トルコリラ円見通し ドル高リラ安と円高が二重の圧力に(20/5/7)

5月6日も対ドルでのトルコリラ売りが続き、ドル円における円高も続いたために14.80円を割り込み、7日早朝には14.67円まで安値を更新している。

トルコリラ円見通し ドル高リラ安と円高が二重の圧力に(20/5/7)

【概況】

トルコリラ円は2018年8月のトルコ通貨危機でつけた安値15.52円を割り込んで4月21日夜には15.32円まで安値を更新し、4月29日夕刻には15.20円まで安値を切り下げた。30日午前には15.37円まで戻し、5月1日早朝にも15.36円を付けたものの行き詰まり、1日夜には15.20円まで安値を更新、5日午前には15.10円へ続落、さらに5日深夜には14.97円を付けて15円台からも転落して過去最安値を更新した。
5月6日も対ドルでのトルコリラ売りが続き、ドル円における円高も続いたために14.80円を割り込み、7日早朝には14.67円まで安値を更新している。

【ドル円が106円割れまで下落】

ドル円は4月15日午前に106.91円を付けて4月1日夜安値と同値としてからは107.50円を挟んだ持ち合いを続けてきたが、4月28日夜に106.53円へ下落して4月15日安値を割り込み持ち合いを下放れとなり、29日夕刻には106.35円まで続落した、5月1日には107.49円まで戻したものの勢いは続かず、5月1日に106.59円、5日に106.48円と安値を切り下げ、7日未明には105.98円まで一段安している。
2月20日から3月9日にかけてはコロナショックの欧米への波及を背景に急激な円高となり、その後は世界全体への感染爆発の深刻化がドル資金需給ひっ迫を招いてドル全面高となったために3月24日までV字反騰型の円安となった。しかしドル資金需給ひっ迫が落ち着く中で再びリスク回避型の円高傾向に入り、4月1日と4月15日のダブル底ラインを割り込んだためにじわじわと円高が進んでいる状況にあり、クロス円全般の円高がトルコリラ円を圧迫している。

【対ドルでのトルコリラ安がさらに進む、2018年11月以降の安値更新続く】

新興国通貨安の中でトルコリラも対ドルでの下落基調が強まり、4月22日には7.0097リラを付けて2018年8月のトルコ通貨危機における7.2349リラの史上最安値に迫ったが、その後は新たな安値更新を回避していたが、4月28日には終値ベースで安値を更新し、5月1日には7.0441リラ、4日には7.0553リラ、5日は7.1038リラと3日連続で安値を更新、6日も7.2062リラを付けて4日連続の安値更新となり、前日比では5日続落となった。

【概況】

4月22日にトルコ中銀は政策金利の週間レポレートを8.75%として従来の9.75%から引き下げた。利下げは8会合連続となり市場予想の9.25%を下回った。トルコは昨年後半から政府中銀が一体となってインフレ率と政策金利の1桁台を目指すと公言し、連続利下げにより政策金利は一桁を実現した。その上でコロナショックによる経済的打撃への対策面も併せて利下げの深掘りを行ったといえる。

一方で5月4日に発表された4月のトルコ消費者物価は前年比で10.94%となり3月の11.86%からは低下したものの二桁の状況にあり、週間レポレートと比較すれば実質的なマイナス金利状態に陥っている。
コロナショックは世界全体の金融市場での投資マインドを急激に冷やし、金融機関も企業全般及び投資家も手元流動性確保のためにドルの現金化を集中させた。それにより特に財政面が弱く感染爆発による経済への悪影響が深刻化する新興国通貨が売りのターゲットとなり、ブラジルレアルや南アランドが史上最安値を更新してきた。そうした新興国通貨安の中でトルコリラも売られてきたのだが、連続利下げによる実質マイナス金利化が海外投資家のトルコリラ売りを助長し、投機筋の売りターゲットとなってきていることが3月後半からのドル高リラ安を加速させているといえる。5月21日にトルコ中銀の次回会合が予定されているが、さらに利下げの深掘りも想定されている。

【トルコ国内の感染者は13万人に、経済指標悪化目立つ】

5月6日、保健省のコジャ大臣は記者会見において「トルコは新型コロナウイルスとの闘いにおける第1段階を達成した」と宣言し「感染症はコントロール下に入った」としたが、「依然として自宅がウイルスに対し最も安全な環境である。新型コロナウイルスの脅威が一掃されたわけではない」「典型的な正常化の段階ではない」「リスクは続いており、コントロールの喪失は第二の波を招く要因となる。多くの国でこれを見た」と述べた。
5月6日時点での世界の感染者数は381万人を超え、死者は26.4万人を超えた。欧米での感染者増加ペースは鈍化傾向にあるが世界全体の感染者増加ペースは指数関数的な伸びが続いている。
トルコは5月6日時点の感染者数が13万1744人で前日から2253人増、死者は3584人で同64人増だった。感染者増加数は4月11日の5138人増をピークに4月22日からは3000人前後へ落ち着き、25日からは3000人以下となり5月2日からは2000人を切っていたが6日は3000人を超える規模となっている。

4週にわたるロックダウンによりコントロール不能な状況には陥らず、医療崩壊や物資不足によるパニックを回避し、コロナ対策での国際援助も行ってきたことで国際的な評価も上がっている。
しかし、足元の経済指標悪化は深刻化し始めている。
4月24日に発表された4月の設備稼働率は3月の75.3%から61.6%へ低下した。
4月29日発表の4月経済信頼指数が3月の91.8から51.3へ急激に悪化した。
4月30日に発表されたトルコの第1四半期観光収入は41億ドルで前期の78.9億ドルを大幅に下回った。3月の観光客数の伸びは前年同期比でマイナス67.8%となり2月のプラス3.8%から大きく悪化し、市場予想のマイナス30%も下回った。
5月4日に発表された4月のイスタンブールPMIは33.4となり3月の48.1から低下した。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、4月29日夕安値をサイクルボトムとして30日午前から5月4日午前にかけての間への上昇を想定していたが、5月1日午前時点では15.27円割れからは弱気転換注意とし、29日夕安値割れからは新たな弱気サイクル入りとした。
5月1日夜の下落で29日夕安値を割り込んだために新たな弱気サイクル入りとなったが、7日早朝へ続落しており既に前回ボトムから5日を経過している。このため5月5日午前安値で直近のサイクルボトムを付けて既に底割れにより連続的な弱気サイクル入りしている可能性がある。
5月6日夜の戻り高値14.86円を超える場合は直前安値をサイクルボトムとした知沖サイクル入りとして8日未明にかけての間への上昇を想定するが、強気転換できずに安値更新が続く場合は連続的な弱気サイクル入りとして8日午前から12日午前にかけての間への下落継続を想定する。

60分足の一目均衡表では5月1日の一段安からは遅行スパンの悪化と先行スパンからの転落状況が続いている。このため遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、遅行スパン好転からは反騰入りの可能性ありとして高値試し優先とする。ただし先行スパが大きな抵抗となり、一時的に遅行スパンが好転しても再び悪化するところからは下げ再開と考える。

60分足の相対力指数は5月6日深夜に20ポイント割れまで低下したがその後の安値更新では指数のボトムがフラットのため強気逆行型が見られる。子のため40ポイント台へのリバウンドも考えられるが、40ポイント手前で失速するようなら再び20ポイント割れへの低下を伴う一段安へ進みやすいと警戒する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月7日朝安値14.67円を下値支持線、14.80円を上値抵抗線とする。
(2)14.80円以下での推移中は一段安警戒とし、安値更新からは14.50円前後への下落を想定する。14.50円以下は反発注意とするあ、14.70円以下での推移なら8日の日中も安値試しを続けやすいとみる。
(3)14.80円超えからはリバウンド入りの可能性ありとし、6日夜の戻り高値14.86円超えからは14.90円前後への上昇を想定する。14.90円以上は反落警戒とするが、14.80円を超えた後も14.70円以上での推移なら8日の日中も戻りを試しやすいとみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

5月11日
 16:00 2月失業率 (13.8%、予想 14.9%)
5月13日
 16:00 3月経常収支 (2月 −12.3億ドル)
5月14日
 16:00 3月鉱工業生産 前年比 (2月 7.5%、予想 -2.7%)
 16:00 3月小売売上高 前年比 (2月 10.6%、予想 -4.4%)
 16:00 3月小売売上高 前月比 (2月 1.4%、予想 -6.8%)
5月20日
 16:00 5月消費者信頼感指数 (4月 54.9)
 19:30 4月自動車生産 前年比 (3月 -21.8%)
5月21日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合(TCMB) (現行 8.75%、予想 7.75%)
5月22日
 16:00 5月景況感 (4月 66.8)
 16:00 5月設備稼働率 (4月 61.6)

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