米国・ロシア・フランス・NATO同盟国との関係悪化懸念、G世界的な貿易戦争再開リスク、H新型コロナ第2波懸念(トルコ国内の感染者数拡大リスク)など、トルコリラ売りを想起させる材料は今尚山積みの状態です。
以上の通り、トルコリラ円相場は、テクニカル的にもファンダメンタルズ的にも、「上値の重さ」が警戒されます。新型コロナ第2波リスクへの警戒感や、対外収支の悪化懸念(資本流出リスク)、インフレ率上昇を背景とした実質金利のマイナス幅拡大、トルコ経済を巡る先行き不透明感(来週は7/13に予定されているトルコ5月経常収支、同鉱工業生産、同小売売上高に注目)が重石になると見られ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の軟調推移をメインシナリオとして予想いたします(実質金利のマイナス幅拡大を通じた資本流出リスクの高まりと外貨準備急減を受けたリラ安防衛能力への不信感がトルコリラ相場の重石)。
来週の予想レンジ(TRYJPY):15.25ー15.75
トルコ円日足
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