ドル円の反落と同調して失速、6月23日深夜以降の上昇トレンドから転落
〇トルコ円ドル円の失速に伴い15.64まで下落
〇イスタンブール製造業PMI、6月は53.9ポイントのV字回復
〇トルコの新型コロナウイルス感染者数は7/1時点で20万人越え、増加数は安定
〇トルコ円15.73以下での推移中は一段安警戒、15.64割れからは15.56円前後への下落を想定
〇15.73円超えからは上昇再開の可能性あり、15.77円試しを想定する
【概況】
トルコリラ円は6月23日夜にドル円が106.06円まで急落したところで15.47円まで下落して6月12日安値を割り込んだが、その後はドル円が反騰入りしたことで上昇に転じ、6月25日夜には15.67円へ上昇して6月23日に急落する前の高値を上抜いた。6月26日夜へ小反落してからもドル円の上昇継続と合わせて6月29日深夜には15.72円まで一段高となった。さらに7月1日午前には15.77円まで高値を切り上げていた。
ドル円が7月1日午前に108.16円をつけてから反落に転じて1日夜へ続落する中で、トルコリラ円もドル円に同調した下落に陥り、7月1日夜には15.64円の安値をつけた。ドル円は7月2日午前に安値を若干切り下げているが、トルコリラ円は1日夜安値割れを回避して15.65円から15.70円手前の範囲内に止まっている。しかし、6月23日深夜安値と6月26日夜安値を結んだ上昇トレンドの支持線からは転落した。
トルコ金融当局による取引規制の影響で対ドルでのトルコリラは6月後半からほぼ横ばいの動きに止まっており、トルコリラ円はドル円の動きとほぼ同調した展開が続いている。7月1日も対ドルでのトルコリラはわずかな値動きに止まっており、引き続きドル円を眺めながらの騰落となっている。
【ドル円は6月23日夜安値以降の上昇トレンドから転落】
ドル円は6月23日夜の下落で106.06円の安値をつけたが5月6日安値105.98円割れを回避して両安値をダブルボトムとして反騰入りしてきた。しかし7月1日午前高値で108.16円をつけたものの108円台を維持できず、5日を超える上昇に対する高値警戒感と7月1日夜の米重要指標発表及び7月2日夜の米雇用統計を控えてポジション調整的な下落となった。
7月1日夜の米ADP民間部門就業者数及びISMの6月製造業景況指数が良好だったもののドル円はリスク選好での円安へ反転できずに安値圏に止まり、7月2日午前にかけてジリ安基調となった。米国での感染拡大が収まらずに経済活動再開の動きが停止するなど先行き不安が強まる一方で今を景気の底とした復興期待も根強く、7月1日の米国株式市場ではNYダウが前日比77.91ドル安と下げたもののハイテク株中心のナスダック総合指数は95.86ポイント高となり終値としては史上最高値を更新している。
ドル円も復興相場への楽観と感染拡大の悲観が交錯する状況にあり、連騰一服でポジション調整をした上で7月2日夜の米雇用統計へ向かい、そこからリスクオン全開なら株高とともに円安ドル高へ向かい、リスクオフが優勢になると円高ドル安へ進むということになるのではないかと思われる。このためトルコリラ円も米雇用統計からのドル円を見ながら、その流れに追従してゆくスタンスで展開を見定めてゆきたい。
【対ドルでのトルコリラは持ち合い継続、6月のトルコ製造業PMIは改善】
対ドルでのトルコリラは5月7日に7.27リラの史上最安値をつけてから6月3日に6.68リラまで戻し、6月18日に6.86リラまで反落した後は持ち合いが続いている。6月18日以降は6.85リラを挟んでわずかなレンジに止まり、ほぼ横ばいの動きが続いている。トルコ金融当局による外国大手銀行への取引規制等により売買規模が縮小していることが影響していると思われる。
7月1日にはイスタンブール製造業PMIの発表があり、6月は53.9ポイントとなり5月の40.9から上昇した。コロナショックにより4月には33.4まで低下していたところからはV字回復であり、好不況の分岐点である50を4か月振りに超えている。6月1日からの経済活動再開により景況感も回復しているところだが、この先に第二波が発生する場合や、経済活動再開のレベルが世界的に上がってこないと元の景気水準を回復できないで再び景況感が悪化してゆくことも警戒される。
【トルコとEUの対立】
欧州理事会は第3国からシェンゲン協定地域に向かう人々に適用される渡航禁止を7月1日から14か国に対して撤廃した。シェンゲン協定はヨーロッパの国家間で国境検査なしに国境を越えることを許可する協定のことだ。中国に対しては互恵の原則に従いEU諸国が中国へ渡航許可を与えられる場合は入国禁止措置を適用しないとしているが、トルコ、アメリカ、ロシア、ブラジル、インドなどに対してはEU諸国による渡航禁止が続いている。トルコはEUに対してこの扱いを批判しているところだ。
フランスのルドリアン外相は7月1日に、内戦状態が続くリビアについて、事態の悪化はトルコが暫定政府を軍事的に支援しているためだと非難し、EUに対してトルコへの制裁等を協議するよう提案した。リビアではカダフィ独裁政権崩壊後、エジプトやロシアが支持する東部勢力と、国連が承認しトルコが支援する西部の暫定政府の間で内戦が続いているが現状では暫定政府側が優勢となっている。トルコも加盟するNATOはリビアに対して武器禁輸としているが、6月10日に仏フリゲート艦がリビア沖でトルコの貨物船を尋問しようとする事件も発生しており、トルコとフランスは対立している。
【トルコの感染増加数 千人超えが続くも安定】
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は続いている。7月2日朝時点の集計では、世界の感染者数は1079万人を超えて死者も51.8万人に達した。米国は7月1日時点で1日の増加数が4万9819人で累計277.7万人に拡大した。世界2位のブラジルは145.3万人に達し、ロシア(65.4万人)、インド(60.5万人)といずれも増加が続いている。
トルコの新型コロナウイルス感染者数は7月1日時点で20万1098人で前日から1192増、死者5150人で前日から19人増えた。6月初旬は日々の感染増加数が千人を切っていたが6月1日からの経済活動再開により6月12日以降は千人を超える状況が続いている。ただし6月15日に1562人増となって以降はそれ以下の水準で抑えられているが、ついに感染者累計が20万人を超えることとなった。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月23日深夜安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとして26日午後から30日にかけての間への上昇を想定したが、6月26日夜へいったん下落してから一段高に入ったため、6月30日午前時点では25日夜高値を直近のサイクルトップ、26日夜安値を同サイクルボトムとした新たな強気サイクル入りとした。またサイクルトップ形成期は6月30日夜から7月2日夜にかけての間と想定されるので、15.65円以上での推移中は一段高余地ありとした。
7月1日午前時点では前回サイクルトップから3日を経過したために6月30日夜安値割れからは弱気サイクル入りとしたが、1日夜の下落で30日夜安値を割り込んだため、7月1日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は7月1日夜から3日夜にかけての間と想定されるので既に反騰注意期にあるが、15.73円を下回る内は一段安余地ありとし、15.73円超えからは強気転換注意として7月1日午前高値試しを想定する。新たな強気サイクル入りは1日午前高値超えからとするが、その場合は7月6日午前から8日午前にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では7月1日夜への下落で遅行スパンが悪化し、2日未明には先行スパンから転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、強気転換は両スパン揃って好転するところからとする。
60分足の相対力指数は29日夜高値からの一段高では指数のピークが切り下がる弱気逆行が発生して1日夜へ下落した。50ポイント台を回復してさらに続伸に入る場合は上昇再開の可能性を優先するが、50ポイント前後が抵抗となる内は一段安余地ありとし、40ポイント割れからは下げ再開とみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月1日夜安値15.64円を下値支持線、15.73円を上値抵抗線とする。
(2)15.73円以下での推移中は一段安警戒とし、1日夜安値割れからは6月26日夜安値15.56円前後への下落を想定する。15.60円以下は反発注意とするが、15.65円以下での推移が続く場合は3日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)15.73円超えからは上昇再開の可能性ありとして7月1日午前高値15.77円試しを想定する。15.75円以上は反落注意とするが、15.73円以上での推移なら3日午前にかけても高値試しを続けやすいと考える。
【当面の主な経済指標等の予定】
7月02日
20:00 トルコ中銀金融政策会合議事要旨公開
7月03日
16:00 6月消費者物価上昇率 前年比 (5月 11.39%、予想 12.25%)
16:00 6月消費者物価上昇率 前月比 (5月 1.36%、予想 0.80%)
16:00 6月生産者物価上昇率 前年比 (5月 5.53%、予想 6.39%)
16:00 6月生産者物価上昇率 前月比 (5月 1.54%、予想 0.90%)
7月10日
16:00 4月失業率 (3月 13.2%、予想 15.6%)
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