リスク選好→リスク回避への急激なセンチメント変化に要注意
〇ドル円は今週リスク選好のドル買いに7/7に一時107.80まで上昇
〇その後は本邦景気先行き不安、トランプ大統領の財務記録開示命令、感染再拡大を巡る不透明感で反落
〇週末にかけ106.65まで下げ、106.94で越週
〇ユーロドルは週末にかけ株高ポンド高に6/11以来となる高値1.1372まで上昇
〇しかし感染再拡大不安、英国離脱問題先行き不透明感で1.1302まで戻して越週
〇ドル円は、テクニカル、ファンダメンタルズとも下落リスクが警戒される
〇コロナ感染第2波リスク到来及び、世界的な貿易戦争再開に伴うリスクオフの再来に要注意
〇予想レンジ ドル円105.50ー108.00 ユーロドル1.1150−1.1400
今週のレビュー(7/6−7/10)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初107.50で寄り付いた後、@世界各国による景気刺激策への期待感や、A株高・原油高を背景としたリスク選好の円売り圧力、B米6月ISM非製造業景況指数(結果57.1、予想50.0、前回45.4)は力強い結果が支援材料となり、翌7/7には、一時107.80まで上昇しました。しかし、心理的節目108円をバックに戻り売り圧力が強まると、C本邦における景気先行き不安の高まり(東京での新型コロナ感染者数拡大→景気先行き不透明感→デフレマインド再燃→円の期待実質金利上昇→円高の波及経路)や、D堅調な米国債入札結果を受けた米長期金利低下→ドル売りの流れ、E米連邦最高裁判所による「トランプ米大統領の財務記録の開示を命ずる」判断、F新型コロナ感染再拡大を巡る先行き不透明感が重石となり、週末にかけては、一時6/24以来となる安値106.65まで下げ幅を広げる場面も見られました。引けにかけて持ち直すも上値は重く、結局106.94前後での越週となっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.1242で寄り付いた後、@世界各国による景気刺激策への期待感や、A株高・原油高を背景としたリスク選好のドル売り圧力(特に対欧州通貨でドル売りが強まる展開)、Bユーロ圏5月小売売上高(結果17.8%、予想15.0%)の良好な結果、C英ポンドの急上昇(英国のスナック財務相が追加ウイルスパンデミック対策を公表→英ポンド急伸→ユーロ連れ高)、D米長期金利低下を受けたドル売り圧力(順調な米国債入札→米長期金利低下)が支援材料となり、週後半にかけて、6/11以来となる高値1.1372まで上昇しました。しかし、ボリンジャーバンド上限に続伸を阻まれると、E新型コロナ感染者数再拡大を受けた警戒感の高まりや、F上記Eを背景としたリスク回避のドル買い圧力、Gバルニエ欧州連合(EU)離脱主席交渉官による「EUと英国との間には依然として深刻な隔たりがある」との発言(英ポンド下落→ユーロ連れ安)、Hドイツ外務次官による「EUと英国は最悪の事態に備えるべき」との慎重な発言が重石となり、結局1.1301近辺まで押し戻されての越週となっております。
来週の見通し(7/13−7/17)
<ドル円相場>
ドル円は、7/1に記録した約3週間ぶり高値108.17をトップに反落に転じると、今週末にかけて、一時106.65(6/24以来の安値)まで反落しました。108円台での滞空時間は極めて短く(108円台での滞在時間は僅か100分程度。200日移動平均線をバックに戻り売り圧力が根強い展開)、テクニカル的にみて、「上値の重さ」を印象付けるチャート形状となっております(一目均衡表雲下限を割り込んだことで、強い売りシグナルを表す三役逆転が成立中)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策余力の違い(追加緩和余地の乏しい日本と、追加緩和余地の大きな米国=イールドカーブ・コントロール導入の可能性もあり)や、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感(新型コロナ感染再拡大→米経済の先行き不透明感)、B米中対立激化懸念(全人代は6/30、香港国家安全維持法案を可決。米上院は7/2、中国に制裁を科す香港自治法案を全会一致で可決。トランプ米大統領はファーウェイなど中国5社の製品を使った企業の物やサービスの発注を禁止する規制を完成させる予定)、C世界的な貿易戦争再開リスク、D朝鮮半島や中東、香港を巡る地政学的リスク、E新型コロナ第2波リスク(外出規制再開への警戒感)、F日本経済の先行き不透明感(鉱工業生産、日銀短観、家計調査共に冴えない結果。日本経済低迷→インフレ鈍化→実質金利上昇→円高への波及経路)など、ドル円相場の下落を想起させる不安材料が山積みの状態です。
以上の通り、ドル円は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、「下落リスク」が警戒されます。世界的な株価上昇(大規模金融緩和→過剰流動性→リスクアセット買い)がリスク選好ムードを演出してはいるものの、ここから先は、新型コロナ第2波リスク到来及び、世界的な貿易戦争再開に伴うリスクオフの再来に注意が必要でしょう。米中対立激化に関するヘッドラインや、新型コロナ感染再拡大を巡る続報、アジア株及び欧米株の動き、日米中の主要経済イベントの結果(7/14の米消費者物価指数や、7/15の日銀金融政策決定会合及び米鉱工業生産、7/16の中国第2四半期GDP、中国鉱工業生産、中国固定資産等、中国小売売上高、米小売売上高など)を睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の続落をメインシナリオとして予想いたします(強い売りシグナルを表す三役逆転が成立している他、新型コロナ第2波リスクや米中対立激化リスクが相場の重石)。尚、日銀金融政策決定会合では金融政策の現状維持が見込まれている為、ドル円相場への影響は限定的となりそうです。
来週の予想レンジ(USDJPY):105.50ー108.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は、6/22に記録した約3週間ぶり安値1.1168をボトムに反発に転じると、今週後半にかけて、約1ヶ月ぶり高値となる1.1372まで反発しました。この間、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線、一目均衡表転換線及び基準線を上抜けするなど、テクニカル的にみて、「下値の堅さ」を印象付けるチャート形状となっております(今週は1.12台での下値の堅さを確認)。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、@ユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感(欧州連合は域内の成長率見通しを一段と下方修正)や、A米中対立激化懸念、B世界的な貿易戦争再開リスク(米大統領選挙への不確実性が増しつつあり、トランプ米政権による強硬外交がユーロ圏に波及する恐れあり)、C朝鮮半島や中東、香港を巡る地政学的リスク、D新型コロナの第2波リスク(世界的な新型コロナ感染再拡大リスク)、E新型コロナ復興基金を巡るユーロ圏各国の隔たり(7/17−7/18に予定されているEU首脳会合への警戒感)、FECBによるEUREP(ユーロ圏以外の中銀にユーロの流動性を供給)導入、GEUと英国との自由貿易協定交渉決裂リスクなど、ユーロドルの上値を抑制する材料は今尚沢山残っている状況です。
以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的に持ち直しの兆しが見られるものの、ファンダメンタルズ的な弱さが「続伸を阻む」シナリオが想定されます。欧米株や米長期金利の動向や、新型コロナ第2波リスクを巡るヘッドライン、ユーロ圏の主要経済イベントの結果(7/14のドイツ6月消費者物価指数やドイツZEW景況感指数、7/16のECB理事会、7/17−7/18のEU首脳会合など)、EUと英国との自由貿易協定交渉(交渉難航ならユーロの下落要因)を睨みながらも、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想いたします(EU首脳会議でEU復興基金についての協議が難航した場合、失望感からユーロドルに下押し圧力が加わる恐れあり)。尚、ECB理事会では金融政策の現状維持が見込まれている為、ユーロドル相場への影響は限定的となりそうです。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1150−1.1400
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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