【概況】
トルコリラ円は5月7日午後に14.61円へ続落して対円での史上最安値を更新した。トルコリラが対ドルでの史上最安値を更新する急落となったことが背景だったが、その後はトルコリラが対ドルで反発したことや、深夜にかけてドル円が戻したことで7日夜には15.00円まで反発し、深夜以降は14.70円台から15.0円手前のレンジで乱高下している。
トルコリラ円は今トルコリラ円は5月7日午後に14.61円へ続落して対円での史上最安値を更新した。年1月17日高値で18.82円を付けていたがその後はシリア情勢の悪化、米国との対立、トルコ政府と中銀による「インフレ率と政策金利の一桁を目指す方針」から連続的な利下げが続いて下落に転じ、2018年8月のトルコ通貨危機から持ち直して以降の下値支持線だった17円台から転落、2018年8月の15.52円の史上最安値を4月15日に割り込み、さらに安値を更新してきたが、コロナショックをきっかけとした新興国通貨売りの勢いが増す中でドル高リラ安が進んだことで5月5日には15円を割り込んでいた。
【トルコリラが対ドルでの史上最安値を更新】
トルコリラは5月7日に対ドルで一時7.26リラを付けて2018年8月の通貨危機でつけた7.23リラを超えて過去最安値を更新した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動停滞の世界的な広がりにより新興国通貨安が加速してきたが、トルコは中銀が8会合連続で利下げを断行する中で政策金利が消費者物価上昇率を下回る実質的なマイナス金利状態となり、トルコ経済指標の悪化が顕著となった。中銀の外貨準備高が脆弱として投機筋によるトルコリラ売りが加速している事が背景である。
対ドルでの史上最安値更新に対して、アルバイラク財務相はトルコの外貨準備高は適正な水準にあり、G20等と通貨スワップの交渉を続けており、国際通貨基金(IMF)の支援は受けないと述べたが、今年初めに凡そ400億ドル規模だったトルコの外貨準備高は5月1日時点で2580億ドルへ減少しており、通貨防衛への耐久力に欠けるのではないかとの懸念も強まっている。
トルコの銀行調整監視機構(BDDK)は新たな規制を発表し、「誤解を招く価格をもたらしたり、資産価格を異常もしくは不自然な水準に維持する結果となった銀行取引は今後操作的とみなされる」とした。トルコは今年2月にインサイダー取引や市場操作に関する罰則を強化しており、今回の措置でさらに強化することを意図している。また為替取引や金利を含む広範な資産が規制対象とされるが、BDDKはクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)取引も市場操作監視対象のリストに加えたようだ。
トルコリラは対ドルで7.26リラの最安値を付けた後は7.05リラまで反騰し、8日午前時点では7.10リラ近辺の推移となっており、史上最安値更新後はやや乱調気味に買い戻されているが、まだ切行き波乱・安値更新への懸念が続く。
【トルコ国内の感染者は13.3万人に、経済活動再開へのうごき】
5月7日時点での世界の感染者数は391.3万人を超え、死者は27万人を超えた。米国は感染者が129.2万人台に増加、死者も7万6925人となった。欧米での感染者増加ペースは鈍化傾向にあるが世界全体の感染者増加ペースは指数関数的な伸びが続いている。ロシアは感染者数が前日比11231人増の17万7160人で世界5位となった。ブラジルは感染者数13万5693人で前日比9188人増で世界8位となった。この二国の急増ぶりが目立つ。
トルコは5月7日時点の感染者数が13万3721人で前日から1977人増、死者は3641人で同57人増だった。感染者増加数は4月11日の5138人増をピークに漸減傾向にある。4週間連続の週末ロックアウトを経て落ち着きつつある状況であり、経済活動再開への動きもみられる。
しかし、経済指標の悪化は顕著だ。3月の貿易統計では輸出が前年比20.3%減少となり、4月の設備稼働率は3月の75.3%から61.6%へ低下、イスタンブール製造業PMIは33.4まで低下して年初の51.3から厳しい低下となっている。5月14日には鉱工業生産や小売統計の発表もあり、5月21日にはトルコ中銀が9会合連続でさらに利下げするのではないかとの見方もされている。ブラジルレアルと共にトルコリラが新興国通貨売りのターゲットとしてクローズアップされれば売りが売りを呼びかねないと警戒するところだが、2018年の通貨危機もなりふり構わない取引規制や各種金利引き上げを強硬したこともあるので、エルドアン大統領及びトルコ中銀による今後の対応次第では暴落的な展開も逆に急反騰に転じる可能性もあると注意したい。
【60分足一目均衡表、サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月7日午後の最安値から反騰しているので、7日午後安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとするトップ形成期は7日夜から12日にかけての間と仮定するが、波乱含みの展開のため14.70円割れからは弱気転換注意とし、7日午後安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして12日午後から14日午後にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では5月7日午後安値からの反騰で遅行スパンが好転し先行スパンも上抜いた。乱調な展開だが、遅行スパン好転中は高値試し優先とし、遅行スパン悪化からは下げ再開とする。
60分足の相対力指数は5月7日深夜に70ポイント手前へ急伸したがその後は指数のピークが切り下がっている。50ポイント台を維持するかわずかに割り込んでも切り返すうちは上昇余地ありとするが、45ポイント割れからは下げ再開を警戒する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、14.70円を下値支持線、15.00円を上値抵抗線とする。
(2)14.70円以上での推移中は上昇余地ありとし、15円超えから続伸の場合は15.10円前後試しとするが、15.10円以上は反落警戒とする。
(3)14.70円割れからは下げ再開を警戒して7日午後安値14.61円試しとし、底割れからは14.40円、次いで14.20円前後へと段階的に下値目途を引き下げる。また7日午後安値を割り込んだ後も14.70円以下での推移なら週明けも安値試しを続けやすいとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
5月11日
16:00 2月失業率 (13.8%、予想 14.9%)
5月13日
16:00 3月経常収支 (2月 −12.3億ドル)
5月14日
16:00 3月鉱工業生産 前年比 (2月 7.5%、予想 -2.7%)
16:00 3月小売売上高 前年比 (2月 10.6%、予想 -4.4%)
16:00 3月小売売上高 前月比 (2月 1.4%、予想 -6.8%)
5月20日
16:00 5月消費者信頼感指数 (4月 54.9)
19:30 4月自動車生産 前年比 (3月 -21.8%)
5月21日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合(TCMB) (現行 8.75%、予想 7.75%)
5月22日
16:00 5月景況感 (4月 66.8)
16:00 5月設備稼働率 (4月 61.6)
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