15.50円台まで安値を切り下げ、6月中盤からの煮詰まり状況も1か月を経過
〇トルコリラ円、ドル円ジリ安に圧迫されつつ7/10深夜に15.51まで安値切り下げ
〇対ドルでは、週末終値ベースで6月1週から7月1週まで5週連続でドル高リラ安で推移
〇コロナ感染者数は6月12日以降ピーク時から大幅に低下した水準で抑制されている
〇15.50以上での推移中は15.60超えから15.65前後へ戻す可能性あるが、15.65以上は反落警戒
〇15.50割れからは下げが加速しやすく15.40前後への下落を想定
【概況】
対ドルでのトルコリラの動きが6月中盤からは6.85リラを挟んだ小動きにとどまって方向性を欠く中、トルコリラ円はドル円の動きに同調しての推移となってきた。ドル円は6月23日深夜安値から7月1日高値まで一時的に上昇した後は107.50円を挟んだ持ち合いとなり、先週後半はややジリ安の展開となったが、トルコリラ円は7月3日夜の一時的なフラッシュクラッシュを除けば15.60円台での持ち合いで推移しつつ、7月3日深夜安値15.58円、7月9日朝に15.55円、さらに7月10日深夜には15.51円へとドル円のジリ安に圧迫されつつ安値を徐々に切り下げてきた。
日足で見れば6月中盤以降は15.60円を挟んだ小動きであるが、6月24日から6月30日まで5日連続の陽線で上昇し、その後は7月1日から7月6日まで4日連続陰線となり、1日挟んで終盤の7月8日から10日までは3日連続陰線でジリ安となった。
【対ドルでのトルコリラ安はわずかずつながら5週連続】
対ドルでのトルコリラは5月7日に7.27リラの史上最安値を付けたところまで大幅下落し、コロナショックによる新興国通貨売りが一巡したために6月3日安値6.68リラまで反騰したが、その後は再びドル高感が強まって6月18日には6.86リラまで下落した。それ以降は6.85リラを中心値として6.86リラから6.82リラまでの範囲に止まってきた。7月3日に6月のトルコ消費者物価指数が予想を超える上昇幅となったことから一時的に6.98リラまで売られる場面があったものの早々に元の水準へ切り返し、以降は再び6.85リラを中心とした小動きに収まるようになった。
トルコ中銀が6月25日の会合でそれまで9会合連続で実施してきた利下げを見送って政策金利を8.25%に据え置いたものの、7月3日に発表された6月の消費者物価が12.62%上昇となったために、実質マイナス金利状態が拡大したとして売られたようだが、トルコ当局の取引規制の動きを意識してトルコリラ売りで攻めることは躊躇された印象だ。
7月3日以降は再び小動きに戻った。しかし、週末終値ベースでは6月第1週から7月第1週までは5週連続でドル高リラ安で推移している。取引規制を意識しつつもトルコリラへの売り圧力も微妙に高まっている印象だ。
【ドル円は軟調】
ドル円は7月10日夜に106.62円まで下落した。6月23日深夜安値106.06円から7月1日高値108.16円まで戻した後に失速し、7月8日までは107.50円を挟んで戻り高値をやや切り上げ、安値をやや切り下げてレンジ拡張型の持ち合いで推移していたが、7月10日にはやや切り下がってきていた安値を結ぶ支持線から転落して106円台中盤まで下げた。
5月6日安値105.98円に対して6月23日安値は106.06円にとどまってダブル底型を形成して戻したのだが、その戻りが続かずにじわじわと円高感が強まっている。
株式市場は米ナスダック総合株価指数を先頭にアフターコロナの復興期待を先取りする強気な展開も見られるが、NYダウの戻りは鈍くなり、感染拡大に歯止めかかからないことでの先行き不透明感が増している。米長期債利回りの低下傾向も続いており、ドル円はドル安に反応しやすくなってきている。107.50円を超える反騰に入れば高値試しへ向かう可能性も復調すると思われるが、107円以下での推移が続き始める場合は5月6日と6月23日の両安値によるダブル底ラインを割り込んで円高が加速しやすくなり、トルコリラ円にとっても下落感が強まりかねないと警戒される。
【トルコの4月失業率はやや改善、感染は抑制的】
新型コロナウイルスの感染者数は7月11日時点では世界全体で1283万人に達した。米国は335万人に拡大し、ブラジルも184万人を超えた。インドがロシアを超えて3位に浮上し、ブラジル以外の南米の感染拡大も深刻だ。そうした中でトルコの感染者数は抑制が効いている。7月11日時点のトルコ感染者数は21万1981人で前日から1016人増、死者5344人で前日から21人増えた。世界15位の感染者数であり、4月11日のピーク時には1日の感染者が5138人増となったが、6月12日以降は千人を超える状況が続いているもののピーク時からは大幅に低下した水準で抑制されている。1日の検査数は5万件前後を記録しており、大規模な検査を日々実施しており、陽性率は2%程度と低い。
トルコは3月後半から急激に感染拡大が発生した毎週末に外出規制を行ったものの完全なロックダウンは実施せずに社会インフラに必要な経済活動は止めなかった。6月からは経済活動規制を徐々に解除し、7月1日からは出入国制限も緩和している。経済活動を継続しつつ感染を抑制して医療崩壊を招かず、海外への医療物資等の支援を行う余裕もあった。イスタンブールの人口は1400万人超で東京都圏と変わりない。経済活動を継続しつつ医療体制を維持し、感染抑制を実現している成功事例といえるのではなかろうか。
7月10日に発表されたトルコの4月失業率は12.8%となり3月の13.2%から低下した。市場予想は14.6%への悪化だったが、経済活動規制が緩かったことで失業者の急増は回避されたといえる。そもそもの失業水準は高いのだが、劇的な悪化を回避しているといえる。
7月13日には5月の鉱工業生産及び小売売上高の発表があり、いずれも大幅な悪化が予想されているが、感染拡大と経済活動規制のピーク時のため、その後の落ち着きを踏まえれば5月の指標で当面の景気指標の悪化は底を付けた可能性もある。
ただし、外貨準備は脆弱であり、世界的感染拡大による輸出低下や観光収入の低下等が続く場合や新興国通貨売りが強まる場合にはパンデミックをやり過ごしつつあるトルコ経済への打撃が深刻化してゆくことも懸念される。また、トルコ自身がしっかりしたとしても、ドル円での円高が加速する場合にはトルコリラ円も同調して安値試しへと向かいやすい状況には変わりないと思われる。
【ボリンジャーバンドの収縮と当面のポイント】
対ドルでトルコリラの小動きが続いていることに加えてドル円も3月の乱高下が一巡して以降は相対的に小動きとなっているため、トルコリラ円のボラティリティもこの1か月でかなり低下している。それを示すのが日足のボリンジャーバンドの収縮であり、昨年12月に下落再開に入る前や今年2月末から大幅下落に入る前の収縮レベル等と匹敵する状況にある。
相場は上昇と下落と持ち合いによる小休止を繰り返すものであり、持ち合いは上下に大きく動きだす前夜情勢を示す。今回は7月3日にフラッシュクラッシュ的に一時的な急落を見せた後でジリ安推移に入っているため、持ち合い下放れへ進みやすい前夜情勢という見方もできるのではないかと思われる。
以上を踏まえて、当面のポイントを示す。
(1)当初、15.50円を下値支持線、15.60円を上値抵抗線とみる。
(2)15.50円以上での推移中は15.60円超えから15.65円前後へ戻す可能性があり、15.60円以上を維持しての推移なら上昇継続性があるとみるが、15.65円以上は反落警戒とみる。
(3)15.50円割れからは下げが加速しやすいとみて15.40円前後への下落を想定する。15.40円以下は反騰注意とするが、15.50円以下での推移が続くうちは安値試しを続けやすいとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
7月13日
16:00 5月経常収支 (4月 −50.6億ドル、予想 −27.0億ドル)
16:00 5月鉱工業生産 前年比 (4月 -31.4%、予想 -16.4%)
16:00 5月小売売上高 前年比 (4月 -19.3%、予想 -28.6%)
16:00 5月小売売上高 前月比 (4月 -21.0%、予想 0.0%)
7月20日
19:30 6月自動車生産 前年比 (5月 -53.7%)
7月23日
16:00 7月消費者信頼感指数 (6月 62.6)
20:00 トルコ中銀政策金利発表 (現行 8.25%、予想 8.00%)
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