ドル円見通し 108円台を維持できずに失速して米雇用統計発表へ向かう
〇ドル円昨日108.16まで上昇するもイベント前のポジション調整で失速
〇7/1の経済指標は良好なるもドル円はさほど戻せず、7/2朝はじり安
〇米株式市場は良好な指標、ワクチン開発進展等の好材料とウイルス拡大懸念の綱引きでまちまち
〇ドル円107.75を下回る内は一段安余地あり、107.75超えからは上昇再開、108.16試し
〇上下両方向とも今晩の米雇用統計での加速に注意
【概況】
ドル円は6月23日深夜に106.06円まで下げて6月5日安値105.98円に迫ったものの底割れを回避して切り返しに入り、25日夜に107.44円まで上昇、26日夜に106.78円までいったん下げてからの一段高で6月29日夜には107.88円まで高値を切り上げた。30日は107.50円を下値支持線として確りして深夜の上昇で108円に迫っていたが、7月1日午前高値で108.16円をつけた。しかし108円台を維持できずに失速となり、1日夜には107.34円まで続落した。
7月2日の米労働省の雇用統計にとっての前哨戦となるADP民間部門の雇用報告やISM製造業景況指数の発表を控え、また中国による香港への国家安全法可決・適用開始による米中対立への懸念、復興期待と裏腹の感染拡大等を背景として6月23日深夜から5日半にわたる上昇に対していったん調整を入れるところとして下落した印象だ。
7月1日夜のADP及びISMが良好だったために深夜にかけてはユーロやポンド等がリスク選好で反発したが、ドル円はさほど戻せずに終わった。ドルストレートでのドル安とクロス円での円安が交錯して動けなかったようだ。
7月2日朝はややジリ安の傾向が続いており、1日夜安値を割り込んで107.30円台まで安値を切り下げている。7月2日夜の米雇用統計から反騰入りできるのか、6月23日夜からの上昇一巡により再び円高ドル安局面に入るのか、重要な分岐点に差し掛かると思われる。
【ダウは下落、ナスダックは終値で過去最高を更新、強弱入り混じる】
米国では感染拡大による経済活動再開の動きが停止し始めるなど先行き不安が強まる一方で、現状をコロナ不況の底とした復興期待も根強い。7月1日のNYダウはやや悲観的で前日比77.91ドル安と下げたが、ハイテク株中心のナスダック総合指数は楽観的な上昇を継続して前日比95.86ポイント高で終値としては史上最高値を更新した。
米国では南部と西部を中心に新型コロナの感染者が増加しており経済活動の再開を中断する州も出始めた。NY市は7月6日に予定していた店内飲食の再開を見送った。米国の感染者数は7月1日時点で前日から4万9819人増の277.7万人に拡大、死者も662人増の13万人となった。NY州は感染拡大が抑制されているが、カリフォルニア州は前日から6017人増、テキサス州が7671人増、フロリダ州が6563人増、アリゾナ州も4877人増と爆発的増加が続いている。復興期待といってもこれらの感染増が抑制されないことには先行き不安は消えない。
一方でワクチン開発への期待もある。米製薬大手ファイザーと独ビオンテックが新型コロナのワクチン開発において初期段階の治験で参加者に抗体が確認されたと発表している。ただし、SARSもMARSも結局はワクチン開発は失敗に終わっており、今回も同様の報道は出るものの未だ有力なワクチン成功への確信を持つには至っていない。
米国経済指標は良好だった。米民間雇用サービス会社オートマティック・データ・プロセッシング(ADP)が発表した6月の全米雇用報告では非農業部門民間就業者数が前月比236万9000人増となり、市場予想の300万人増は下回ったものの大幅な増加となった。特に5月分は速報の276万人減から306万5000人増へと劇的に上方修正された。ADPによると経済活動再開が広がり中小企業の雇用が増加、レジャーや建設、流通の改善が目立ったとした。ただし、3月の30.2万人減、4月の1940.9万人減の併せて1971.1万人減に対して5月の306.5万人増と6月の236.9万人増のあわせて543.3人増では、まだ正味1427.8万人減のままであり、復調には相当な時間がかかる印象だ。
米サプライ管理協会(ISM)が発表した6月の米製造業景況指数は市場予想の49.5を上回る52.6となり前月の43.1から上昇し、節目となる50を4カ月ぶりに上回った。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・形成サイクルでは、6月23日深夜安値をサイクルボトムとして強気サイクル入りしたが、26日夜にいったん下げてから一段高したために6月30日朝時点では6月25日夜高値を直近のサイクルトップ、26日夜安値を同サイクルボトムとして新たな強気サイクル入りとした。またトップ形成期は6月30日夜から7月2日夜にかけての間と想定した。7月1日午前高値からの反落で107.50円を割り込んだため、1日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は7月1日夜から3日夜にかけての間と想定されるので既に反騰注意期に入っているが、3日夜にかけては下落余地ありと注意し、107.75円超えからは強気転換注意として1日午前高値試しとし、高値更新からは新たな強気サイクル入りとして6日午前から8日午前にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では7月1日午前高値からの下落で遅行スパンが悪化し、2日未明には先行スパンから転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、両スパン揃って好転するところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は、6月29日深夜高値からの一段高に対して指数のピークが切り下がる弱気逆行となり、50ポイントを割り込んで続落している。相場の安値更新に対する指数のボトム切り上げによる強気逆行はまだ見られないためもう一段安余地ありとみる。上昇再開には50ポイント以上への回復と続伸が必要と思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、107.00円を下値支持線、107.75円を上値抵抗線とする。
(2)107.75円を下回る内は一段安余地ありとみる。107円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、米雇用統計等をきっかけに続落する場合は106.50円前後への下落を想定する。また107.50円以下での推移中は3日の日中も一段安余地が残るとみる。
(3)107.75円超えからは上昇再開とみて7月1日午前高値108.16円試しとする。108円以上は反落注意とするが、米雇用統計等をきっかけに高値を更新する場合は108.50円超を目指す上昇を想定する。また107.75円以上での推移なら3日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
7/2(木)
米、債券市場は短縮取引
10:30 (豪) 5月 貿易収支 (4月 88.00億豪ドル、予想 90.00億ドル)
18:00 (欧) 5月 生産者物価指数 前月比 (4月 -2.0%、予想 -0.5%)
18:00 (欧) 5月 生産者物価指数 前年同月比 (4月 -4.5%、予想 -4.8%)
18:00 (欧) 5月 失業率 (4月 7.3%、予想 7.3%、予想 7.7%)
21:30 (米) 5月 貿易収支 (4月 -494億ドル、予想 -530億ドル)
21:30 (米) 6月 雇用統計・非農業部門就業者数 前月比 (5月 250.9万人、予想 300.0万人)
21:30 (米) 6月 雇用統計・失業率 (5月 13.3%、予想 12.3%)
21:30 (米) 6月 雇用統計・平均時給 前月比 (5月 -1.0%、予想 -0.7%)
21:30 (米) 6月 雇用統計・平均時給 前年同月比 (5月 6.7%、予想 5.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 148.0万件、予想 135.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1952.2万人、予想 1900万人)
23:00 (米) 5月 製造業新規受注 前月比 (4月 -13.0%、予想 8.9%)
7/3(金)
休場 米国(独立記念日)
10:30 (豪) 5月 小売売上高 前月比 (4月 -17.7%、予想 -16.3%)
10:45 (中) 6月 財新サービス業PMI (5月 55.0)
16:55 (独) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 45.8、予想 45.9)
17:00 (欧) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 47.3、予想 47.3)
17:30 (英) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 47.0、予想 47.1)
オーダー/ポジション状況
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